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華ちゃんのお願い

 その様子をじいっと見ていたブーさんは本当に申し訳ない気持ちになりました。

 自分の為に林さん一家がこんなに頑張っているのどうして自分の事ばかり考えてしまうのだろう…。

 自分で動く事が出来たなら今すぐにでもスポっと抜けてあげるのに…。


 けれどこうも考えるのです。

 今全然抜けないのは自分が抜かれたくないって踏ん張っているからなのかな。

 抜かれたい想いが強ければ案外簡単に抜かれちゃうのかも…と。


 そうは思ってみてもやっぱりカブの部分は抜かれたくない思いを変えるつもりはありませんでした。

 いざとなれば抜く時の力で葉っぱが全部ちぎれちゃってもカブは土の温かさの中にいたいと願うほどでした。


 林さん一家がバテて動けなくなっているところへ一家の孫娘の華ちゃんがブーさんに近づきました。

 そしてある程度掘られて姿が見えているブーさんのカブの部分に華ちゃんは話しかけました。


 ブーさんブーさん

 華ちゃんはブーさん大好きだよ

 だから意地悪しないで

 早く出てきて

 お願い


 そう言い終わると華ちゃんはブーさんにかわいいキスをしました。

 ブーさんのカブの部分は華ちゃんの言葉にすっかりメロメロです。

 ブーさんはその時葉っぱとカブがやっと同じ気持になれたと感じました。


 華ちゃんのその行動を見ていた林さんは今ならブーさんが抜けると確信してもう一度ブーさんを抜こうと力を込めました。


 すぽっ!


 華ちゃんのラブコールのおかげでしょうか。

 あんなにどうやっても抜けなかったブーさんはあっけないくらいに簡単に抜けました。

 引っこ抜かれたブーさんは誰が見ても驚くほど立派に成長していました。

 これはギネス記録間違いなしです!


 その後ブーさんは写真に撮られたりしっかり計測して記録に残されたりしてすっかり有名野菜の仲間入りを果たしました。

 ブーさんの写真はネットを駆け巡り一躍世界的に有名になりましたし、いくつかのテレビ局がブーさんを取材に訪れるほどでした。

 ブーさんの育て主の林さんも有名になり林さんの野菜も飛ぶように売れました。


 ブーさんもその結果に大満足です。

 やっと林さんに恩返しが出来たと思いました。

 林さんの笑顔を見ればこれからの自分の運命も快く受け入れられるのでした。



 え?ブーさんはその後どうしたって?


 一連の騒ぎが落ち着いた後に林さんはご近所の皆さんを集めてカブパーティーを開きました。

 あまりに大きかったブーさんは出荷する事が出来なかったのでみんなで美味しく頂く事にしたのです。

 勿論華ちゃんもブーさんを美味しく頂いてニコニコしていましたよ♪



(おしまい)

サンデーで連載中の某漫画の特訓を読んでいて思いついた作品です。

それにおおきなかぶの要素をプラスしてカブ側の視点で書きました。

ノリで書いていたんですけど結構楽しく書けましたw

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