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ご当地ラーメンで異世界の国おこしって!?  作者: 忠六郎
第五章 始まりの大陸編
130/404

閑話 想い出の日 後編

間隔が空いてしまって申し訳ありません。

今回は少し長めなのでご容赦ください。

前回、本編とはほぼ関係ないと言いましたが、この話に合わせて第二話をちょっぴり改訂しました。

良ければ合わせてご確認下さい。

出張で神戸におりますが、ラーメンを食べるのがしんどくなるほど暑いです。

「で、ここか…」


「いいじゃん♪デートの定番だろ?」


そして放課後、亜里沙は幹太を引き連れてボウリングやビリヤード、ゲームセンターなどが入っている複合娯楽施設にやってきた。


「由紀ちゃん、部活はいいの…?」


「う、うん。なんだかこっちが気になっちゃって…」


亜里沙と幹太から少し離れたところには、由紀と澪がついてきている。


「そんじゃ芹沢、まずはどうする?」


「そうだな…まずはやっぱりボウリングでどうかな?」


「いいねぇ〜♪そうこなくっちゃ♪」


普段はあまり話しをしない亜里沙と幹太であるが、お互い大雑把な性格ということもあり、気は合うようだった。


「あ!腕組んだっ!」


「えぇっ!?あ!ホントだ!

引っ張ってるって感じだけど、亜里沙ちゃんすごい…」


「幹ちゃん…なんにも気にしてないよ」


「そ、それは芹沢君だからね…」


「もうっ!最近じゃ私も組んでないのに!」


「えぇっ!?由紀ちゃん、よく芹沢君と腕組んでるよ!」


「えっ!?ほ、本当に?」


「うん。 由紀ちゃんと芹沢君だからみんななんにも言わないけど、二人ともよく手を繋いだり、腕組んだりしてるよ。

いまだって、ほら…」


そう言って、澪は由紀と組まれた腕を持ち上げて見せる。


「あらま…ぜんっぜん気づいてなかった」


「だと思った。いいなぁ、由紀ちゃん…」


「澪…」


「あのね、私、由紀ちゃんに話が…」


とそこで、澪の話を遮るように、亜里沙と幹太の声が聞こえた。



「よっしゃー♪」


「おぉっ!やるじゃん、臼井さん!」



「やった♪どうだ芹沢!けっこう上手いだろ♪」


「すごいすごい!ターキーなんて初めて見た!」


二人は興奮した様子で向かい合い、手を合わせて喜んでいる。


「ゆ、ゆぎぢゃん、どりあえずわだじの話は後で…」


そう言って由紀を見上げた澪の目は、ウルウルと涙で滲んでいた。


「う、うん。そうだね」


ボーリングを終えた幹太と亜里沙は、次にゲームセンターへとやって来た。


「よし!男をみせろ、芹沢!」


「いや…クレーンゲームでぬいぐるみを取るって男らしいのか?」


「フフッ♪そりゃ取れないより取れる男の方がマシだろ♪」


「そっか…まぁやってみるよ」


幹太はフゥっと一息ついて、クレーンゲームに百円を投入する。


「あぁっ!芹沢、まだだぞ!もうちょい我慢してっ!」


「えぇっ!?まだかよっ!」


「そう、落ち着いて…そ、そこで奥かな…」


「奥…こんな感じか?」


「あぁんっ!もうちょいっ!いいぞ、芹沢!あっ!そこっ!」


「よし!ここかっ!」


「あー!いった♪」


改めて言うが、二人はクレーンゲームに熱中しているだけだ。

そんな二人を遠巻きに眺めている人たちは、なぜか顔を赤くしている。


「あ、亜里沙ちゃん、恥ずかしい…」


「…騒ぎすぎだよ、幹ちゃん」


そんな人たちの中でも、身内である澪と由紀はひときわ頬を赤く染めていた。


「ん〜♪久々に来るとけっこう楽しいな♪」


亜里沙はホクホク顔でそう言いながら、抱き抱えたビーグル犬のぬいぐるみに頬ずりする。


「しっかし、取れるとやっぱり嬉しいもんだな♪」


「そうでしょう♪そうでしょう♪

可愛い亜里沙ちゃんにプレゼントできて光栄でしょう♪」


「まぁな。臼井さんにそんだけ喜こんでもらえるなら取れて良かったよ」


「おー!さすがは女ったらしの芹沢。

そういうとこはサラッと受け流すんだな」


「女たらしって…だってさ、デートだなんて俺をからかってるだけだろ?」


「う〜ん、まぁそうだけど…」


「やっぱりかよっ!そうだとわかっててもこっちは緊張してたってのにっ!」


「うぇっ!?芹沢、ホントに?」


「そりゃそうだよ!

