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ご当地ラーメンで異世界の国おこしって!?  作者: 忠六郎
第五章 始まりの大陸編
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第133話 くろいわラーメン

申し訳ありません。怒涛の年末業務により投稿が遅れてしまいました。

また、今回のお話に合わせて前話を少し改訂致しました。

よろしければご確認下さい。

今回が今年最後の投稿となっております。

また来年も宜しくお願い致します。

それでは皆さま良いお年を〜


「よ、良かったですぅ〜」


アンナとクレアの無事を確認したソフィアは、ベッタベタなラーメン屋の床に膝をついた。


「ハハッ…ほんっとにラーメン食べてるとはな…」


幹太の方も気が抜けたらしく、カウンターに手をついている。


「ほひかして…ラーメン屋さんはハズレでしたか?」


そう幹太に聞きながら、アンナはモグモグ噛んでいたチャーシューをゴクンと飲み込んだ。


「アンナ、ハズレって…?」


「いえ、幹太さんとなら絶対にラーメン屋さんで落ち合えると思ってたんですけど…違いましたか?」


「そっか、そうだよな…」


さも当然のようにアンナに言われ、幹太も今さらながらそう思った。


「俺とアンナなら、確かにラーメン屋だわ」


そうなのだ。

アンナの言う通り、この二人が日本街で離れ離れになったのならば、まず最初にラーメン屋を探すのが当然である。


「私、もしかしたら一軒目で幹太さん達に会えちゃうかもって思ってたんですけど…けっこうかかっちゃいましたね」


と、アンナは夕焼け射し込む窓を見る。


「しかもこの機械はたいしてアテになりませんでしたし…」


「あ!そうだよ、レーダー!」


幹太はポケットからレーダーを取り出し、アンナものと並べて置いた。


「ほら、やっぱり!ちょっと違う場所を指してます!」


「…ほ、本当だ…」


幹太がアンナのレーダーを見てみると、彼女のレーダーでは四つの点滅は集合しているが、自分のレーダーではまだ二つと二つに離れている。


「これは…たぶん私たちの方が遅れて表示されてます〜」


「そんなことだろうと思ったわ…私たちも最初はあなた達を探してたけど、ぜんぜん会えないんですもの。

すぐに探すのやめちゃったわ」


「こりゃ俺の判断ミスっぽいな…」


「そうよ幹太!あなたどうしてこんなに時間がかかったの?」


「ちょ、ちょっと待ってクレア様!

