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欠陥と超能力者  作者: 神蔵 悠介
~協高祭編 上 ~
21/32

二十一話 協高祭編 上 Ⅱ

予定通り(悪い顔 デス○ートのオマージュです。

アニメも、映画も良かったですねー。一番は原作ですが。

さて、そんなこんなで21話です。話数のあれを修正します。

長くなりましたが、どうぞ

 杏華は急いで自室に戻り、服を着替える。

「どうしよう! どうしよう!! 何着たら良いかな!?」

 シンプルに抑える? もしくは、少し肌を出す? 夏だし、肌を出しても……。いやいや、彰吾さんには私は清楚系で通ってるはず!! もしくは、少しお茶目で大人しく、大人な女性なはず!!

 っと、思いながら彰吾の前に着ていく服を選別していた。

 そして、一番自身があって家でも着れる服を選んでそれに着替える。

 上は黒いTシャツの上に白い半袖のシャツを着てから、薄い青のスカートを履いてから急いで食堂に戻る。

 行儀は悪いが、杏華は今それどころでは無かった。

「これなら、大丈夫!」

 急いで食堂に戻っている最中に呟く杏華。

 食堂に着いて、台所に早足で向かい台所の出入口に立ち、

「彰吾さん! 手伝いま――」

 元気よく言うが、目の前の光景に驚きを隠せない。

 彰吾は杏華が着た事に気付き、

「ん? 着替えて来たのか」

 声を掛ける。だが、それだけでは無かった。

「彰吾さん、この位で良いですか?」

「おお、そんくらいそんくらい」

「彰吾さーん、私は唐揚げでも作るよー?」

「なら、後で手伝うよ」

「はーい」

 沙由莉と凛花が彰吾が作る料理の手伝いをしていた。

 つい先ほどまで女性の姿が見えなかったのに、台所に彰吾、沙由莉、凛花とおばちゃん四人。

 合計で7人が台所にいる。そんな事より、杏華は彰吾の周りにいる女性におどろいていた。

 えええええ!? 今まで女性の気配すら感じなかった彰吾さんに、女性がいるんですが!?

 いや、元々彰吾さんはカッコイイので学校ではモテてるなど、俊兄から聞いていたけど……。

 今更になって、突然女性が表れるのって、それは酷くないですかぁああああ!?