臼井さん、び、美人だから…さ」


照れくさそうに幹太からそう言われ、亜里沙は一瞬だけ顔を伏せた。


「ふぅん、そっか…美人ね。

ありがと、芹沢♪お世辞でも嬉しいよっ♪」


再び顔を上げた亜里沙は、ニッコリ笑って幹太の背中を叩く。


「うっ!べつにお世辞じゃないって…」


「あのね芹沢、私が美人っつーなら由紀はどうなの?」


「なんだよ、突然?」


「あんた由紀が綺麗だって、ちゃんと気づいてる?」


「お、お〜?由紀が綺麗…か?」


「やっぱりかよ…。

だったら芹沢、澪のことはどう思う?」


「広川さんは可愛いって感じかなぁ〜」


「…コイツ、それがわかってて、なんで由紀のことがわからないの?」


「うん?なに、臼井さん?」


「と、とにかく芹沢っ!あんたはもっと周りの女子をよく見なさいっ!」


「よく見る…」


「私を見てどーすんだよっ!

しかもあんた、私の胸見てないっ?」


亜里沙は真っ赤な顔をして、自分の胸をぬいぐるみで隠した。

制服の上からだと分かりにくいが、実のところ亜里沙はかなりの巨乳である。


「いや、だって見ろって…」


幹太は色々と正直な男の子なのだ。


「だから私じゃないっ! 」


「えー!?」


「もーいいわ!私とのデートはここで終了っ!しゅーりょーですっ!

