三十二話 協高祭 中Ⅲ
大変、大変おまたせしました。
エリアビーコンが終わり、彰吾は朝早くから起きなくても良くなった。
だが、身体は起きてしまう。今の時間5時50分。
「……暇だしリビングにでも行くか」
ベッドの上で呟いてから布団を退かして部屋を出る。
部屋を出てから彰吾は背筋を伸ばして背骨の骨を鳴らす。
「んーーッよし!」
伸ばしてから彰吾はリビングに置いてあるポットを沸かす。
持ってきた挽いてるコーヒー豆の入った缶をリビングのテーブルから取る。
スプーンで粉末を四回程すくい、フィルターに入れた。
丁度いいタイミングでポットのお湯が沸き、ポットを取ってからフィルターに軽く一週注ぐ。
コーヒーがゆっくり容器に入ったのを確認してから、回しながらお湯を入れていく。
お湯を全部入れてからフィルターから出るコーヒーが落ち終わるまで待つ。
少し経ってからコーヒーが落ち終わり、マグカップにコーヒーを注ぐ。
コーヒーを注いでからカップを持ってソファーに座り、テレビをつける。
『――在、協高際で盛り上がっております! 現在の順位を見てみましょう!』
『おお、これは第4女学院が1位ですね』
『今回の協力してくれた高校が強いんですねー』
と、お天気お姉さんなどが話す。それをコーヒーを飲みながら見る。
『今回、第4女学院もとい、4女のハイライトです!』
お姉さんが言ってから画面に賢次の長距離狙撃と援護している映像が流れる。
そこに解説が入っており、視聴者にもゲスト達にもわかりやすくなっていた。
『1km以上先の相手を狙撃ですか……凄いですね……』
そりなりに詳しそうな男性が本当に驚きながら映像を見ていた。
『え、そんなに凄いのですか?』
それを分かっていない女性ゲストが言う。
『はい、そうですねよね。わかりづらいので、今回それとほぼ同じ状況を体験してもらいますッ』
すると、スタッフさんがVR用の機器を持ってくる。
『では、こちらへ』
お天気お姉さんに誘導されて、女性ゲストはVR機器に近付く。
スタッフが現れてゲストにVR機器を装着させる。
そして、ゲスト視点となり目の前が山岳地帯へと変わった。
『では、スナイパーライフルを装備してから狙撃してみましょう』
ゲストの手元にライフルが現れてから、敵が出現する。
『え!? これ! どうしたら!?』
『スコープを覗いて、十字にあったところで引き金を引けば撃てます』
『分かりました!』
言ってからゲストは構えて撃とうとする。だが、
『え、何処にいるんですか?』
『いますよーその先に左右に動いているのありませんか?』
『あ! ありましたって、これ全然遠くないですか!?』
ゲストの視点からは黒い小さい何かが左右に動いていた。
『はい、そうです! それを見事狙撃したのです! それも頭です、頭を基本的に狙ってです!』
実感したゲストはVR機器を外して席へ戻る。
『そしてもう一人がこの方』
と紹介されたのは俊だった。
『彼は一人で敵チームを全滅させる事が出来る実力を持ち、強化アーマーとの戦闘においては素晴らしい活躍を見せてくれました。それがこちらの映像です』
俊の戦っている映像が流れる。
一人で敵チームを全滅させるシーンと、強化アーマーとの戦闘で独特の動きで、相手を翻弄していた。しかし、
『まぁ、敵チームを全滅はありえないことは無いですからね』
と一人の男性が言う。
『と、言いますと?』
『相手の動きが雑であれば全滅も可能ではあります。後、強化アーマーとの戦闘ですが、強化アーマーのドライバーは本気では無かった様ですね。最後は本気でしたが。それを除けば確かに素晴らしい生徒っていうのは分かりますね、はい』
