豊は争となり和へすすむ
「はあ~。」
俺はため息をつく。
なぜなら、今日はテストだからだ。
テスト、と言ってもみんなが思うような大勢がひとつの教室でやるというようなもではなく、あくまで俺一人でやるものだ。
トントン
今日のテスト会場である始祖部の部室の扉をノックし中に入と見知った顔が三つ見えた。
「あれ、どうしてクーとアルケがいるの?」
今日は、俺とアトロナーヘ先生のワンツーマンの予定だったはずだが?と俺は疑問に思うと
「いや~暇だし、せっかくだから受けてみようかな~っと。」
クーは笑いながら。
「ボクも、同じです。」
アルケは無表情に頷きながら。
そう答えた。
「ふ~ん。」
テストなんて、暇だからって受けたくなるものなのかね~。なんて、考えていると
「お、やっと来たか。じゃあ、さっそく始めるぞ~。」
とアトロナーヘ先生が手を叩きながら言ってくる。
俺は席に着き、裏側になっているテスト用紙をアトロナーヘ先生から受け取る。
「テスト内容は簡単だし、不合格とかもないからリラックスして受けてくれ。」
先生のその言葉におれはだいぶ気が楽になった。
「じゃあ、スタート。」
その言葉と当時にテスト用紙を裏から表にする音が三つ響いた。
俺は即座に名前欄にロクショウ・ユナトと記入し、問題内容を確認した。
わかんねぇ……
いや、アトロナーヘ先生が言ったとうり簡単な問題だが、しかし出来の悪い好等学校に通い、テストの次の日にはテスト内容どころか、テストそのものを忘れてしまうような出来の悪い頭しか持っていない俺にはレベルが高すぎたのである。
「俺のテスト、エンドだぜ……。」
声にならない声でそうつぶやいた。
もちろん、テストは白紙で提出した。
「ロクショウ……これはちょっとひどすぎるぞ。」
アトロナーヘ先生が呆れるを通り越して憐れみすら感じる声音でそう言った。
「うう……でも、しばらくの間そういった学校のお勉強みたいのは離れていたし、仕方ないんだ。」
俺は言い訳がましくいった。
「ロクちゃん……流石にちょっと擁護できないかも。」
クーが、悲しいものを見るような目でそういい。
「クークークーの言うとうりです。」
アルケが相変わらず無感情な目でそう続けた。
「これ以上の追撃は、俺を傷つけることになるぜ!」
と、冗談めかして言ってみた。
「補習だ。」
アトロナーヘ先生がそう冷たく言い放つ。
「え……不合格とかないって言ったじゃないですかー!!」
俺がそう言っても
「この世の中、勉強が全てとは言わない、しかし流石にこれはひどすぎる。」
「うぐぬうううぅぅぅぅぅぅ…………。」
俺がそう項垂れていると。
「大丈夫、一緒に頑張ろ、ロクちゃん。」
「ボクも、手伝うです。」
ふたりがそう慰めてくれた。
「まず、約十万年前、世界で初めて建国した国、その王と国の名前は?」
補習が始まり、アトロナーヘ先生がそう、質問してくる。
もちろん俺は、この問の答えは知らない。
「はーい!」
クーは手袋に包まれて肌が見えない手を元気よく挙げる。
「ピェールヴィ王国、アジーン王が建てました!」
と、常識のように答える。
「わかったか、ロクショウ。」
アトロナーヘ先生が聞いてくる。
「はい……わかりました。」
俺は覇気のない声で答えた。
「んう……私たちはな、別にお前を苛めたいわけじゃないんだ、ただこのくらいのことは知っておいて欲しいんだ。」
先生がそう言ってくる。
「そうだよロクちゃん、わたしはロクちゃんがほかの人に馬鹿にされて傷ついて欲しくないだけなの。」
「ボクも、ロクショウに傷ついてほしくないです。」
クーとアルケも続いてそう言ってくる。
俺は、その言葉に感動した、俺みたいなバカでどうしようもないやつの事を、ここまで心配してくれるなんて。
「先生!紙をください!」
俺は、立ち上がりメモを取るための紙をアトロナーヘ先生に要求する。
「やっと、やる気になったか!」
アトロナーヘ先生が抱きつてくる。
この時、先生の女の膨らみが顔に当たり、俺の男の部分が膨らみそうになったのは秘密だ。
あと、なぜかクーが鬼みたいな顔になっていた。
俺のやる気が出てきたところで、さっそく補習を再開した。