澪ー!由紀ー!」


亜里沙は振り返り、二人の後に付いてきていた澪と由紀を呼んだ。


「亜里沙ちゃん、どうしたの?」


「後ろ歩いてたから、何言ってるか全然わからなかった…」


「あたしゃもういいわ…次は澪の番」


「えっ?亜里沙ちゃんもういいの?」


「うん。あたしゃもう十〜分!」


「じゃ、じゃあ芹沢君、行こうか…?」


「おう。よろしくな、広川さん」


色々とよくわからないことはあるが、ここまで付き合った以上、最後までやり抜こうと幹太は決めた。


「芹沢君、ここだよっ♪」


「おぉ〜!意外と早く着いたな」


それから一時間後、駅前の複合娯楽施設から電車を乗り継ぎ、幹太達は海沿いにある水族館にやって来た。

夕方の砂浜にはまだ人も多く、水族館のチケットを買う人の列もそこそこの長さがある。


「夕方からだと安いんだよ♪」


「そりゃ助かる。でも、入ったらすぐ閉館だったりして…」


「ううん。夏の時期はけっこう遅くまでやってて、ライトアップとかもするんだよ♪

私、ずっと来てみたかったんだぁ〜♪」


そう言って、澪はソワソワと体を揺らす。


「広川さんも来たことないんだ?」


「うん。なんか一人で来るのは寂しいかなって…」


「臼井さんとか由紀はダメだったの?」


「私もそうしようと思ったけど、由紀ちゃんはラクロス忙しいし、亜里沙ちゃんはそんなとこは男と行けって…」


「あぁ、確かに言いそうだな」


「でしょう。だから今日がチャンスかなって思って…」


「ハハッ♪そっか、そういうことなら全力で楽しもう♪」


「うん♪」


幹太と二人で水族館に来れたということで緊張している澪は気づいていないが、幹太は水族館の付き合いとして、たまたま都合よく彼女に選ばれたのだと本気で勘違いしていた。


「ほい、チケット」


「ありがとう、芹沢君♪」


「そんじゃ行こう。まずは…」


と、館内マップを見始めた幹太は、自然と澪の手を取る。


「せ、芹っ…」


澪は危うく叫びそうになるのを必死で堪えた。


『繋いでるってわかったら離されちゃうっ!』


そう思いつつ、彼女はゆっくりと繋がれた手に力を入れる。


「広川さん?」


「ふぁっ!ふぁい!」


「イルカショー観たくない?」


「あっ!観たいっ♪」


「よし!じゃあ奥だ!」


と、幹太は澪を引きずるようにして水族館の奥へと駆け出す。


「あっ!せ、芹沢君っ!走っちゃダメだよっ!」


なんだかんだで、幹太の方も久しぶりの水族館にテンションが上がっているのだ。


「なぁ由紀、芹沢っていっつもああなの?」


「た、たぶん。

そういえば…さっき亜里沙とも腕組んでたよね?」


「…マジ?」


「マジ。

あとゲームセンターでイヌッピーのぬいぐるみ取った時も、幹ちゃんに抱きついて喜んでたけど…?」


「うっわ〜ごめん。

でも芹沢って、なんでかくっついてもいっかってなんない?」


「そうなの?私にはちょっとわからないけど…」


「えぇ〜!あれだけいつもくっついててか!?」


「やっぱりそうなんだ…さっき澪にも言われたんだけど」


「澪にもかよ」


「まぁ手を繋ぐのは芹沢家と柳川家の習慣だからね〜♪」


「うぇ〜厄介すぎんだろ、それ」


「でも、カワイイ澪ちゃんが迷ったら大変だし…」


「澪はあんたらの子供かっちゅーのっ!?

あのね由紀、この際だから言っとくけど、芹沢ってウチの学校の男子じゃかなりイケてる方だからな」


「えぇ〜?」


「やっぱりかよ!まったく、この幼馴染たちは…。

あのな、芹沢ってこないだまでボクサーだったんだろ?」


「うん♪幹ちゃん、強かったんだよ♪」


「へぇ〜強いんだ♪…って強さじゃなくて!

やっぱりさ、ボクシングしてたから体が締まってるよな?」


「そうだね」


「スタイルが良くて、顔も…まぁマシじゃん?」


「そう…なのかな?」


「オマケに性格も優しいってんだから、そりゃモテるわな」


「…うそだぁ〜」


そう言う由紀は、心底信じられないという表情をしている。


「 あのさ由紀、澪の気持ちって…」


そんな由紀に、亜里沙は思い切って聞いてみることにした。


「…うん、それはわかってるよ。

だって澪は親友だし、それにいっつも話そうとしてくれてるから…」


「あぁ…あいつ、けっこうバレバレだもんな」


「でも私、澪以外に幹ちゃん好きな人知らないよ…」


「えぇ〜!?」


由紀のあまりの無自覚さに亜里沙は驚愕する。


『マジかよ?だいたい芹沢が優しいってのも、由紀と接してる時の態度からきてんだぞ…』


しかしこの後、この亜里沙との会話がキッカケとなり、由紀は幹太やその周りを良く観察するようになるのだ。


「あ〜こりゃイチからか?イチから説明しなきゃダメか…ってマズい!澪たちを見失った!」


「あ、それなら大丈夫だよ♪」


「大丈夫って…?ここけっこう広いぜ」


「ん〜?まぁとりあえず行ってみようよ♪」


そう言って、由紀は亜里沙の手を引いて歩き始める。


「マジだ、マジでいた…」


それから数分後、亜里沙はイルカのプールの最前列に座る二人を見つけた。


「ね〜♪だから大丈夫だって言ったでしょ♪

私、ぜったい幹ちゃんはここにいるって思ってたんだ〜♪」


「澪じゃなくて…?」


「うん、幹ちゃん♪」


「それってなんか理由があんの?」


「それは…なんでだろ?」


「わかんねぇのかよっ!?」


「ホントになんでだろ〜ね♪」


そう言って、由紀はタハハと笑う。


『コイツら…はぁ〜あたしゃこれからどうすりゃいいのよ…』


友人になってすぐに澪と由紀の恋心に気づいた亜里沙は、徹底して平等を貫いているつもりだ。


『でも芹沢って、お母さんもちっちゃな頃に亡くなってるって話だし、お父さんも今は入院中なんだよな…?