『先程より評価が厳しいですね』
『当たり前です。ガンナーとアタッカーの役職違いを知っているからこそです』
彰吾はコーヒーを飲みながら流し見していた。
評論家の言っている事は殆ど間違ってはいない。だが、実際にそれをやれる生徒がいるかと、言われればそはNoと言う方が多い。
見栄を張ればYesだろうが、見栄を貼った程度でどうにかなる相手では無い。
確かに賢次のやった事は異常すぎる。それは味方で一緒に肩を並べた彰吾達だからこそ分かる。
完璧な狙撃、援護、誘導、指示。指示は彰吾と賢次でやっていたが、表向きは賢次。
俊、相当頑張ってたんだけどなぁ……と思う彰吾であった。
同時刻、深月の入る部屋。
同じ部屋となった生徒会メンバーは冷蔵庫を開ける。
「あつぅー……氷氷……」
言いながら冷凍庫を開ける。
「げっ……ないじゃん……仕方ない」
氷を作るトレイを持って水を入れて、テレビを真剣に見ている深月に近付く。
「深月ー冷やして貰ってもいい?」
深月は無言で手を差し出す。トレイを深月の手に当てると、トレイが冷え出して氷が完成する。
「ありがとー深月もいる?」
「いる」
「はーい」
生徒会メンバーの女子は冷蔵庫にある麦茶をコップに注いで氷を入れて、深月に持っていく。
持っていくと深月がスマホで何かを調べていた。視線をテレビに向ける。
『相手の動きが雑であれば全滅も可能ではあります。後、強化アーマーとの戦闘ですが、強化アーマーのドライバーは本気では無かった様ですね。最後は本気でしたが。それを除けば確かに素晴らしい生徒っていうのは分かりますね、はい』
と4女の協力している高校の男子、宮下俊のことだろうかその人への評価をしていた。
「うわぁ……わかってない人の発言だよね……あれ」
深月の方を見るとまだ調べている。
「……深月何調べてるの?」
「あの放送局が何処のスタジオなのか、どこの部屋で放送しているのか、ここからどれ位の距離があるのか調べてるの」
「……で、それで分かったらどうするの?」
「あの口、凍らせて喋れなくしようかと」
「いやダメでしょ!」
同時刻、彰吾の部屋。
「ふぁ~……おはよ」
「おはよ、コーヒー飲むか?」
「あー……もらうわ」
「あいよ」
彰吾は立ち上がって台所へ行き、マグカップにコーヒーを注いだ。
そのまま彰吾は俊にコーヒーを渡す。
「さんきゅ」
俊はコーヒーを口に運んだ。
「うま」
「どうも」
こっちに来てからのいつもの朝が始まった。
それから賢次が彰吾の部屋に来て賢次も彰吾のコーヒーを貰う。
「なんと言うか……中毒性あるよな、このコーヒー」
「それは分かる」
うんうんと頷きながらコーヒーを飲んでくつろいでいる二人。
「朝食まで10分ぐらいか。とりあえず、エリアビーコン組は他の通常競技に参加しなくてもいいんだよな?」
彰吾が一人用のソファーに座りながら二人に聞く。
「あくまで自由参加になるだけだ。出ても構わない」
「そうなのか」
「まぁ、俊が出てもその体じゃ戦力外だな」
「……まぁな」
腕の回復は早かったが、目の回復がまだ時間がかかるらしい。
その為左目に眼帯を着けている俊。
「見えはするのか?」
「眼球には傷はついてないからな、見えはするけど……脳が勘違いしてるらしくてだな」
「傷ついているから、目が開かないってとこか?」
「正解」
俊は笑いながら答える。それから彰吾はリビングにある時計に目を向けた。
「そろそろ朝食の時間だ」
「おう。……ッんじゃいこう」
彰吾は時間を教える。それを聞いた俊はコーヒーをイッキ飲みしてから立ち上がった。
そして、扉を開けて二人で食堂へ向かう。途中で賢次と合流して三人で向かった。