「約五万五千年前から約四万九千年前までの間は発展期というそれはなぜか。さっきはクークークーに当てたから、次はアルケの番だな。」
とアトロナーヘ先生がアルケを指名する。
「はいです。」
アルケは立ち上がり
「錬心、浪客馬車、霊獲恵豊、宝玉謫髄の四つの魔法が開発されたからです。」
とスラスラと答える。
「うん、正解だ。」
と、アトロナーヘ先生が言うと黒板にアルケが答えた内容を書く。
「これは、四大豊術と言う、また別名では導術とも言われるな。」
と言うと黒板にも同じような内容を書く。
「では、クークークーこの四大豊術の効果を答えられるか。」
と先生がクーを指名する。
「はい!まずは錬心これは、精神を人工的につくる魔法です。」
と元気に立ち上がり答えさらに続けて。
「次に、浪客馬車、精神というものは器に定着しないとすぐに消えてしまう儚いものその為、錬心でつくった精神を守り、導き、器に定着させる魔法です。」
と、さらに続けて答え。
「三つ目に、霊獲恵豊これは、まわりの霊を自分の魔力に変換する魔法です。」
と、さらに続けて答え。
「最後に、宝玉謫髄これは、鉱物を魔貯石に変える魔法です。」
と一回も噛まずに言い切ったクーは満足げに着席した。
アトロナーヘ先生は黒板にさっきクーが言った事を書きながら
「ロクショウ、魔貯石のことはわかるか。」
と俺に聞いてくる。
「いや~、さすがにそれぐらいはわかりますよ~、バカにしないでください。」
と不機嫌そうに言っては見たもの、俺の馬鹿さ加減を見せ付けられたら仕方がないな、と思いながら先生の問に答えた
「魔貯石と言うのは魔力を簡単に貯めることができまた、簡単に取り出すことができる石のこと、でしょ。」
と俺は答える。
「うん、正解だ。」
と先生は頷いた。
「さて、ロクショウしばらくの間、時間を取るからゆっくりメモを書いてくれ。」
先生が時間をくれたので丁寧に黒板の内容を書き写す。
しばらく時間が経ち黒板の内容を写し終えると、補習は再開した。
「そして、四大豊術の開発によりさまざまな道具の開発、大量生産を可能としどんどん豊かになっていった、しかし道具の大量生産が出来るということは、兵器も大量生産出来るようになったということだ、つまり戦争の激化が始まる。」
先生は少し悲しそうに、そう言った。
「四大豊術が開発される前にも戦争というものはあった、しかしそれはごく一部の魔法の資質が異常に高いものだけで行われる、少人数で小規模なものだった、しかし四大豊術の開発による兵器の大量生産によって大人数で大規模なものへとなっていった。」
先生は一呼吸おいてから
「約四万九千年から約二万年前まで、つまり二万九千年間続く戦乱期の始まりだ。」
妙に迫力のある声で先生はそう言った。
「その後、二万年前になると三界球星に存在する国は二つだけになっていた。」
先生が言うと、クーが元気よく
「はいはーい!、今ある二つの国、イストとウェートだよねー!」
そう、発言した。
「ああ、そしてその二つの大国の実力は拮抗していてなかなか決着が付かなかった、そして一万二千年前とうとう開発されてしまった最強最悪な魔法その名も。」
先生がまた一呼吸おいてその名前を口にした
「世界を終焉へと導くことすらできる魔法……終世魔法だ。」
その物物しい名前に俺はついゴクリ……と唾を飲み込んでしまった。
「さてクークークー、イストの開発した終世魔法は?」
「はーい!支界を司る魔法、礎不動剛敷だね!」
とクーの可愛らしい声には似合わない魔法の名前を口にする。
「正解、次にウェートの終世魔法は?」
「はいです、恵界を司る紫霄霹戯園です。」
アルケはその澄んだ声に似合わない魔法の名前を口にする。
「ああ、正解だ、そしてその二つはほぼ同時に開発れたという。」
アトロナーへ先生はさらに言葉を続ける。
「終わらない戦争、疲れ果てた民、そして、終世魔法の開発、これらにより、このままでは二つの国は滅茶苦茶になってしまう、そう考えた二つの国の二人の国王は和平条約を締結これによって八千年続いた二大国戦期、さらに戦乱期の二万九千年も入れて、三万七千年続いた戦争は幕を閉じた、というわけだ。」
だが、しかし先生の解説は終わらず