由紀ならその辺りのことも詳しく知ってそうだけど…』


亜里沙は自分と同じく片親である幹太の家庭事情を、前に本人から聞いた事があったのだ。


「あっ!亜里沙、始まるよ♪」


「あぁ…そうだね」


呆れたようにそう返事をする亜里沙の視線の先には、好きな男の子の隣で幸せそうに笑う澪の姿がある。


「あんまり余裕こいてると…いつかいなくなっちゃうかもよ、由紀…」


「え〜?亜里沙、なんか言った?」


「あんたさっきから耳遠くないっ!?」


イルカショーを見終わった幹太と澪は、館内を周りながら水族館中央にある巨大な水槽の前で立ち止まった。

水槽の中では小さな魚が大量に集まって泳ぎ、風に揺れるカーテンのように揺らめいている。


「広川さん、あれはイワシかな?」


水槽を見上げる幹太にそう聞かれ、澪が水槽の横にある説明を見る。


「ちょっと待ってね…ん〜?あ、そうみたい…」


「おぉ〜!生きてるとけっこうデカいんだな。

よく考えたら俺、煮干しになってんのしか見たことないや」


「えっ!?煮干しってイワシなのっ?」


「だいたいはそうだよ。

たぶん広川さんが家で使ってんのは片口イワシの煮干しだと思うけど…」


「えっと…今泳いでるのはマイワシさんだって」


「うん。ウチみたいなラーメン屋だとマイワシの煮干しも使ったりするよ。

あとはトビウオとかも…」


「フフッ♪そうなんだ。

でも芹沢君、お魚さんの前でその話をするのはちょっと可哀想かも♪」


「そういや、水族館に来て美味しそうって言うのは日本人だけらしいからな」


「確かにさっきの越前ガニは美味しそうだったね♪」


「えぇ〜!ホントかよ!?

俺はちょっとおっかなかったけどなぁ〜。

広川さん、意外とその辺りは大丈夫なんだな」


「う、うん。私も今日気づいたんだけど、どうやら深海魚とか好きみたいです…」


「だからさっきのダンゴムシみたいなのに釘付けだったんだ」


「ダイオウグソクムシって言うんだって♪もうすっごい可愛かった〜♪

あの子、ウロコの間が…」


と、澪は恍惚とした顔でダイオウグソクムシの魅力を魅力を語り始める。


「そ、そっか。そんじゃ次に…」


「芹沢っ!澪っ!」


と、幹太が澪の手を引いて移動しようとしたところで、焦った様子の亜里沙が現れた。


「邪魔しちゃってごめん!

でも私、由紀とはぐれちゃって…」


「えっ!?由紀ちゃん、携帯は?」


「そういやさっきバッテリー切れたって言ってたぞ」


「出口で待ってもいいかなって思ったんだけど、まだちょっと時間もあるし…」


「うん。一人でいるのは可哀想だよね。

だったらみんなで探そう」


「ホントにごめんな、澪」


「ううん、私だって由紀ちゃんを一人でいさせたくないよ。

だから知らせてくれてありがとう、亜里沙ちゃん♪」


「お、おう。それじゃどうしようか?」


「だったら手分けして探して、十五分後にここで集合ってのはどうだ?」


「ナイス芹沢!それ採用!」


「うん♪それじゃ芹沢君、十五分後にここでね」


「わかった」


そうしてひとまず由紀を探し始めたものの、幹太はまったく焦っていなかった。


「由紀は…たぶんあっちかな」


そう言って、幹太は迷いなく水族館の中を突き進む。


「おっ!やっぱいた」


「あ、幹ちゃん♪」


由紀がいたのは、小さなクラゲの水槽が並ぶ一角であった。


「由紀、臼井さんが心配してたぞ」


「ゴメンゴメン。なんだか目がはなせなくって…」


「はぁ…まぁ昔っから好きだもんな…」


「うん。なんだか頑張ってピコピコ泳いでるのが可愛いくって…」


「まぁそりゃなんとなくわかけど…」


「でしょ♪それじゃ幹ちゃんならどの子?」


「俺はこいつ」


そう言って、幹太は紫色のクラゲを指差した。


「ゆーちゃんは?」


「私はこの子」


由紀は水槽の一番下にいる茶色いクラゲを指差した。


「おっ!確かにソイツも気になってたんだよなぁ〜」


「でしょう♪この子が一番頑張って泳いでるもん♪」


「うんうん。そんな感じだよな♪」


そんな風にどっぷり二人の世界に入り込む由紀と幹太を、少し離れた場所から亜里沙と澪が見つめていた。


「澪、あれに勝てる?」


「…うん、大丈夫。由紀ちゃんが強力なライバルなのは最初からわかってたから…」


「そっか…」


「それに私、あの美術の授業の時に決めたの…」


「それって芹沢が澪に綺麗って言ったってやつ?」


「か、髪だよ。芹沢君、私の髪の毛が綺麗だって言ってくれて…って、なんで亜里沙ちゃんが知ってるのっ!?」


「ん〜?なんかけっこう有名な話みたいよ。

私も入学してすぐに聞いたし…」


「そうなんだ…。

と、とにかくその時ね、私にも綺麗になれる可能性があるって、芹沢君が教えてくれたの。

だから…だから私は、芹沢君のためだけに女を磨くって決めたんだ」


「フフッ♪澪が本気になったら、いくら幼馴染の由紀でも危ういね♪」


「どうなるかわかんないけど、実は私、頑張ればなんとかなるかもって思ってる…」


「えぇ〜!ホントか?

