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ご当地ラーメンで異世界の国おこしって!?  作者: 忠六郎
第五章 始まりの大陸編
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第156話 伏見稲荷大社

投稿が遅れまして申し訳ありません。

この話を書いていて久しぶりに京都に行きたくなりました。

実はラーメンの聖地なんですよね。

引き続き宜しくお願いいたします。

そんな由紀のナビゲートもあって、アンナたちは一度も迷うことなく伏見稲荷神社にたどり着いた。


「こ、ここにもめちゃくちゃ人がいるわね…」


ここまで来る間、乗客がぎっしりの電車に揺られていたクレアは早くもゲッソリとしている。


「クレア様、大丈夫ですか?」


「ま、まぁなんとか大丈夫よ。

人に囲まれてただけで、不思議とぶつかったりはしなかったから…」


「ゴクッ!ゴクッ!

ふぅ〜、シャノンは全然大丈夫そうですね?」


そう聞いたのは、これまた由紀の用意してくれた水をガブ飲みするアンナである。


「えぇまぁ…長身のおかげでしょうか?」


と、シャノンは同じく長身のソフィアに聞く。


「私もそれほど辛くなかったですよ〜♪」


実際は浮世離れした美人しかいない外国人の集団に、周りの通勤客が恐れおののいて距離を開けただけなのだが、アンナたち自身はそれに気がついていない。


「それじゃあ行くわよ…」


「クレア様、ご無理は…」


「大丈夫、ちょっとぐらい歩いた方が気分も良くなるわ」


「クレアの言う通りです。

目的地は…あそこですかね?」


そう言って歩き始めたアンナを先頭に、一行は目の前にある大きな鳥居をくぐる。


「すごいですね…これ、全部木なんでしょうか?」


「先ほどから口が開きっぱなしですよ、アナ」


「あ、カワイイ♪クレア様、キツネさんがいますよ♪」


「かわいい…?なんかキリッとしてない?

玉みたいなの咥えてるし」


「かっこいい感じですよね。

お使いのキツネなんでしょうか?」


「ここにはそうだと書いてありますね…」


どうやらこういった場所に興味があるらしいシャノンは、さっそく無料のパンフレットを手に入れていた。

アンナたちはそのまま楼門をくぐり、本殿へとたどり着く。


「ふぁ〜♪」


と、美しい朱塗り本殿を見て、ソフィアは思わず声を上げる。


「こんなに綺麗な建物、見たことないです〜♪」


ソフィアの村もほぼほぼ木造建築しかない村なのだが、これほど美しく装飾された建物を見たのは初めてだったのだ。


「たぶん…日本の方々は手を合わせてお祈りをしてますね」


「どうします、シャノン?

私たちも真似をしてお祈りをしますか?」


「そうですね…ご挨拶は必要かと…」


「さっきあっちで手を洗ってたわよ、アンナ」


「お清めですかね…?

でしたら、まずはそこへ行きましょう」


そうして異世界組一行は見よう見まねで本殿への参拝をし、世界的にも有名な鳥居の並ぶ参道、千本鳥居までやって来た。


「これは…」


「シャノン、シャノン…口開いてますよ」


「この国の宗教はわからないけど、とっても素敵な場所ね♪」


「…えぇ、クレア様」


あまりに神秘的な光景に、アンナたちは鳥居の手間で立ち尽くす。


とそこで、


「オネェサンタチ、ドコカラキタノ〜♪」


と、明らかにチャラめの外国人男性たちがアンナたちに声をかけた。

どうやら海外旅行客らしく、先ほどの電車の通勤客とは違いかなり浮かれているようだ。


「アナタハニホンジンカ〜?」


と、一人の男が少し離れた場所にいたソフィアに近づく。

長身だが黒髪で線の細いソフィアは、一見、日本人に見えなくもないのだ。


「…シャノン」


「はい…」


「…ゾーイ」


「はい。クレア様…」


男の不穏な動きを見抜いていたアンナとクレアは、あらかじめそれぞれの護衛に声をかけた。


「アァ!コンナトコロニイシガ〜♪」


王女二人の予想通り、近づいてきた男は、なぜかワザとらしくつまづいてバランスを崩す。

あろうことか男は、どさくさに紛れてソフィアの爆乳に触れようとしているのだ。


その瞬間、


「あ、危な〜い」


「グッハァ!」


というめちゃくちゃ平坦な声とともに、シャノンが倒れてくる男のこめかみに真空飛びヒザ蹴りをブチ込んだ。


「まぁ、大変で〜す」


「オッフゥ!」


続いてゾーイが、地面に倒れた男のレバーにトゥキックを喰らわせる。


「……」


流れるような連撃を受けた男は、うつ伏せに倒れてピクリとも動けなくなっていた。


「…オイ、イキテルカ?」


「…アノフタリ、キッチリキュウショヲネラッテナカッタカ?」


「ダ、ダカラヤバイッテイッタンダ!