その前に…」


幹太はそう言って、アンナの隣に座る。


「ソフィアさんも…」


「はい〜♪」


そしてソフィアも、幹太が引いた彼の隣の席に着いた。


「すいませーん!こっち!ラーメン二つお願いします!」


「は〜い」


幹太は話を始める前に、お客としての義務を果たした。

実を言うと、先ほどから店員の視線がかなり痛かったのだ。


「さて、そんじゃ話そう…」


「はい♪漬け物ね〜」


「あ、はい。そっか…鹿児島だから漬け物が付くんだった。

それでなんの話だっけ…?」


「だ・か・らっ!なんでこんなにラーメン屋さんに来るのが遅かったのって聞いてるのよ!」


「はい♪餃子お待ちどうさまー!」


「あ、やっときたわ♪」


「クレア、とりあえず温かいうちに食べてしまいなさい」


「わかってるわよっ!」


「幹太さん、もしかして他の所に行ってたんですか?」


「あ、あぁ…俺とソフィアさんはちょっと離れた桜島ってとこに着いて…」


「はい!ラーメン二つ!お待ちど〜さまっ!」


四人のいるくろいわラーメンは、鹿児島の名店であり、お客さんが多いからか。かなりの早さで注文したラーメンが出てくる。


「いただきます」


「いただきます〜♪」


「…すみません!私もラーメンのおかわりをお願いします!」


「は〜い♪あっちの女の子からラーメンね〜」


「あら?お腹いっぱいじゃなかったの、アンナ?」


「そ、そうなんですけど…お二人のを見ていたら、まだイケる気がして…」


そうしてしばらくは落ち着いて話もできず、四人は黙々とラーメンを食べ続けた。


「あぁ…くろいわ、めっちゃ美味かったなぁ」


「はい〜♪私、一気にこちらのラーメンが好きになりました〜♪」


「見た目はけっこう白濁したスープなのに、なぜかあっさりしてるんだよなぁ〜。

あれって一体、どうやっているんだろう?」


「ほぇ?幹太さんでもラーメンでわからないことがあるんですか〜?」


ソフィアにとってはラーメンの神とも言える幹太ではあるが、ここ日本においては、よくあるラーメン屋台の一店主にすぎない。


「そうだな…わからないことの方が多いぐらいだよ。

ここだってしっかり豚骨の風味がするのに醤油ダレの味もちゃんと残してるって、どうやってやるんだろうって思うよ」


「でも〜幹太さんなら、機会があったら研究するんじゃないですか〜?」


「うん。っていうか、今もちょっと考えてる。

たぶん豚骨だけじゃなくて、鶏ガラを使ってるんだ。あとは…」


どうやら久しぶりに日本のラーメンを食べたことで、幹太のラーメンに対する創作意欲が盛り上がってしまったようだ。


「フフッ♪それでこそ私達の幹太さんですね〜♪」


「アンナ、私たちこれで何軒目?」


「えっと…イチ、ニイ、三件目ですね」


「…ちょっと待って、それって完全に食べすぎじゃない?

私、ここであのギョウザっていうのも食べてるのよ…」


クレアは青ざめた顔で、プックリと膨らんだお腹をさする。


「それでクレア様、なんで遅くなったのか…でしたっけ?」


「あ、あぁ、そうだったわね。

でも…もういいわ」


「ですね。お腹もいっぱいですし、悪いのはムーアに渡されたこのレーダーという事にしましょう♪」


「まぁムーア導師のせいではないけど、レーダーに頼りすぎた俺の責任ってとこだよな…」


もちろんレーダーがなければ二人が近くにいることもわからなかっただろうが、ある程度近づいた時点で幹太はもっと勘を働かせるべきだったのだ。


「そうね…もうそれでいいんじゃない」


またその一方で、原因はおもっきし鹿児島観光をしていたアンナたち側にもあるのだが、クレアはこの場ではそれを黙っておくことにした。


「さて、そんじゃこれからの話だけど…アンナ、お金は幾ら残ってる?」


「はい、ちょっと待ってくださいね〜♪」


アンナは以前に由紀からもらったお下がりのお財布からお札を取り出した。


「ん〜と、千円が九枚です」


「ってことは、やっぱり公共交通機関は無理だな。

つーかアンナ、めっちゃ使ってない!?」


幹太の記憶が確かならば、出発前のアンナは二、三万は持っていたはずである。


「い、いえ、そ、そんなに使ったわけでは…っていうか幹太さん、携帯は持ってないんですか?」


「あっ!あるっ!」


全力で食べ歩きをしらばっくれるアンナにそう指摘され、幹太はようやくその存在を思い出した。


「あった!あ、でも…やっぱダメか〜」


幹太がたすき掛けしていたバッグから取り出した携帯は、画面部分がバキバキに砕けており、とても使えるような状態ではなかった。


「たぶん転移の時に割れたっぽいな。

でもそっか、連絡先か…」


しかし、その携帯をキッカケに何かを閃き、近くにある公衆電話に向かう。


「えっと、確か…丸和水産だったかな?」


そう呟きながら、幹太は104番をダイヤルした。


「枕崎の…はい、丸和水産を…大丈夫です、お願いします。099…」


そして一度受話器を置き、再び聞いた番号へとダイヤルする。


「あ、おじさん!正蔵の息子の幹太です。

はい…実は今、天文館にいて…泊まる場所が…あ!はい!ありがとうごさいますっ!

では!のちほど伺います!」


幹太はそう言って受話器を持ったまま頭を下げ、電話を切ってアンナ達の元へと戻ってくる。


「ねぇアンナ、今のって相手がいなかったけど、念話?」


「違いますよ、クレア。

あれはデンワと言って、魔法ではありません」


「あれは遠くの人とお話しが出来るのですか〜?」


「えぇ、念話よりも遥かに遠くまで届きますね」


「「ほぇ〜」」


「よし、なんとかなりそうだ」


「なんとかって…?幹太さん、帰りの手段が見つかったんですか?」


「いや、そうじゃないんだけど、今日泊まる場所は確保したよ」


幹太が連絡したのは、桜島でソフィアに話した鹿児島に住む叔父の経営する会社であった。

一般家庭ならば104番の番号案内は使えないが、会社名ならば登録されている場合が多い。

そう思った幹太は、とりあえずの宿を確保するため叔父と連絡を取ったのだ。


「こっからだとけっこう時間がかかるから、さっそく移動しょう!」


「そうね、早く行きましょ♪

私、歩きまわって疲れちゃったわ」


「ちょっ、ちょっと待って下さい、クレア。

私、お腹がいっぱいで…」


「アンナさん、がんばって行きましょ〜♪」


そうして幹太たち四人は鹿児島県内を南下し、叔父の住む枕崎市へと向かった。



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