 と心の中で思う杏華であった。しかし、顔だけは笑っている。

 何かを感じたのか、彰吾は杏華に近づく。

「あー、杏華ちゃん?」

「はい、なんでしょう?」

「……」

「……」

 互いに無言になるが、杏華の顔からはにひーっと表現が正しい位、笑顔を見せている。

「彼女では無いから、俺に彼女は出来ないから友達だから、ね?」

「そうなんですか! でも、素敵な女性ですね!」

 彰吾の言葉を聞くと、少しだけだが声のトーンが変わり彰吾はそれで機嫌が良くなったと感じた。

 実際間違っていはいなかった。

 ふぅ……、これで彼女です。って事になって、どっち? となってから、両方何て言ったときには、私も混ぜて貰おうと本当に最終手段を取るところでした。

 でも実際、二人とも私から見ても可愛いと思います。

 少し、嫉妬しますね。

 ……、何故だか仲良くなれそうな感じがするので、後で話をしてみましょう。

 そう思うと、とりあえず台所を改めて見渡す。

「あれ、俊兄は?」

「あぁ、俊ならさっき悪い、俺道場にいるわって言って道場に行ったぞ?」

「そうですか」

「……、ど、どうした?」

「いえ、何でも無いですよ?」

 笑顔のまんまだが、完全に先程の笑顔になっていて、更にそこに何か危ない気配を感じた彰吾であった。

 俊兄には後できっちりと! お話をするとしましょう。と思う杏華。

 それを思った杏華は次に起こす行動を考えていると、

「てか、杏華ちゃん」

「はい? なんでしょう?」

「さっきの服装も俺は好きだよ」

「え……!?」

 まさかの発言に驚きを隠せない杏華。

「可愛いと思ったよ」

「そ……そうですか……ありがとうございます」

 嬉しくなり、顔を真っ赤にしているが彰吾には見せないように隠して言う。

 そんな杏華の頭に手を置いて撫でる彰吾。

「杏華ちゃんは可愛いから、直ぐに彼氏出来ると思うよ」

「……はい。その、方が気づいて、くれたら……すぐだと思います」

「うーん、告白はしたのか?」

「し、してないです」

「しないの?」

「いや、それはぁ……」

 顔を赤らめながら動揺している杏華に、どうしたんだろう? と思う彰吾。

 その光景を後ろで見ていた、

「もう、彰吾さん。女の子から告白とかね、最終手段な訳なのよねぇ」

 凛花が助け舟を出すように話に入る。だが、彰吾にべったりとくっついて耳元で言う。

「そうか、確かに……。ごめんね、杏華ちゃん」

「い! いえ! とんでもないです!!」

「さて、俺は餃子でも包みますかねぇー」

 そう言って一人で黙々と餃子の具を包んでいる沙由莉達の所に行き、包み始める彰吾。

 ふぅ……と一安心していると、凛花が杏華に近づく。

「貴方も彰吾さんの事が好きなの?」

 近付いた凛花は彰吾には聞こえない様に、杏華にだけ言う。

 杏華は少しだけ凛花に警戒する。

「貴方〝も〟って事は貴方もですか?」

「ううん、私はただ単純に面白いから一緒にいるだけ」

 まさかの発言にきょとんとする杏華。

 それを見た凛花はフフっと笑う。

「私と貴方は仲良くなれそうだね」

「そうですね」

 互いに返事し合うとフフフ……と互いに笑い始めた。

 二人を見ていた彰吾と沙由莉は、何か嫌な予感を感じていた。

 そして凛花と杏華は彰吾の餃子作りを手伝った。

 餃子を作り終え、彰吾達は休憩をしていた。

 因みに、沙由莉と凛花は彰吾と京都の観光するために着替えている。

「本当に杏華ちゃんは料理上手いね」

「い、いえ、彰吾さんに比べたら私なんて……」

 彰吾は何処かの料亭にでもいたのか? と言うぐらい、上手い。

 それと比べると杏華は足元にも及ばないかもしれない。

「俺なんかは教えて貰えたのもあるから、まぁ、料亭とかには行った事は無いけどね」

「そうなんですか、じゃあ何処料亭並みの料理を?」

「ん? ここ」

「ここ?」

「あぁ、板長にね」

「え!? あの弟子にしてもらえるだけでも厳しく、弟子にしてもらったら最後、認めて貰えるまで返して貰えない。って言うあの板長!?」

「いや……、何か語弊が少しあるけど……。まぁ、その板長にね」

 日本でも有名な板長がたまに俊のじぃじの家の料理をしてくれている。

 理由は、俊のじぃじに恩があるから。との理由で自分で勝手にやっているらしい。