アンナビジンダケデアルイテイルナンテ、ヤッパリフツウジャナカッタンダヨ!」


「…えぇ、その通りです」


と、いつの間にか慌てふためく連れの男たちの背後に回っていたシャノンが、先ほどとはうって変わって冷たい声で彼らに話しかける。


「詳しく説明はできませんが、私は今、この国で殺人を犯してもどうにかできる方々の警護をしています…」


「ウ、ウソダロ…」


「あなたが手を出そうとした女性も、その中のお一人ですよ…」


「ソンナ、オレタチハタダ…」


「もちろん私たちも、そのような状況になることを望んでいるわけではありません。

この意味、わかりますか?」


「ハイ!ワカリマス!」


「オイ!ハヤクイクゾ!ダレカソイツヲカツゲ!」


「ワカッタ!サァ、ツカマレ…」


「ウ、ウゥ….」


男たちは倒れた男に肩を貸し、一目散に山道を下っていった。


「お二人ともありがとうございます〜♪」


「いえ…」


「はい♪ソフィア様に何もなくて良かったです」


「でも意外、ソフィアってああいう時はしっかりしてるのね」


「しっかりって…クレア、どういう意味です?」


「だって、さっき男が手を伸ばしてきた時、ソフィアってばちゃんと腕で胸を庇ってたのよ♪」


「えっ!そうなんですか?」


アンナは思わずソフィアの顔を見た。


「私だって、危ない時は素早く動けますよ〜!

もう!今まで皆さんどう思われてたんですか〜?」


ソフィアは珍しく困った顔でそう言う。


「なんか…胸ぐらい触られても大丈夫って感じじゃない?」


「そんなの絶対にイヤです〜!」


『『『『『……?』』』』』


しかし、ここにいる全員が、内心クレアと全く同じことを思っていた。


「えぇっと…ソフィアさん、私と初めて会った時って、幹太さんをスカートの中に入れて喜んでませんでしたっけ?」


「よ、喜んでませんっ!困ってたんです〜!

それに…あの時は熊に襲われて動転してましたから〜」


アンナとソフィアの出会いは、王宮に向けて旅をしていたアンナと幹太が、熊に襲われていたソフィアを助けたのがきっかけである。


「ん〜?でも、その後もすぐにキスしちゃったり、思いっきりパンツ見せちゃったりしてましたよね?」


「それは…その〜」


全員に見つめられ、ソフィアの顔がじわじわと赤く染まっていく。


「あ!わかったわ♪

ソフィア、一目惚れしちゃったんでしょ?」


クレアはニヤニヤしながらそう言って、両手で顔を隠すソフィアの前へと回り込む。


「は、恥ずかしいです〜」


「つまり…芹沢様だから大丈夫だったということですか?」


「……」


ソフィアは顔を覆ったまま、コクリと頷いた。


「えぇっ!だってキスしたのって、本当に出会ってすぐでしたよっ!?」


「わ、私だって!好きだって気づいたのは村に着いてからだったんです〜!

でもでも、恋に落ちたのはたぶん…」


「フフッ♪幹太に助けてもらった時なのね♪」


「すごい…ソフィア様、情熱的…」


「もうやめてください〜!」


そう叫びながら、ついにソフィアはしゃがみ込んでしまった。


「触られても大丈夫なんて言ってごめんなさい、ソフィア♪

あなたってすっごく繊細な女の子だったのね♪」


「いいですかシャノン、これが恋する乙女です。

しっかりと目に焼き付けておきましょう♪」


「フフッ♪えぇアナ、そうしておきます♪」


「もー!お願いですからっ!これ以上は〜!」


そんな風に滅多に見れないソフィアの姿を散々楽しんだ後、一行は名物であるキツネの形をした絵馬に大陸公用語で願い事を書いたり、由紀から渡されたデジカメで記念写真を撮るなどをして稲荷山を下りた。


「…なんだかお腹が減りませんか?」


そして駅へと戻る途中、アンナは商店の立ち並ぶ参道で皆にそう聞いた。


「ふぇ?ふぇつにへってないわよ?」


そう言うクレアは、すでに口いっぱいに団子を頬張っている。


「そりゃクレアはそうでしょうね…」


「しかし、そうなると何を食べましょうか?」


と、シャノンが店先に並ぶ看板に目をやった。


「ここは…たぶん食事という感じではなさそうですね…」


どうやら目に留まった看板の店は甘味処のようだ。


「そうでした!今日は由紀さんも幹太さんもいません!」


アンナたちにかかっている翻訳魔法では、地球の世界と異世界で共通する単語か、本人の知識にある物の意味しかわからない。

なので先日の屋台もそうだったが、基本的にこちらでの食事は、幹太や由紀に最終決定を任せていたのである。


「そんなのなんでもいいんじゃない?

この国の食べ物ってだいたい美味しいし…」


そう言いつつ、すでにクレアは先ほどの団子を食べ終え、どこから買ってきたのか大きなペロペロキャンディーを舐めていた。


「それはそうですけど、せっかくの機会ですからね…」


なにかと冒険したがりな二人の王女ではあるのだが、食への挑戦の仕方には違いがある。

クレアは目についた食べ物をとりあえず食べてみるというスタンスであり、アンナはその場所にある中で一番自分の好みに合いそうなものを探すのだ。


「しかし、私たちがわかる料理となると…」


「ちょ、ちょっと…やめてよシャノン。

まさか…」


そう言って青ざめるクレアの背後に、ユラリと銀色の影が迫る。


「…ラーメンですよ、ク・レ・ア♪」


と、アンナに耳元で囁かれたクレアの手からペロペロキャンディーが滑り落ちた。


「いやぁー!もうラーメンはいやなのぉー!」


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