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ご当地ラーメンで異世界の国おこしって!?  作者: 忠六郎
第五章 始まりの大陸編
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第148話 天然塩

閉店間際の道の駅で始まった試食会ということもあり、なぜか並んでるアンナたちを含めてもお客は十人とちょっと。

百戦錬磨のソフィアに厨房の手伝いをお願いすれば、スープがなくなる量のラーメンを作るのにそれほど時間はかからない。

幹太はあっという間に全てのラーメンを作り終え、ソフィアと共に車外へ出た。


「ありがとう、ゾーイさん。おつかれ様」


幹太は次々と出来上がるラーメンをお客に運んでくれていたゾーイに、そう声をかけた。


「いえ、今回は楽でしたから…」


「しかし、なんでアンナ達まで並んでんだよ…」


「…あの芹沢様、私とソフィア様の分は…?」


「あぁ、大丈夫だよ。

ちゃーんと残してある」


「よかったです〜♪」


「はい♪ソフィア様♪」


「ハハッ♪そりゃそうだよ。

元々はみんなのために作ったんだから」


幹太はそう言って、公園のような一角にあるテーブルに目を向ける。

そこには由紀、アンナ、シャノン、クレアの四人が座り、それぞれにラーメンを食べていた。


「あぁ〜久しぶりの日本ラーメン…めっちゃ美味しい♪」


元々豚骨よりも鳥ガラスープが好みの由紀は、茶色く透き通るスープのラーメンを食べている。


「えぇ、やっぱり向こうで作るのとは違う気がします♪」


一方、コッテリ系が好みのアンナは、やはり白濁した豚骨スープだった。


「これが幹太の…自分の世界でのラーメンなのね」


そう言いつつ麺を啜るクレアは、アンナと同じく豚骨ラーメンを食べている。


「美味しいですね…」


その隣に座るシャノンは、鶏ガラスープのラーメンだった。


「アンナの方もすっごい美味しそうだね♪」


「はい♪最高ですよ♪由紀さん、ちょっと食べてみますか?」


「え、いいの?やたっ♪」


由紀はアンナから差し出された丼を受けとり、まずはスープを一口飲んだ。


「わぁ〜すっごい濃厚♪」


「ですよね♪」


幹太が今回仕込んだ豚骨スープは、スープの量と煮出す時間と考え、最大限に濃厚に作ったものだ。


「ちょっと待って…私たちと離れている間にこれだけのスープが作れるって、あいつがリーズで悩んでいた時間ってなんだったの?」


「そ、それはしょうがないよ、クレア様。

やっぱり日本の方がラーメンの材料は豊富だし…」


由紀の言う通り、豚骨や鶏ガラでもない限り、ラーメンに使う食材は日本中にある一般的なスーパーで簡単に手に入る。

さらにタレに使う醤油や油などに至っては、ラーメン店で使うものより質が良いものも揃っている場合もある。


「確かに、向こうじゃお醤油もそれに似た調味料を使ってますし…あぁっ!だったら…」


「だったらこっちでそのショウユの作り方を覚えて帰ればいいのよ!」


と、アンナがなにかを言う前に、クレアが立ち上がってそう叫んだ。


「ク、クレア!私が先に言おうとしたのにっ!」


「おっ!二人がやってくれるなら、本当に向こうで出来るかもな♪」


とそこへ、先ほどまでキッチンワゴンの前にいた幹太たちがやって来た。


「三人ともおつかれ様♪」


「うん。えっと、由紀は…やっぱりガラの方なんだな」


「うん♪すごーく美味しいよ♪」


「ハハッ♪ありがとう。

そんでアンナは…」


「私はトンコツ一択ですっ♪」


「だよな。それで、どうかな?」


「こっちもとっても美味しいですっ♪

幹太さん、これってタレはなんなんです?」


幹太が向こうの世界で豚骨に合わせていたのは、すべて醤油ダレか味噌ダレである。

アンナは今回の豚骨ラーメンが、いままでと違うことに気がついていた。


「おぉ!さすがだな!

そうそう!今回のトンコツスープは塩を合わせてみたんだよ」


「塩ですか?」


アンナはそう言って、もう一口スープを飲んだ。


「…その割にはすごく風味が強いような?」


アンナの記憶にある塩ラーメンは、ソフィアの故郷、ジャクソンケイブのご当地塩タンメンである。


「ジャクソンケイブのラーメンの塩風味が濃かったのは、塩湖の岩塩だからですよね?」


「うん。あとは豚骨だけじゃなくて、鶏ガラとの合わせスープだったからってのもあるな…」


豚骨と鶏ガラの合わせスープは、純粋な豚骨スープよりもさっぱりしたスープになる。


「でもこのスープ、ジャクソンケイブの塩湖よりも塩気が強くないですか?」


「えぇっ!そうなんですか〜?」


「えぇ、ソフィアさんもちょっと食べてみてください」


「は、はい、いただきます〜」


と、ソフィアはアンナから丼を受け取ってスープを飲む。


「すごいです…こんなに濃いスープなのに、しっかり塩味がわかります〜」


「ですよね!ソフィアさんが言うなら間違いないです!

幹太さん、このお塩はどこから?」


「その塩は長崎…ここの海の塩なんだよ」


長崎には、いまだに昔ながらの方法で海水から塩を作っている職人がいる。


「はじめに塩田って言って、海水を砂浜に撒いて作るんだけど…」


そうしてまずは塩を結晶化させ、それをろ過してから大鍋で煮込むのである。


「しかも、その工程でかん水もできるんだ」


現在の日本で天然のかん水を使うことなどまずないが、元々の語源はここからきている。

それから更にいくつかの工程を経て、この天然塩は完成するのだ。


「前から一度使ってみたかったんだよなぁ〜」


もちろんラーメン馬鹿の幹太は、最初からそのような塩があることを知っていた。


「ちょ、ちょっと待って幹太!つまり…海と砂浜があれば、その塩ができるの?」


リーズの塩も海水から出来ているが、海水を煮立てて精製するだけの単純なものだ。


「そうだよ、クレア様。

だからきっと、この塩はリーズでも作れる」


「ほ、本当に…?」


「うん。レイブルストークならたぶん…」


「よっしゃー!」


幹太の言葉を聞いたクレアは、拳を天に突き上げる。

この紅蓮の姫は、むこうに帰ったらさっそくやってみるつもりだった。


「塩湖と海ですか…我が国とリーズで塩ラーメンの覇権を争うことになりそうですね」


というシャノンの呟きは後に現実となるのだが、それはまた別のお話である。


「それで幹ちゃん、このラーメンはどうするの?」


「ん?どうするって?」


「いや、どっかでメニューにするのかなって…」


これだけのラーメンを作ったのならば、何らかの目的があるのだろうと由紀は思っていた。


「う〜ん、どうかな?

これは完全に趣味のラーメンだからなぁ〜」


そう言って、幹太は頭を掻く。


「しゅ、趣味のラーメンってなに…?

幹ちゃん、できたらなんか別な趣味も考えた方がいいよ…」


さすがの由紀にも、幹太のその趣味は理解できなかった。

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