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ご当地ラーメンで異世界の国おこしって!?  作者: 忠六郎
第五章 始まりの大陸編
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第151話 本場トンコツとこれからのこと

このお話に合わせて、前回と前々回のお話を少し修正致しました。

よろしくお願い致します。


「ハイ!ラーメンお待ちどーさん!」


そしてついに、本日のメインがカウンターの上に載せられる。


「はい!わたし!」


まずは由紀がラーメンに手を伸ばす。


「こ、これが本場の豚骨ラーメン…」


「気をつけてください、アナ。

手が震えていますよ」


「アンナさん、わたしが取ります〜」


ソフィアは立ち上がり、三つの丼をテーブルに置く。


「何か…ブリッケンリッジのラーメンに匂いが似てない?」


「私もそんな感じがします…」


「まぁ、一応同じ豚骨ラーメンだからな。

ヨイショっと」


こちらはクレアとゾーイにそう答えつつ、幹太が二人の丼もテーブルの上に置く。

結局、ここにいる全員がラーメンを注文していた。


「幹ちゃんもソフィアさんも、焼きラーメンだけじゃ足りなかったの?」


「まぁけっこうみんなにあげちゃったしな。

それに、やっぱりここに来てコレを食べないってのはないかなって…」


「私も気になっちゃいました〜♪」


「か、幹太さん、私…もう…」


「あ!ごめん、アンナ!食べよう食べよう!」


「はい!ではいただきますっ!」


幹太たちは他にも焼き鳥などを注文していたが、厚切りのチャーシューを目にしたアンナの要求により、先に麺類を作ってもらうよう店主にお願いをしていた。

観光地のイメージの強い中洲の屋台ではあるが、実際に訪れてみると、観光客よりも地元客の方が多い。

地元の人間に言わせれば、博多ラーメンは食事時に専門店で食べるよりも、このような屋台でさんざん飲み食いした後にシメにサクッと食べるものらしい。


「あぁ…めっちゃ美味い…」


「…ですね、めっちゃ美味しいです」


もちろん幹太とアンナの言うように、味はラーメン専門店と比べても引けをとらない。


「なんででしょうね?

幹太さんのトンコツスープもそうですけど、かなりクセの強い匂いなのに気がつくと飲んでしまいます」


「わかるわ、シャノン!

最初はウッでなるけど、一口飲むと止まらなくなるの!」


「お、クレア様も豚骨スープいけるんだな」


「そうね♪美味しいわよ♪

ゾーイは大丈夫?」


「はい♪わたし、この麺好きです♪」


「確かに…この麺はいいですね」


アンナはそう言って、思いっきり麺を啜った。


「モグモグ…幹太さん、この麺って普通の細麺じゃなくないですか?」


「おぉ!さすが麺打ちプリンセス!」


「アンナやりました♪…って、幹太さん?麺打ちプリンセスって…?」


「細めの麺だけど、平打ちみたいだな」


「おぉ正解ばい、にいちゃん!

うちん麺は平打ちの細麺ったい。

やっぱり博多ラーメンには平打ちばい」


店主の言うように、博多ラーメンには細いストレート麺の他に平打ちの細麺を使う店もある。

長浜ラーメンと融合している今の博多ラーメンは普通の細麺が主流であるが、元々の博多ラーメンは平打ちの麺を使って作っていた。


「ほんっと、美味しい♪

久しぶりに食べたサービスエリアのラーメンも美味しかったけど、私はこっちの方が好きかも♪」


「そういや由紀って、あんまり外でラーメン食べないよな?」


「うん」


「えっ!?幹太さんの幼馴染なのにですか?」


アンナの疑問ももっともである。

由紀はシェルブルックにいた時も姫屋のラーメンをよく食べていたし、なにしろアンナたちが日本に来るまでは毎日幹太と一緒にいたのだ。


「あ、違うよっ!

正蔵おじさんと幹ちゃんのラーメンはすっごい食べてるの♪」


つまり幹太と由紀にとっての中と外の基準とはそういうことである。


「だから由紀って、外で食べるときはウチにないのを食べるんだよ」


「そうね♪濃ゆ〜い豚骨とか札幌の味噌ラーメンとか♪」


「ハハッ♪元々の屋台のはザ・東京ラーメンだったからなぁ〜」


もちろんそうなったのは、作りたいラーメンが東京ラーメンだったことが一番の理由であるが、幹太のように住宅街に近い場所に屋台を出す場合、取り扱う食べ物の匂いのことも考えなければいけない。


「こうやって屋台が集まってれば商売もしやすいだろうし、ちょっとうらやましいな…」


「でしたらこれからはず〜っと大丈夫ですね♪」


「どうしてさ、アンナ?」


「だって、幹太さんと由紀さんは私の国に住むことになるんですよ♪」


「私たちがシェルブルックに住むからって…あ!」


「由紀?」


「そっか!だいたい屋台村なんだ!」


「おぉ!そういうことかっ!

