表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/16

豊は争となり和へすすむ

「はあ~。」


 俺はため息をつく。


 なぜなら、今日はテストだからだ。


 テスト、と言ってもみんなが思うような大勢がひとつの教室でやるというようなもではなく、あくまで俺一人でやるものだ。


 トントン


 今日のテスト会場である始祖部の部室の扉をノックし中に入と見知った顔が三つ見えた。


「あれ、どうしてクーとアルケがいるの?」


 今日は、俺とアトロナーヘ先生のワンツーマンの予定だったはずだが?と俺は疑問に思うと


「いや~ひまだし、せっかくだから受けてみようかな~っと。」


 クーは笑いながら。


「ボクも、同じです。」


 アルケは無表情にうなずきながら。


 そう答えた。


「ふ~ん。」


 テストなんて、暇だからって受けたくなるものなのかね~。なんて、考えていると


「お、やっと来たか。じゃあ、さっそく始めるぞ~。」


 とアトロナーヘ先生が手を叩きながら言ってくる。


 俺は席に着き、裏側になっているテスト用紙をアトロナーヘ先生から受け取る。


「テスト内容は簡単だし、不合格とかもないからリラックスして受けてくれ。」


 先生のその言葉におれはだいぶ気が楽になった。


「じゃあ、スタート。」


 その言葉と当時にテスト用紙を裏から表にする音が三つ響いた。


 俺は即座に名前欄にロクショウ・ユナトと記入し、問題内容を確認した。


 わかんねぇ……


 いや、アトロナーヘ先生が言ったとうり簡単な問題だが、しかし出来の悪い好等学校に通い、テストの次の日にはテスト内容どころか、テストそのものを忘れてしまうような出来の悪い頭しか持っていない俺にはレベルが高すぎたのである。


「俺のテスト、エンドだぜ……。」


 声にならない声でそうつぶやいた。


 もちろん、テストは白紙で提出した。







「ロクショウ……これはちょっとひどすぎるぞ。」


 アトロナーヘ先生が呆れるを通りしてあわれみすら感じる声音こわねでそう言った。


「うう……でも、しばらくの間そういった学校のお勉強みたいのは離れていたし、仕方ないんだ。」


 俺は言い訳がましくいった。


「ロクちゃん……流石さすがにちょっと擁護ようごできないかも。」


 クーが、悲しいものを見るような目でそういい。


「クークークーの言うとうりです。」

 

 アルケが相変あいかわらず無感情な目でそう続けた。


「これ以上の追撃ついげきは、俺をきずつけることになるぜ!」

 

 と、冗談じょうだんめかして言ってみた。


「補習だ。」


 アトロナーヘ先生がそう冷たく言い放つ。


「え……不合格とかないって言ったじゃないですかー!!」


  俺がそう言っても


「この世の中、勉強が全てとは言わない、しかし流石さすがにこれはひどすぎる。」


「うぐぬうううぅぅぅぅぅぅ…………。」

 

 俺がそう項垂うなだれていると。


「大丈夫、一緒いっしょ頑張がんばろ、ロクちゃん。」


「ボクも、手伝うです。」


 ふたりがそう慰めてくれた。



 




「まず、約十万年前、世界で初めて建国した国、その王と国の名前は?」


 補習が始まり、アトロナーヘ先生がそう、質問してくる。


 もちろん俺は、このといの答えは知らない。


「はーい!」


 クーは手袋につつまれて肌が見えない手を元気よくげる。


「ピェールヴィ王国、アジーン王がてました!」


 と、常識のように答える。


「わかったか、ロクショウ。」


 アトロナーヘ先生が聞いてくる。


「はい……わかりました。」


 俺は覇気はきのない声で答えた。


「んう……私たちはな、別にお前をいじめたいわけじゃないんだ、ただこのくらいのことは知っておいて欲しいんだ。」


 先生がそう言ってくる。


「そうだよロクちゃん、わたしはロクちゃんがほかの人に馬鹿にされて傷ついて欲しくないだけなの。」


「ボクも、ロクショウに傷ついてほしくないです。」


 クーとアルケも続いてそう言ってくる。


 俺は、その言葉に感動した、俺みたいなバカでどうしようもないやつの事を、ここまで心配してくれるなんて。


「先生!紙をください!」


 俺は、立ち上がりメモを取るための紙をアトロナーヘ先生に要求する。


「やっと、やる気になったか!」


 アトロナーヘ先生がきつてくる。


 この時、先生の女のふくらみが顔に当たり、俺の男の部分が膨らみそうになったのは秘密だ。


 あと、なぜかクーが鬼みたいな顔になっていた。


 








 



 


 俺のやる気が出てきたところで、さっそく補習を再開した。


「約五万五千年前から約四万九千年前までの間は発展期はってんきというそれはなぜか。さっきはクークークーに当てたから、次はアルケの番だな。」


 とアトロナーヘ先生がアルケを指名する。


「はいです。」


 アルケは立ち上がり


錬心アルキミヤアルカディーマ浪客馬車ファンジオ霊獲恵豊マワレドハデヤ宝玉謫髄レクルソの四つの魔法が開発されたからです。」

 