芹沢って、その辺りはめっちゃニブそうだけど…」


「ううん。たぶん芹沢君ってすっごく押しに弱いと思うの…」


「あ〜まぁ確かにそんな感じするな」


「これはもしもの話だけど、ここが一夫多妻の国だったら、芹沢君ってアプローチしてきた女の子を全員お嫁に貰ってくれそうじゃない?」


「いや、悪いけど、さすがにもしも過ぎて想像できないわ」


「そうかなぁ〜?ぜったいそうだと思うけどなぁ〜」


それは恋心の成せる技なのか、恐るべきことに澪は、今後の幹太の人生を見事に言い当てていた。


「とにかく私にできることは全部してみるつもり…」


「えぇ!?全部ってどこまでよ?」


「フフッ♪全部は全部だよ、亜里沙ちゃん♪」


「み、澪…?」


「なに?」


そう亜里沙に返事をする澪の視線は、まっすぐ幹太へと向かっている。


「…まぁほどほどにしときなよ」


「そんなのダメだよ!恋は全力でなきゃ♪」


「そうだった…実は澪って、私達の中で一番ブッ飛んでんだよね…」


「それじゃあ亜里沙ちゃん、そろそろ二人のとこに行こうか?」


「そうだね。もう見つけたんだから、改めて集合しなくてもいいかな」


「…それに早くあの二人のジャマをしないと」


「澪?」


「ウッ、ウッソでぇ〜す」


「ぜんぜん誤魔化せてないからっ!声震えてんじゃん!」


「そう言えばさ…」


「もーなに?芹沢んとこ行くんじゃないの?」


「芹沢君、どっちとのデートが良かったんだろう…?」


「あ!そっか、そんな話だった…えっ!?澪?」


と、亜里沙が今日の目的を思い出したところで、澪が彼女の腕をガッチリ掴んだ。

ここのところの水泳部は、なぜか重点的に握力を鍛えているのだ。


「…まさか亜里沙ちゃんも?」


「いやいやいや!違うって!

今日のはちょっと意地張ってみただけだからっ!

せ、芹沢なんて…」


「芹沢君なんて…?」


とそこで、亜里沙は今日のデートを思い出す。


「せ、芹沢なんて…ちょっといいか…いだだだだっ!澪!痛いってっ!」


「そう…亜里沙ちゃんもなのね…」


そう言って、澪はパッと亜里沙の腕を離した。


「あー痛かった…あのね澪、本当に私は遠慮しとくよ。

だって…」


亜里沙はそこで言葉を止め、振り返って幹太を見た。


「澪と由紀にはぜったい敵わないもん…」


そう言って切なげに幹太を見つめる亜里沙は、同性の澪が見惚れてしまうほど美しかった。


「亜里沙ちゃん…」


「あ、あとさ…芹沢はけっこうイイ線いってると思うけど、もしかしたらもっといい男がいるかもしんないじゃん!

だから今は、とりあえず二人を見守ってるよ♪あ、あはは〜♪」


と、亜里沙は笑って澪の肩をバンバン叩く。


「うん。そっか…」


「でもな澪、やっぱりアレは強敵みたいだぜ…」


「えっ?」


亜里沙にそう言われた澪が二人の方に視線を移すと、幹太と由紀が仲良く腕を組んでクラゲのコーナーを歩いていた。


「あ、亜里沙ちゃん…?」


「な、なに…?」


「あれって私達の時より近くない…?」


「おぉ、ぜんぜん近いな。

つーか由紀、芹沢の肩に頭のせてない?」


「乗っけてるね…」


「そんで澪はどうするよ?」


「う〜ん…そうね、今はジャマするっていうより、残りの時間をみんなで楽しみたいかな♪」


「おっ、賛成♪そんじゃあ行く?」


「うん♪

由紀ちゃ〜ん!芹沢く〜ん!」


大声でそう叫びながら、澪は二人の方へと走って行く。


「よっしゃ♪そんじゃ私も楽しむとするか〜♪」


亜里沙は笑顔で再会を喜ぶ親友達に向かって、ゆっくりと歩いて行った。



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