食堂に着くと既に沙由莉と凛花、杏華がバイキング式の朝ごはんを取っている。
三人はお盆と広めの皿を二枚取り、食べ物を取っ手いく。彰吾達が来たのに気付いた沙由莉は近づいた。
「おはようございます」
「おはよって……かなり食べるのな……」
沙由莉の皿を見た彰吾は本音を漏らす。沙由莉の皿にはミートパスタ、ジェノベーゼ、鮭の和風パスタの三種が盛られている。
それだけでなくポテトサラダ、マカロニサラダ、ミートドリアが皿に山になる位盛られていた。
「……食べれる?」
彰吾の発言に沙由莉は首を傾げた。
「面白い事聞くんですね」
とフフフと笑いながら言う。
「食べれますよッ」
自信に満ちた表情を浮かべながら言う沙由莉。
「マジか……」
「彰吾さん、沙由莉は学園では食事制限されてるんです」
近づきながら言う凛花。
「なんで? てか、おはよう」
質問をしてから挨拶する。
「おはようございます。まぁ、ただでは無い、と言う事ですよ」
「あー……なるほど」
微笑みながら答える凛花。凛花の発言に納得する彰吾。
確かにあれだけの量を食べるなら、金も掛かる。だから嬉しそうに山盛りの料理を食べてるのか……見ながらと思う。
「彰吾さん、おはようございます」
沙由莉を見ていると、杏華が朝の挨拶をしてきた。
「おはよう。どう? ぐっすり眠れた?」
「はいッぐっすり眠れました!」
「そか、なら良かったかな」
言いつつ彰吾は杏華の頭を優しく撫でた。彰吾に撫でられている杏華は、顔を赤くしながら嬉しそうにしている。
「おーい、彰吾。席とったぞー」
「あぁ、今いく。んじゃ、二人とも行きますか」
俊に呼ばれ、彰吾は凛花と杏華の二人を連れて俊のいる席へ向かう。
席についてから朝ごはんを食べる。
そして朝食を食べ終えた彰吾達は自室へ戻ろうとした。
「彰吾さん」
凛花に呼び止められ振り返る。
「これから彰吾さんの部屋に言ってもいいですか?」
「あー……俊大丈――」
「――大丈夫ですッ‼ いつでも来て下さいッ‼」
俊に聞こうとしたが、答えが一瞬で出ていた。
「っという事で、来て下さい」
「分かりました。行く際には連絡致します」
凛花は「それでは」と言ってその場を去り、彰吾と俊は自室へ戻る。
自室へ戻った二人は軽く掃除を始めた。基本的には清掃員さんが部屋に入り、掃除をしてくれるので彰吾達は直ぐに終わる。
掃除が終わると同時位にチャイムが鳴らされる。
「俊、頼む」
「あいよ」
俊に任せて彰吾はとりあえず、七人と予測してマグカップを用意した。
用意していると挨拶してから部屋に入ってきた来客者。沙由莉、凛花、深月、杏華と賢次達。
「ちょいと待っててくれ、コーヒーを入れる」
台所に立ち、ケトルを沸かしつつコップにコーヒーフィルターと容器を乗せておく。すると背後から視線を感じた彰吾は振り返る。
「……どうした?」
ダイニングキッチンとなっている部屋で、肘を付きながら準備をしている彰吾を見ながら満足そうな表情を浮かべる女子三人。
「いえ、おきになさらず」
「そうです、彰吾さんは気にしなくていいです」
「ゆっくりとコーヒーを作っていて下さい」
と凛花、沙由莉、杏華が言う。それを聞いた彰吾は「お、おう……」と返す。
彰吾が背を向けると、女子三人は寄り合う。
「あれ、ヤバイですね」
「はいッもうッ」
「料理する姿が似合いすぎなんですッ」
言ってから顔を会わせて背を向けている彰吾を見る。
「「「――ッ‼」」」
いいッ‼ と三人が一致で思った。
「ほい、出来た……ってなにしてんの?」
彰吾が振り返ると顔をうつ向かせて悶絶している様に見える三人に、流石に驚いた彰吾。