そういや俺、向こうじゃいつも屋台村で店出してたわ!」


おそらくこれからも、幹太が向こうの世界で姫屋をやるのなら、今まで通りブリッケンリッジの中央市場に出店することになる。


「雰囲気もこんな感じだし、確かに似てるな…」


「うん。似てる似てる♪」


「…俺、やっぱり向こうに行って良かったかも…」


「フフッ♪そうだね、私もそう思うよ♪」


「お、お二人とも?急にどうしたんです?」


二人の日本人は、キョトンとする銀髪の王女を見つめる。


「ぜーんぶアンナがキッカケなんだね♪」


「ハハッ♪そうだな。あん時、アンナが橋にねっ転がってたからこうなったんだ」


「結婚も決めて、お母さんに報告もできたし…」


「それも五人でだしなぁ〜」


二人は優しい顔をしながら、幸せそうにラーメンを食べるソフィアとゾーイに視線を移す。


「ほ、ほんとにどうしちゃったんです?」


「由紀さん?ちょっと…大丈夫ですか?」


ついには縁側に佇む老夫婦のようなテンションで会話を始めた二人に、アンナだけでなくシャノンまでも不安を感じ始めた。


「あ〜そういえば帰るのよね…」


「クレア様…?忘れてたんですか!?」


ゾーイは驚きのあまり、口からハミ出でていた麺をチュルっと飲み込む。


「ま、まさかっ!そんなことないわよ!」


「…忘れてたんですね」


「だからそんなことないって言ってるじゃない!

ちょっと他のこと考えてたのっ!」


「他のこと…?

なんだか怪しいです。

でしたら、クレア様は何を考えてたんですか?」


「そ、それは…えっとね…その…そうっ!」


「なんです?」


「あなたたちの結婚式のことを考えてたのっ!」


「えぇっ!結婚式っ!?」


「よしっ♪ごまかし成…そうよ〜♪あぁ〜シェルブルック王家の結婚式ってどんななのかしら〜♪」


「お、王家…そうです、私、アンナ様と家族に…」


その事実に、良家出身とはいえ一般家庭出身のゾーイは目眩に襲われる。


「そういえばちゃんと聞いてなかったか…アンナ、結婚式ってどうするの?

なんか王家なりのやり方とかあるんだよね?」


こちらも一般家庭出身の由紀は、当然そういうものだろうと考えていた。


「えっと…とりあえず場所は王宮で間違いないと思いますけど、どちらのお母様にもやり方は自由でいいって言われてるんですよね…」


「ん〜?やり方以外に何かあるの?」


「お呼びする方の選定は、王妃様たちや国王様が決めるということですよ」


「あぁ〜そりゃそうなるか…ありがと、シャノン♪」


「けど、やり方が自由って難しくない?

アンナはどうするつもりなの?」


クレアは以前、貴族同士の結婚式に出席したことがあったが、それはそれは厳格に形式を重んじたものであった。

アンナのような立場の人間は、いくら自由と言われも、自分たちらしくやればいいというだけでもないのである。


「で、出来るだけ質素というのは…無理ですよね〜?」


ゾーイ同様、ソフィアもそう言って顔を青くする。

ソフィアの村の結婚式といえば、花嫁衣装こそ着るものの、新郎か新婦のどちらかの家で行われるのが通例であった。

自分を含めた結婚式が王宮で行なわれるということを、ソフィアは初めてしっかりと意識してしまったのである。


「それでアナ、なにか考えましたか?」


「えっ?それって、シャノンが一緒に考えてくれるんじゃなかったんですか?」


アンナは諸々の公式行事を仕切っているシャノンが、当然その辺りのことも手伝ってくれるのだと思っていた。


「アナっ!ちゃんと考えておいてくださいって言いましたよねっ!?」


「ひうっ!だ、だって…」


「だって、なんです?」


「…お姉様が一緒に考えてくれれば、そっちの方が素敵な式になると思って…」


アンナは小さな頃に姉妹二人でやっていたお嫁さんゴッコのようなことが、現実にできると楽しみにしていたのだ。


「だからって!…はぁ〜もう、しょうがないですね…」


とそこで様子を見守っていた由紀が立ち上がり、二人の肩に手を置いた。


「じゃ♪いまからみんなで考えてみよっか♪」


「由紀さん♪」


「…えぇ、それが良さそうです」

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