「だから、そんなに上手何ですね……」

「まぁね。でも、杏華ちゃんも上手いよ。あぁー良いお嫁さんになるね。確信だね」

 彰吾の発言に顔を真っ赤にした杏華は直ぐに顔を横に逸らして彰吾に見せない様にする。

「どうした?」

「しょ、彰吾さんはもし、もしですよ!!」

「お、おう」

 顔を横に逸らしたまま言う杏華に少し戸惑う彰吾。

「わ、私と彰吾さんが結婚したら……、ど、どうです?」

 顔を赤くしながらも、横目で彰吾の反応を伺う杏華。

 だが、

「ごめん、それは無理」

「え?」

 突然の出来事に先程の感情がどこかへ消え、彰吾の方を向く杏華。

「ど、どうしてですか……? 私、何かダメな所ありますか? もっと、綺麗な方が良いですか? それとも……、好みでは、無い感じ……ですか?」

 もはや、最後の部分は涙が出そうになり顔を伏せながら言う。

「いや、そうじゃないんだよね……」

「じゃあ、何ですか……」

 顔を伏せながら言う杏華。

 杏華の発言後、時が止まったかの様に静寂な時間が過ぎて行く。

 杏華自身、彰吾に何を言われようが、耐える覚悟は出来ていた。

 だからこそ、

「教えて下さい。私ではダメな理由を」

 顔を上げ、真剣な瞳で彰吾を見る。

 だが、彰吾はどこか言いづらそうな表情を浮かべていた。

 しかし、杏華の真剣な瞳を見た彰吾は観念したのか、はぁ……とため息を一つ付いてから、

「……、俺と杏華ちゃんが結婚するとしよう」

「はい」

「結婚したらな」

「はい」

「俊が義兄になるんだよ」

「……、はい」

 何故、ここで俊の名前が出てきたのか分からない杏華は少し間を置いてから言う。

「普段からいもいずの話とかしてくるのに、結婚したら俊と杏華ちゃんと暮らす訳だ」

「……」

 だんだん雲行きが怪しくなっていく。

「彰吾! 俺と遊ぼうぜ! とか、彰吾! いもいず見ようぜ!! って絶対に言ってくるのが分かるんだ……」

 絶対と言って良いほど、それはある。いや、むしろその未来しか見えなくなった杏華。

 その事を考えた瞬間、殺意が湧いてくる杏華であった。

「だから、ごめ――」

「大丈夫です。その〝問題〟を解決しますので」

 何時もどおりのにひーっと言う笑みを浮べながら立ち上がる杏華。

 立ち上がった杏華に座っていた彰吾は杏華の手を握る。

「でも、俺は杏華ちゃんと釣り合わないと思うよ」

「自分を卑下にすると、その人に付いて言ってる人も同様に卑下しています」

「……」

 杏華の言葉に言葉が出ない彰吾。

「彰吾さんは十分です。いや、むしろ十分過ぎてヤバいです」

「そんなにか?」

「はい、私が絶対に保証します」

「ありがとう……」

「はい、では私はやる事が出来たので失礼します」

「ああ、17時位には帰るから」

「分かりました」

 そしてそのまま杏華は何処かへ向かう、その途中で沙由莉と凛花に会う。

「京都の観光、行ってらっしゃいませ」

 と笑を浮べながら二人を見送る。

 その笑みを見た二人は、

「い、行ってくるね。杏華ちゃん……」

「……、やりすぎはだめよ?」

「……、はい!」

 間を置いてから元気よく返事をして、何処かへ向かった杏華であった。

 彰吾は一連のやりとりを見ていて、そのまま沙由莉と凛花に近づく。

「さて、行こうか」

 二人に声を掛けると、ゆっくりと彰吾の顔を見る。

「ん? どうした?」

「彰吾さん、何か杏華ちゃんに何かしました?」

「いや? 何も?」

「彰吾さぁん、無自覚な行動って男子特有のあるあるだからねぇ?」

「え!? いや、マジ! 俺何もやってないって!!」

 沙由莉と凛花が彰吾に問い詰めるが、何が起きたか分からないので、彰吾を攻めても仕方ないので、諦める二人。

「……、とりあえず行きましょうか」

「そうですね」

「お、おう……」

 三人は京都観光の為、俊のじぃじの家を出たのであった。




 俊は道着に着替えて、道場の真ん中で正座をしながら精神統一をしていた。

 居合いの型をする為に、俊の横に真剣を置き本格的な事をやっている。

 心を静かにし、明鏡止水の心で精神統一をしていたが、

「――!!」

 殺気を一瞬感じた瞬間に置いてあった真剣で鞘ごと相手の攻撃を受け止めた。