直ぐに顔を上げてキッチン内へ入り、彰吾からマグカップの乗ったお盆を取る沙由莉。
お盆をリビングのテーブルに置く沙由莉。コーヒーを椅子の前に置いていく。
配られたコーヒーの前に凛花と杏華が座る。そのすぐ後に彰吾はミルクと砂糖をテーブルに置いた。
三人様のソファーと一人様のソファーが二つ、残りは部屋にある高めの椅子を持ってきて座る。
三人様のソファーに杏華、深月、俊の順番で座り、一人様のソファーに沙由莉と凛花が座った。
彰吾と賢次は高めの椅子に座り、コーヒーを飲む。
「「「うまい……」」」
彰吾以外全員が口を揃えて言う。
「そう言ってくれるだけで作った甲斐があるよ」
その言葉が聞けただけでかなり満足する彰吾。
コーヒーを少し飲んでから凛花はカップをテーブルに置く。
「彰吾さん達は今日はどうするんですか?」
彰吾はカップを口から離して少し考えてから俊を見る。俊を見ると「さぁ?」と首を軽く横へ傾げた。
「俺と俊は何もないよ」
「そうですか! なら、明日から強化アーマーの模擬試合があるんですが、観戦なんて如何でしょう?」
「ああ、構わないけど。それ明日なら、なんで今日?」
模擬試合は明日なら今日予定を聞く理由に不思議に思う彰吾達。
「本日は最終調整を兼ねてますので、テストするんです。なので、いち早く私達の強化アーマーを見て応援してもらいたいのです」
応援と言う一言で察した彰吾と賢次。
「応援ならしますよッ‼」
分かってないご様子の俊。
「はぁ……アホが……」
とため息をついてから俊に言う賢次。
「なんでだよ」
「応援は誰でも出来るだろ? 俺らは会場に行くんだ。会場に行って応援って声援だけか?」
「あッ……!」
賢次が俊に言うと、やっと察する事が出来た俊。改めて凛花の方を見る。
「全部入れますからッ」
満面の笑みで答える俊。だが、その笑顔が突然苦痛の表情に変わる。
「いでででででででッ‼‼」
脇腹を深月がつねりながら捻っていた。反応を見てから深月は脇腹から指をパッと離す。
「なにすんだよッ‼」
声をあげる俊だが、素っ気ない態度でコーヒーを優雅に飲む深月。
「……別になんでも?」
俊は眉を寄せて深月の表情を伺う。
「なんですか?」
「……なんで怒ってるの……?」
「怒ってないですよ」
と言いつつコーヒーを飲む深月。
ほとんど表情を変えることのない深月を見ても、今怒っているのかすら分からない彰吾であった。
「まぁいいや。とりあえず、後で行きます」
「はい、よろしくお願いします」
満面の笑みで答える凛花。その笑顔に心から喜んでいる俊。
深月は俊の袖の裾を掴む。
「どうした?」
「……私達の所も出るの……」
自信無さそうに言う深月。少し泣きそうな表情を浮かべながら上目遣いで言う。
それを見た俊は嘆息を一つついてから、
「……良作だったら普通に入れるから」
「はいッ……」
嬉しそうに言う深月。フフフと笑いながらコーヒーを飲む一同。
「なら、やることは決まったな。午後に沙由莉のとこの強化アーマーを見に行くと」
彰吾が言った所で沙由莉が気付いた。
「そういえば……深月は私達の所来れないんじゃ……?」
「あ……」
こうして深月を除いた六人が後程、強化アーマーの待機場所へ向かう事となった。
行けないと知った深月は当然のごとく、不機嫌になり俊をつねっていた。
「いでででででででッ‼‼ だから! なんで俺に当たるんだよッ‼」
そして午前中は彰吾の部屋で過ごし、午後に沙由莉達の強化アーマーのある場所へ向かう。
沙由莉と凛花は先に出て強化アーマーのある場所、格納庫に向かっていた。