「しかし、長い間争い続けた二つの国がそう簡単に丸くなるはずもなく、いつも揉め事を起こしていて、いつまた戦争になるかわからない状態が続いていた、それを見かねた一万年前の二人の王が大胆なことをする。」
先生の口が止まる
「ふふ、ロクショウ答えてみるか。」
と、先生はちょっと意地悪な質問をしてくるが、今までの話を聞いてなんとな~く思い出した気になっていた俺は、答えてみる気が急に出たので答えてみた。
「はい!あ~え~っとぉ……そのぉ……あっ、そうだそうだ、帝室、帝室。」
と答えると。
「ロォクショォォオ!!正解だー!」
とアトロナーヘが泣きながら抱きつてきた。
「オフッ!グルジイ……。」
さっきより強い力で抱きしめられたため、その豊満な胸に顔が押しつぶされ息ができなくなってしまった俺をクーは
「ちょっ!ロクちゃんから離れて!苦しんでいるでしょ!!」
珍しく怒鳴ったような声を上げて、意外に強い力で俺と先生を引き離した。
「ああ、すまん、すまん、つい感動してな。」
先生が後ろの髪が黒い部分を触りながら謝ってきた。
「ほんとですよ、先生いくら俺でも苦しいものは苦しいんですからね!」
と怒りながら言ったあと
「今度は、もっと優しくお願いしますよ。」
とイヤらしい笑みを浮かべて言うと。
「ロ~クちゃん!補習の続きし~ましょ!」
とクーが怖い笑みを浮かべていたので
「そうだな、早く再開しようぜ!」
とキリリとした顔で言った
「だいぶ話がそれてしまったが、帝室というものは一万年前の二人の王の娘と息子を結婚させ生まれてきた子供を皇帝とし二つの国どちらにも属さない存在にし二つの国を統治させようというものだ。」
その話に俺は
「そう、うまくいくもんなのかね。」
と口を挟んだ
「やっぱり、いろいろな所から反対の声が上がったが、賛成する者も多かったまあ、それはいろいろな奴がいろいろ努力して帝室は完成したというわけだ、そしてそれに伴い、二つののことが起きた。」
アトロナーヘ先生は言葉を続ける。
「まず一つ目は、宝界を司る終世魔法である天蓋絢爛宮を皇帝に献上したこと。」
とアトロナーヘはその低い声に似合わない魔法の名前を口にした。
「これは、イストとウェート二つの国が共同開発したもので、王と帝の力のバランスを保つために献上したんだ。」
さらに、アトロナーヘ先生は続けた
「二つ目に、二つの国を統治するための組織が出来上がった、これをなんていうか知っているか。」
という先生の問いに答えたのはアルケだった。
「はいです、『皇』『会』『院』『所』『軍』による五大尊下制です。」
アルケは答えると
「ああ、正解だ、まず『会』は協会の事でさまざまな事を運営している組織だな、特別学園を運営している、魔法協会もこの組織の一部だな。」
「次に、『院』は議院の事でさまざまな法律を作ったり、変えたり、無くしたりしているな。」
「三つ目に、『所』は審判所の事でさまざまな揉め事を法律を元に良いか、悪いかを判断している。」
とアトロナーヘ先生は言葉を続け
「『会』『院』『所』この三つは特に重要なため別名があるそれをなんて言うか知っているか、クークークー。
アトロナーヘ先生がクーを指名する。
「はーい!『三大天下』っていわれるね!」
クーが相変わらず元気よく答える。
「ああ、そしてこの三大天下はお互いに牽制し合う権力を持っている。」
アトロナーヘ先生はそう言いさらに言葉を続ける。
「『軍』は協会の下部組織で武力を持っている。」
「最後の、『皇』は少し特殊な組織だな。」
アトロナーヘ先生がそういうので
「どういうこと?」
俺は、そう答える。
「ああ、それはな、『皇』というのは国王や皇帝もそこに属しているんだそして、王族や帝室の威光を利用した調査機関でもあるんだ。」
先生の話に
「へ~、具体的にどう利用するの?」
俺は、そう質問した。
まず、帝室や王族の絶対性によりあらゆる組織は『皇』の調査を拒否できないんだ、しかし自身も帝室や王族の潔白性により、あらゆる組織の調査を拒否できないんだ。」
最後に、ここまでのことを、アトロナーヘ先生は黒板に書くと
「ロクショウ、ゆっくり焦らずに紙に写すんだぞ。」
と言い、ほかの二人もいつまでも待ってくれた。
後日、俺はまた同じ内容のテストを受けた、百点とはいかなかったが、まずまずの点数が取れた。