 殺気を放った相手は、

「な!? きょ、杏華!? な、何してんだ!?」

「うん、ちょっと俊兄がいると邪魔なんだよね」

 とニコニコしながらとんでもない事を言う杏華に引く俊。

「え? 何? ヤンデレ?」

「殺しますよ?」

 突然、笑顔を無くし目に光を宿さずただただ殺意を俊に向けながら、真剣を上から押し付ける。

「おッ! あ! お、俺が……! 何をしたって、言う……んだッ……!!」

「俊兄がいると、私が彰吾さんと結婚しても、俊兄は彰吾さんと遊ぶ?」

 少しだけ力を弱める杏華。少し楽になり、ふぅ……と一息付き、考える。

「遊ぶな。絶対」

「今ここで殺します」

「おッ!? あ……! な、何でだよ! 遊んでも――あ、お前もしかして」

「何ですか?」

「彰吾の事好きなのか?」

 俊の発言に顔を真っ赤にする杏華、それを見た俊は、

「なるほどなぁ……。でも、お前結構ガサツだし、腹黒いから無――おわ!?」

 横に一閃、鋭い斬撃が俊を襲うが何とか反応して避ける。

「やぁべ……」

 流石にまずいと思った俊である。

「……」

 流れるようにゆっくりと俊に近づく杏華。

「落ち着け、杏華……」

「……」

 俊は杏華が近づく度にその倍離れる。

「言いすぎたのは、ある……。だが、な」

「……、何ですか?」

 俊の言葉に止まる杏華に、俊はコホンと咳払いをし、

「俺は本当の事を言っただけだッ!!」

 言った瞬間に杏華から、放たれた居合切り。

 目にも止まらぬ速度で抜刀し、俊の喉の辺りを捉える。

 しかし、俊も同等の速さで柄から剣を抜き、それを受け止めた。

「十八番の抜刀はねぇよ……、殺す気じゃねぇか……」

「これくらいしないと、俊兄は覚えませんよね……?」

「いや、そこまでせんでも、俺は覚える……よッ!」

 よッ! と言ったと同時に、杏華から離れて道場から、通路に逃げる俊。

 逃げた時に俊は雑な扱いだが、真剣をその場から手放して逃げていた。

 俊の家の決まりで、通路では特別な事が無い限り真剣を持ってはいけない。

 持っていたとしても、袋に入れて出さないように。と言われている。

 上手く逃げた俊はとりあえず、外に逃げようと玄関に向かう。

 その時、誰かが玄関から入ってくる。

 だが、俊はその来訪者を見た瞬間に直ぐに道場へ全力で戻った。

「あ、俊兄お帰り。今度こ――ちょ!」

 黙って最速で床に置いてある真剣を取って廊下を出た。

 それを見ていた杏華は何事かと思い、一応自身の真剣も持っていき俊を追う。

 玄関に走って向かい、玄関が見えるとその来訪者は靴を脱いで上がっていた。

 態勢を低くしながら走り、刀を抜刀する俊。

 走る音と殺気を感じた来訪者は俊の方へ向くと同時に俊は横にひと振りする。

 来訪者は全体が黒い短刀の様な刃で俊の攻撃を防いだ。

「よく……」

「……」

 ギギギと刀同士がぶつかり、音を立てながら俊は言って、来訪者は黙っている。

 うつ向きながら言うが来訪者を睨みつける俊。

「よく俺の前にノコノコと顔を出せたなぁ……!!」

「……」

「クソ親父!!」

「……、俊……」

 黒い短刀の様な物で俊の刀を受け止めている人物、俊の父親。

 源刻げんこくが俊と呼び、俊は源刻に殺意をむき出しにする。

 その出来事の数秒後に杏華が表れた。

「……、お父様」

「やぁ、杏華。元気かい?」

「……、はい」

「そうか。良かったよ」

「余裕ぶっこいてんじゃねぇ!!」

 と言って刀を引いて、直ぐに源刻に刀を振りかぶる俊。

 その攻撃を短刀の様な物で受けきる。

「何でテメェが普通に生きてんだよ……! テメェは生きることが恥じゃねぇのか!!」

「……、すまない。私からはそれしか言えない」

「――ッ!!」

 俊はその言葉にまた怒り、更に殺意を向ける。

 そのまま俊は鋭く、速い斬撃を源刻に放つ。

 それを三撃。

 全てを受けきるが、最後の一撃だけは少しだけ上着だけが切られた。

「強くなったな。俊」

「今ここで殺して、事故にしてやるよ。それくらいの事、うちなら出来るからな……!」

「何か騒がしいのですが、どうしたのですか?」

 二階から深月が何か起きたのかと思い、降りてきた。

