閑話 おねショタ天国 中編
すみません。中編も入ることになりました。
「忘れてた…」
由紀は水滴の滴る髪を搔きあげながらそう呟いた。
「この頃の幹ちゃんって、水遊びが大好きだったんだ…」
「そういうことは早く言っておいて下さいっ!」
由紀に向かってそう叫んだのは、こちらもびっしょり水に濡れたシャノンである。
「わぁ〜!このふんすいすっごいおっきいね、リンネおねえちゃん♪」
「う、うん。そうだね〜。
でも…ここって入っていいのかな?」
「大丈夫ですよ、リンネちゃん♪お母様はそんなこと気にしません♪
ね、シャノン?」
そう聞くアンナは、薄いブルーのワンピースを膝上までたくし上げ、幹太と共に噴水の中へ足を踏み入れている。
「はぁ…大丈夫に決まってるでしょう。
一応言っておきますけど、幼い頃のあなたもそうしてよくこの噴水に入ってましたよ」
「えっ!そうでしたっけ?」
「えぇ、なんていうか…小さな頃のあなたは、なぜか水があると突撃していく子でしたからね…」
そんなアンナを、噴水からビショ濡れになって引きずり出すのが、その頃のシャノンの主な仕事であった。
「しかし、こうやってリンネさんと遊んでいると姉と弟のようですね」
シャノンは噴水で戯れるリンネと幹太に、在りし日の自分たち姉妹を重ねた。
「フフッ♪確かにそうですね♪」
「そういえば、おっきな幹太さんとは髪の色がすいぶん違いますね〜♪」
隣で二人の会話を聞いていたソフィアは、濡れるのも構わず噴水の外から幹太を抱っこして捕まえる。
「わっ!ソ、ソフィアおねえさん…またおむねが…」
「フフッ♪幹太くんはお姉さんのお胸が気になっちゃいますか〜?」
「そ、そんなっ!そんなことないよっ!
お、おねえさんにだっこされると、な、なんかドキドキするだけだし…」
どうやらショタ幹太は、ちょっとだけ女の子が気になるお年頃らしい。
「あ〜そういえばこれもあったか…」
「こ、これもってなんなんです?」
嫌な予感がしたアンナは、恐る恐る由紀に聞いた。
「この頃の幹ちゃん、オッパイが好きだったんだよね…」
大人だとかなり問題はあるが、幼稚園児ならばセーフである。
「…この頃からですか?」
「う、うん。どうしたのアンナ?
なんか怖いけど…?」
「いえ、別に…」
「そ、そっか…。
えっと…もうわかってると思うけど、ちっちゃい幹ちゃんって、なんかギュッてしたくなるでしょ?」
「えぇ、それはまぁ…」
アンナの見立てでは、自分の好きな人の過去の姿ということを差し引いても、今の幹太はかなり可愛い子供の部類に入る。
「態度も生意気じゃないし、可愛げがあるっていうか…だからかな、同級生のお姉ちゃんとかお母さんに大人気だったんだよ」
「そうなるのもわかりますね」
「うん。それでね、お迎えに来た女の人たちが、いっつも幹ちゃんをギュッってしていくの。
それで…」
「…オッパイの素晴らしさを知ったと?」
「う、うん」
二人が幹太の方を見てみると、彼は恥ずかしがりつつも、ブラウスが濡れ、赤い下着が透けて見えるソフィアから離れようとはしない。
「幹太くん〜♪」
「な、なに? 」
「お姉さんを幹太くんのお嫁さんにしてくれませんか〜?」
「えぇっ!」
幹太は困った。
『ぼく…ゆーちゃんとずっといっしょってやくそくした…』
幼い幹太の中で、ずっと一緒にいるということは自分の両親のようになることだ。
「ダメですか〜?」
「ダ、ダメじゃないけど…ぼ、ぼくゆーちゃんとやくそくしてるから…」
そう言って、幹太は助けを求めるように由紀を見る。
そんな幹太に、由紀はニヤニヤしながら近づいた。
「フフッ♪どうするの〜幹ちゃん?
ソフィアさんと結婚しちゃう?」
「えぇっ!こ、こまるよ!だってぼく、ゆーちゃんが…」
「ゆーちゃんがなに?幹ちゃん♪」
「お、およめさんになってくれるとおもってたから…」
幹太は顔を真っ赤にしてうつむきながらそう答えた。
「そっか、この時にはもうそう思ってくれてたんだ…」
「ゆ、ゆーちゃん…だめだった?」
「ううん、ダメじゃない。
私、幹ちゃんのお嫁さんになりたいよ♪」
「そっか〜♪よかったぁ〜♪」
ホッした幹太は、ソフィアの腕の中でニッコリと笑う。
「でも、幹ちゃん、それじゃソフィアさんはどうするの?
ソフィアさん、誰か他の人のお嫁さんになっちゃうかもよ?」
由紀にそう言われ、幹太は自分を抱きしめるお姉さんを見上げた。
「そ、そんな…私、どうしたら…オヨヨ〜」
と、ソフィアはワザとらしく泣き真似をする。
「だ、だいじょうぶ!ぼく、ソフィアおねえさんもおよめさんにしてあげるから!」
幹太はモゾモゾ動いて振り返り、泣き真似をするソフィアの頭を撫でた。
「ウフフ♪やりました〜♪」
「ソフィアおねえさん…もうないてない?だいじょうぶ?」
「はい♪もう大丈夫ですよ〜♪」
とそこで、一人出遅れたアンナが二人の間に割って入った。
「ハイ!ハーイ!私!幹太くん!私もあなたのお嫁さんになりまーす!」
「えぇっ!おひめさまも?」
「そうでーす!実はもう決まってまーす!」
アンナはなぜか、大人げなくなるほど焦っていた。
「ほっ、ほんとにっ!?」
「もちろん♪ほんとですよ♪」
「…ゆーちゃん、ほんと?」
「そうだよ♪
私とソフィアおねえさん、それにアンナ姫もみーんな一緒♪」
「そ、そっか…ぼく、おひめさまにもおよめさんにきてもらうんだ…」
「うん♪だから頑張らないとね、幹ちゃん♪」
「がんばる…?」
「そ♪ずっとカッコイイ男の子でいられるようにね♪
できるかなぁ〜?」
と、由紀に聞かれた幹太は、由紀、アンナ、ソフィアの顔を順に見た。
「うん♪ゆーちゃん、ぼくがんばってカッコよくなる!」
「よろしい♪」
その後も女性陣は散々幹太を連れ回し、結局その日の夜になっても、彼の体が元に戻ることはなかった。