 とスラスラと答える。


「うん、正解だ。」


 と、アトロナーヘ先生が言うと黒板にアルケが答えた内容を書く。


「これは、四大豊術よんだいほうじゅつと言う、また別名では導術どうじゅつとも言われるな。」


 と言うと黒板にも同じような内容を書く。


「では、クークークーこの四大豊術の効果を答えられるか。」


 と先生がクーを指名する。


「はい!まずは錬心アルキミヤアルカディーマこれは、精神マインドを人工的につくる魔法です。」


 と元気に立ち上がり答えさらに続けて。


「次に、浪客馬車ファンジオ精神マインドというものはうつわ定着ていちゃくしないとすぐに消えてしまうはかないものそのため錬心アルキミヤアルカディーマでつくった精神マインドを守り、みちびき、器に定着させる魔法です。」


 と、さらに続けて答え。


「三つ目に、霊獲恵豊マワレドハデヤこれは、まわりのゴウストを自分の魔力グロウリに変換する魔法です。」


 と、さらに続けて答え。


「最後に、宝玉謫髄レクルソこれは、鉱物こうぶつ魔貯石リソウスに変える魔法です。」


 と一回も噛まずに言い切ったクーは満足げに着席した。


 アトロナーヘ先生は黒板にさっきクーが言った事を書きながら


「ロクショウ、魔貯石リソウスのことはわかるか。」


 と俺に聞いてくる。


「いや~、さすがにそれぐらいはわかりますよ~、バカにしないでください。」


 と不機嫌ふきげんそうに言っては見たもの、俺の馬鹿ばか加減かげんを見せ付けられたら仕方がないな、と思いながら先生のといに答えた


魔貯石リソウスと言うのは魔力グロウリを簡単にめることができまた、簡単に取り出すことができる石のこと、でしょ。」


 と俺は答える。


「うん、正解だ。」


 と先生はうなずいた。


「さて、ロクショウしばらくの間、時間をるからゆっくりメモを書いてくれ。」


 先生が時間をくれたので丁寧に黒板の内容を書きうつす。 







 

 しばらく時間がち黒板の内容を写し終えると、補習は再開した。


「そして、四大豊術よんだいほうじゅつの開発によりさまざまな道具の開発、大量生産を可能としどんどん豊かになっていった、しかし道具の大量生産が出来るということは、兵器も大量生産出来るようになったということだ、つまり戦争の激化げきかが始まる。」


 先生は少し悲しそうに、そう言った。


「四大豊術が開発される前にも戦争というものはあった、しかしそれはごく一部いちぶの魔法の資質ししつが異常に高いものだけでおこわれる、少人数しょうにんずう小規模しょうきぼなものだった、しかし四大豊術の開発による兵器の大量生産によって大人数だいにんずう大規模だいきぼなものへとなっていった。」

 

 先生は一呼吸ひとこきゅうおいてから


「約四万九千年から約二万年前まで、つまり二万九千年間続く戦乱期せんらんきの始まりだ。」


 みょう迫力はくりょくのある声で先生はそう言った。


「その後、二万年前になると三界球星さんかいきゅうせいに存在する国は二つだけになっていた。」


 先生が言うと、クーが元気よく


「はいはーい!、今ある二つの国、イストとウェートだよねー!」


 そう、発言した。


「ああ、そしてその二つの大国の実力は拮抗きっこうしていてなかなか決着けっちゃくが付かなかった、そして一万二千年前とうとう開発されてしまった最強最悪な魔法その名も。」


 先生がまた一呼吸ひとこきゅうおいてその名前を口にした


「世界を終焉しゅうえんへとみちびくことすらできる魔法……終世魔法オッフェンバールングだ。」


 その物物ものものしい名前に俺はついゴクリ……とつばを飲み込んでしまった。  


「さてクークークー、イストの開発した終世魔法オッフェンバールングは?」


「はーい!支界しかいつかさどる魔法、礎不動剛敷アルドサベトサイタラだね!」


 とクーの可愛らしい声には似合にあわない魔法の名前を口にする。


「正解、次にウェートの終世魔法オッフェンバールングは?」


「はいです、恵界えかいつかさど紫霄霹戯園カエルムソキウスです。」


 アルケはそのんだ声に似合にあわない魔法の名前を口にする。


「ああ、正解だ、そしてその二つはほぼ同時に開発れたという。」


 アトロナーへ先生はさらに言葉を続ける。


「終わらない戦争、つかれ果てたたみ、そして、終世魔法オッフェンバールングの開発、これらにより、このままでは二つの国は滅茶苦茶めちゃくちゃになってしまう、そう考えた二つの国の二人の国王は和平条約わへいじょうやく締結ていけつこれによって八千年続いた二大国戦期、さらに戦乱期の二万九千年も入れて、三万七千年続いた戦争はまくを閉じた、というわけだ。」


 だが、しかし先生の解説は終わらず


「しかし、長いあいだあらそい続けた二つの国がそう簡単に丸くなるはずもなく、いつもめ事を起こしていて、いつまた戦争になるかわからない状態じょうたいが続いていた、それを見かねた一万年前の二人の王が大胆なことをする。」