ホテルから歩いて五分の場所に位置する格納庫。そこは今回参加する企業と学校の格納庫が設置してある。
彰吾達は格納庫に着くとそこは既に戦場かと思う。何故なら、
「Eの10とEの9を差し替えた方が効率良くならねぇか?」
「おい、出力の調整するぞ!」
「切り替え早くしとけよ!」
と格納庫から慌ただしく人が出たり入ったりなどの繰り返しを見た彰吾。
「すげぇな……」
「すごいですね……」
同時に言う兄妹の俊と杏華。
「とりあえず、4女探そう」
彰吾が言うと全員が頷いて4女の格納庫を探す。すると、
「彰吾さーん」
沙由莉が彰吾を呼びながら手を振っている。彰吾は全員を呼んでから沙由莉の元へ向かう。
「どうも、ここが私達の確信ですッ」
両手で自分の所の格納庫を紹介する沙由莉。大きさ的には一軒家の格納庫、因みに他の格納庫もそれぐらい。
「では、中に入りましょう」
扉に近づいて手をかざす沙由莉。
『認識完了』
自動アナウンスが聞こえ、扉が開かれる。彰吾達は格納庫内へ入った。
中にはいると、まずパソコンが三つ置いてあり、そこに三人がパソコンの前に座っている。
ガラス張りになっている中央を見ると、強化アーマーを着ている4女の生徒が動作確認をしていた。
凛花はインカムマイクを使い、4女の生徒、もとよりドライバーに指示を出している。
「問題なく作動もしてるけど、基本動作からやりましょう」
『了解』
凛花が指示を出すと、4女のドライバーは返すと彰吾のいる部屋に音声が届く。
『右腕、左腕……指の動作問題なし。足も上がります』
「了解。なら、その場でバク宙」
言われた通りにバク宙をするドライバー。それから、凛花はある程度指示を出して、
「最終調整完了。お疲れ様、もう脱いで大丈夫です」
『了解』
インカムマイクを取り外して、彰吾達の方へ振り返る。
「おまたせしました。いかがでしょう? 私達の強化アーマーは?」
白を基調として、一部が黄色と黒の強化アーマーをガラス越しに見た一同。
「あぁ……やっぱり、強化アーマー着たい……」
本音を漏らす俊。杏華は強化アーマーをここまで近くまで見たことがない為、驚いている。
彰吾と賢次は驚かないが、興味は引かれていた。
「てか、思ったんだけどさ」
「はい?」
「強化アーマー同士の戦いってどう決着つけるんだ?」
「簡単ですよ。エネルギーを0にさせたら勝ちです」
「って事はエリアビーコンと同じで?」
彰吾の一言に凛花は首を左右に振る。
「仮想世界には行きません。本当に強化アーマー同士戦うのです」
「危ないんじゃ……?」
「そこは余りですかね。シールドエネルギーが守ってくれますから」
「ほう? と言うと?」
「競技用シールドエネルギーを強化アーマーに搭載させてます。これは攻撃を受けると減っていきます。威力次第で減る量は増減しますが」
「なるほど、確かに少しだけエリアビーコンのシステムを使ってるのか」
「そうです。ちなみ、強化アーマーを稼働させるだけでエネルギーは減りますから、減りながら戦う訳です」
「いかにダメージを受けずに相手にダメージを与えるか、が勝負の鍵になると」
「その通り」
笑顔で答える凛花。疑問に思った事がある賢次は手をあげる。
「はい、有原さん」
手を下ろして一歩前へ出る。
「強化アーマーの広告とかの目的なら、武器はどうなる? エネルギー砲だってあったはず」
「いい質問ですね。その通り、強化アーマーの広告。もとより、披露する場所で、殴りあいをするわけではございません。武器も各メーカーから支給されます。それのデータ採取も目的とされています」
彰吾達はなるほど。と納得すると、
「後、物によっては武器の使用時エネルギーを消費します。先ほど言ってもらったエネルギー砲、エネルギーブレードなどですかね」
「ほー結構エネルギーは消費しやすいんだな」
「まぁ、そうですね。とりあえず説明はこの位にしときましょう」
何だかんだ格納庫に着いてから彰吾達は二時間程いた。
凛花は明日のために、ドライバーサポートの4女の生徒を全員上げて、早めに休息させた。
彰吾達は凛花と共に外へ出て、ホテルのリゾートへ向かう。
「あの……凛花さん、私……水着持ってないです……」
「大丈夫よ! そこは貸し出しがあるから! それも可愛いのからセクシーのまでッ」
「いきましょうッ」
即答の杏華に笑う彰吾。そして、スライダー、飛び込み台に流れるプールなど、温水プールに混浴温泉(水着着用限定)のついたかなり大きい。
男子四人。彰吾、俊、賢次、長崎がプール際で女子を待つ。
「彰吾、スライダー行こうぜ」
「飛び込み台か……10mにでもチャレンジするか」
「浮き輪借りて流れに身を任せるか……」
などと、彰吾以外がそれぞれに答える。すると、
「おまたせー」
と元気よく凛花の声がして、男子一同そちらを見る。
流石と言えるだろうか。黒のビキニに下は水着用のデニムパンツ、髪は後ろで一つに纏めたポニーテール。
歯を見せて、ウインクしながら元気よくポーズを取る凛花。
「俺……生きててよがっだ……」
と涙を流しながら言う俊。長崎は小さくガッツ、賢次は顎に手を添えて「ほぅ……」と感心している。
彰吾も流石に凛花の姿に見とれる。
「こらこらー? 私だけじゃないからね? ほら、みんなおいで」
凛花に言われた女子達はゆっくりと現れる。恥ずかしさがあるのか、少し顔を赤らめながら彰吾達の前に歩く。
「「「……」」」
圧巻。その一言、何故なら美女四人がその場に並んでいるからだ。
沙由莉は白いビキニに下にパレオと言う巻き付けるスカート。色は統一の白。
杏華はオフショルビキニ。上がモノクロでフリルの付いたもの。
深月は紺色のホルターネックのビキニ。
「……どうでしょうか?」
自信無さそうに言う沙由莉。
「似合いすぎ」
本音がこぼれる彰吾。
「あ、ありがとう……ございます……!」
初な反応をする沙由莉に恥ずかしくなってきた彰吾は頬を軽く掻きながら、視線を反らす。
「沙由莉さんッ! 超似合ってますッ!」
そのタイミングで俊が沙由莉を褒める。思わず賢次と深月がため息を一つついた。
「あ、ありがとうございます」
乾いた笑みを浮かべながら言う沙由莉。
それからまだなにか言おうとした俊に深月が口を手で押さえた。
「いきましょう」
「いうき! まま、いいあい――(深月! まだ、言いたい――」
「――黙らないとこのまま、口を凍結させます」
「……ん」
脅して黙らせた深月に連れていかれる俊。
「んじゃ……いこうか」
空気が変わったので、彰吾達はプールに入った。
深月に連れていかれた俊達はある程度、離れたところで手を離す。
「何も脅すことはねーだろ」
「そうですか?」
「そうだよ。とりま、戻るかー」
「しゅ、俊……!」
戻ろうとした俊を止めるように呼ぶ深月。
「どうした?」
顔を反らして少し赤らめている深月。
「……その」
「その?」
「に、」
「に?」
「にあ……ってますか……?」
目をギュッと瞑りながら俊へ聞く。
俊はそんな深月を見る。
「……悪くない」
「は、はぁ⁉ 悪くな――」
「似合ってるから、悪くないんだよ!」
俊の一言に意表を突かれた深月は驚愕した。
「恥ずかしいから……言わせんなよ……たく……」
と赤面しながら言う俊に、深月は嬉しくなり俊の腕を取って、腕を絡ませた。
「ウォータースライダーいきましょ?」