 先生の口が止まる


「ふふ、ロクショウ答えてみるか。」


 と、先生はちょっと意地悪いじわるな質問をしてくるが、今までの話を聞いてなんとな~く思い出した気になっていた俺は、答えてみる気が急に出たので答えてみた。


「はい!あ~え~っとぉ……そのぉ……あっ、そうだそうだ、帝室ていしつ帝室ていしつ。」


 と答えると。


 

「ロォクショォォオ!!正解だー!」


 とアトロナーヘが泣きながらきつてきた。

  

「オフッ!グルジイ……。」


 さっきより強い力で抱きしめられたため、その豊満ほうまんな胸に顔が押しつぶされ息ができなくなってしまった俺をクーは


「ちょっ!ロクちゃんから離れて!苦しんでいるでしょ!!」


 めずらしく怒鳴どなったような声を上げて、意外に強い力で俺と先生を引き離した。


「ああ、すまん、すまん、つい感動してな。」


 先生が後ろのかみが黒い部分をさわりながら謝ってきた。


「ほんとですよ、先生いくら俺でも苦しいものは苦しいんですからね!」


 と怒りながら言ったあと


「今度は、もっと優しくお願いしますよ。」


 とイヤらしい笑みを浮かべて言うと。


「ロ~クちゃん!補習の続きし~ましょ!」


 とクーが怖い笑みを浮かべていたので


「そうだな、早く再開しようぜ!」


 とキリリとした顔で言った



 


 




 

 


 


「だいぶ話がそれてしまったが、帝室ていしつというものは一万年前の二人の王の娘と息子を結婚させ生まれてきた子供を皇帝こうていとし二つの国どちらにもぞくさない存在にし二つの国を統治とうちさせようというものだ。」


 その話に俺は


「そう、うまくいくもんなのかね。」


 と口を挟んだ


「やっぱり、いろいろな所から反対の声が上がったが、賛成する者も多かったまあ、それはいろいろな奴がいろいろ努力して帝室ていしつは完成したというわけだ、そしてそれにともない、二つののことが起きた。」


 アトロナーヘ先生は言葉を続ける。


「まず一つ目は、宝界ほうかいつかさど終世魔法オッフェンバールングである天蓋絢爛宮フセリューンナヤディクタトゥーラ皇帝こうてい献上けんじょうしたこと。」


 とアトロナーヘはその低い声に似合にあわない魔法の名前を口にした。


「これは、イストとウェート二つの国が共同開発きょうどうかいはつしたもので、王と帝の力のバランスをたもつために献上けんじょうしたんだ。」


 さらに、アトロナーヘ先生は続けた


「二つ目に、二つの国を統治とうちするための組織そしきが出来上がった、これをなんていうか知っているか。」


 という先生の問いに答えたのはアルケだった。


「はいです、『おう』『かい』『いん』『しょ』『ぐん』による五大尊下制ごだいそんかせいです。」 

 

 アルケは答えると


「ああ、正解だ、まず『かい』は協会きょうかいの事でさまざまな事を運営うんえいしている組織だな、特別学園を運営している、魔法協会もこの組織の一部いちぶだな。」


「次に、『いん』は議院ぎいんの事でさまざまな法律を作ったり、変えたり、無くしたりしているな。」


「三つ目に、『しょ』は審判所しんぱんしょの事でさまざまなめ事を法律を元に良いか、悪いかを判断している。」


 とアトロナーヘ先生は言葉を続け


「『かい』『いん』『しょ』この三つは特に重要じゅうようなため別名があるそれをなんて言うか知っているか、クークークー。


 アトロナーヘ先生がクーを指名する。


「はーい!『三大天下さんだいてんか』っていわれるね!」

 

 クーが相変わらず元気よく答える。

 

「ああ、そしてこの三大天下はおたがいに牽制けんせいし合う権力を持っている。」


 アトロナーヘ先生はそう言いさらに言葉を続ける。


「『ぐん』は協会の下部かぶ組織で武力を持っている。」


「最後の、『おう』は少し特殊とくしゅ組織そしきだな。」


 アトロナーヘ先生がそういうので


「どういうこと?」


 俺は、そう答える。


「ああ、それはな、『おう』というのは国王や皇帝もそこにぞくしているんだそして、王族や帝室の威光いこう利用りようした調査機関ちょうさきかんでもあるんだ。」


 先生の話に


「へ~、具体的にどう利用するの?」


 俺は、そう質問した。



まず、帝室や王族の絶対性ぜったいせいによりあらゆる組織は『おう』の調査ちょうさ拒否きょひできないんだ、しかし自身じしんも帝室や王族の潔白性けっぱくせいにより、あらゆる組織の調査を拒否できないんだ。」


 最後に、ここまでのことを、アトロナーヘ先生は黒板に書くと


「ロクショウ、ゆっくりさせらずに紙にうつすんだぞ。」


 と言い、ほかの二人もいつまでも待ってくれた。












 後日、俺はまた同じ内容のテストを受けた、百点とはいかなかったが、まずまずの点数が取れた。




 

 







 


 


 


 


 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