「え、なんで?」
「ほら、行きますよッ」
「おい、引っ張んなッ!」
無理矢理ウォータースライダーへ連れていかれる俊であった。
彰吾達は膝以下位のプールでボールを使って遊んでいる。
「沙由莉ッ」
凛花が沙由莉にボールをトスする。
沙由莉はボールの真下に入り、
「彰吾さんッ」
彰吾にボールをパスする。しかし、ボールはあらぬ方向へ飛んでいく。
だが、直ぐに彰吾はボールの元へ向う。
「杏ッ華ちゃんッ」
彰吾の綺麗なパスは、放物線を描いて杏華の元へ吸い込まれる様に飛んでいった。
「ナイスパスですッ行きますよッ彰吾さんッ」
「またかよッ!」
彰吾にまた、というよりボールを落とさない様にするこのゲーム。
ルールとしてパスするときに、パスする相手の名前を言う。
パスしたさいに、遠くへ飛ばす。目の前でボールを落とすなど、無理な行為は負け。
名前を呼ばれてから落とした場合、落とした者の負けとなっている。
負けた場合、相手の事を褒めると言うことになっていた。
その為、
「彰吾さんッ」
と彰吾が集中狙いされている。
賢次と長崎は別の場所に行ってくつろいでいた。そして、ボールを落とす。
「私です。彰吾さん」
一歩前へ出る杏華。彰吾は杏華を見てから、
「可愛い。似合ってる」
「……棒読み感が」
「あー……なら、水着なんだけど杏華ちゃんらしいよ。杏華ちゃん可愛いから、統一ではなくて、カジュアルにしてる方が俺は好きだよ」
「あぅあぅ……」
顔を真っ赤にしながら、彰吾から顔を反らす杏華。
「おーい、みんなで温泉行こうぜー」
と誉め終えて、次のゲームが開始される空気が辺りに漂った瞬間に俊が現れた。
そのままの流れで、温泉に向かう一同。肩こり、美肌、血行促進の効果のある温泉に入り一息つく。
「はぁぁぁぁ……生き返る……」
思わず言ってしまう彰吾に笑う沙由莉と杏華。
「ほんとうに……生き返るぅぅぅ……」
凛花も同じように一息ついていた。
その一言に彰吾達は笑う。
「私だって疲れるんですよ?」
「だけど、その言い方は面白いから」
笑いながら言う彰吾に、頬を軽く膨らませている凛花。
それから、凛花は壁に背中を預けながら両腕を伸ばす。
「本当に……彰吾さん達とこの協高祭に出れて良かったと思います」
心から思った事を言う。
「他なら最初から最下位スタートですから……」
と伏せながら言う凛花。
「……まぁ、やるからには勝ちたいよな」
彰吾は俊、賢次、長崎に杏華を見てから言う。言われた俊達は頷く。
「……このタイミングで空気的に私いない方が良いと思ったの」
深月が気まずそうにしながら言う。
その一言に全員が笑った。
「フフフ、そうね……」
「深月……ごめんね」
「お前、天才かよ……‼」
と笑う中、俊だけは許せなかった深月は能力を使う。
「冷ッ⁉ 冷たい⁉ いや、緩い⁉ いやいや、冷たいッ⁉」
意味のわからん事を言う俊にまた、全員が笑う。
緩い正体が分かると、
「おまえ……それはやめろよ……風邪引くだろ……」
マジトーンで言う俊であった。
すると、凛花の腕に着いていた時計のようなものからアラームが鳴る。
「なにそれ?」
「叔父様が開発した、腕時計型の携帯電話です。完全防水なので着けてました」
説明してから凛花は腕時計型の携帯電話をタッチする。
「どうしたんですか?」
凛花が通話を開始したのを見た彰吾。
『会長……! ユリが……ユリが……!』
相手の声が上ずっている。何かあったと分かった凛花。
「落ち着いて、何があったのか話して?」
数秒の沈黙後、
『ユリが救急車で運ばれました……』
「……え?」
まさかの発言に驚愕する凛花であった。