 そして、良くは分からないが俊が男性に刀を向けて殺そうとしている。

「俊! ダメです」

 深月は直ぐに俊の前に立ち、両手を広げて通さない様にする。

「どけ」

「良くは分かりませんが、殺すのはダメです」

「そいつは犯罪者だ。犯罪者を殺して何が悪い。だから、どけ」

「犯罪者なら私の管轄になります。なので、退きません」

「お前は関係ない。何も知らないで出てくるな。どけ」

「退きません」

「どけ……」

「絶対に退きません」

「退けって……いってんだろッ!!」

 刀を深月に振り下ろす。振り下ろすと深月の着ていた上着の一枚が切られた。

 服だけが切られた瞬間、深月の背中が凍り付くが、それでも退かない。

 だが、まだ退こうとしない深月に俊は刀を深月に突き付ける。

「次は斬る。だから、ど――」

 言おうとした瞬間に、左頬を杏華に叩かれる。

 叩かれた音が廊下を響かせ、そのあとにせみの鳴き声だけが廊下を響かせた。

「いい加減にして、俊兄……!」

 ギロッと本気で怒っている俊は叩いた杏華を睨む様に見る。

 睨まれるとビクッと身体を震わせたが、杏華自身の行動に間違いはない。

 杏華を見てから、床に投げた鞘を拾って刀を収める俊。

 刀を収めた俊は何処かへ行こうとする。

「俊兄!!」

 何処かへ行こうとする俊に杏華は名前を呼ぶと立ち止まり、

「裏手の稽古場にいる。後……、すまん。深月」

 そう言って、俊は廊下から姿を消して裏手の稽古場へ向かった。

 俊が立ち去ると、足の力が抜けて深月は膝を床に着ける。

 腰を抜かした深月に直ぐに近づく杏華。

「大丈夫ですか!? 酒井さん!」

「は、はい。少し緊張の糸が切れただけで、すぐ立てます」

 深月は杏華に手を支えながらでもあったが、立つことが出来た。

 立った深月の前に源刻が立つ。

「こんな事になったのは私の責任だ。申し訳ない」

 深々と深月に謝罪をする源刻。謝罪すると、杏華を見る源刻。

「久しぶりだな、杏華」

「……、お久しぶりです」

「お前も、俊と同じで私が憎いか?」

 顔は笑ってはいるが、悲しみの混じった笑みを浮べながら言う源刻に対し、

「実際の所、よく本家に顔を出す事が出来ましたね。とは思っています。けど、お父様が居なければ、私の学費とここの本家に入れるお金も無くなってしまうってのは分かっています。そこは本当に感謝していますので」

「ありがとう杏華。それだけで、救いになるよ」

「いえ、ただタイミングが悪いのですが……。せめて俊兄のいない時に、来てくだされば」

「……、そう言いたいのだが。俊からブレードの回収とある物を見せたくて来んだ」

「ある物?」

「あぁ、後で杏華と俊に……君は……」

 杏華と源刻が大体話すと、杏華の隣に立っている深月を見る。

「初めまして、酒井深月と申します」

「酒井、深月……。Sランクの絶対零度アブソリュート・ゼロと呼ばれてるかい? 私の記憶に間違いが無ければだが」

「はい、その通りです」

「これは驚きだ。まさかのSランクがここにいるとは、ね」

「友人の連れで来ました」

「ええええええええええええええ!?」

 突然、深月の隣にいた杏華が驚く。

 どうしたのかと思い、深月と源刻は杏華を見る。

「ど、どうしたの? 杏華ちゃん?」

「酒井さん、Sランクだったんですか……?」

「え、えぇ……まぁ」

「……、もしかしてあの二人もですか?」

 恐る恐る杏華はあの二人。つまり、沙由莉と凛花の事だと思った深月。

「はい、あの二人もSランクです」

「ええええええええええええええ!?」

 まさかの出来事に驚きを隠せない杏華は、自分でも珍しいと言う位声を上げて驚いていた。

「ハハハ……、杏華そろそろ良いかな?」

 何処か困った表情を浮べながら笑う源刻に言われた杏華はペコリと頭を下げて黙る。

 首に手を当てて、どこか言いづらそうな表情を浮かべる源刻。

「あー、酒井さん」

「はい、何でしょう?」

「あそこまで俊に肩入れするのは、もしかして」

「はい」

「君は俊の事が好きなのかい?」

 驚きの発言に思考が停止する深月。だが、何を言われたか直ぐに理解すると顔を真っ赤にしていく。

 たまらなくなり、顔を少し伏せながら横に逸らす。

 その反応を見た源刻は、

「やっぱりか、あそこで普通なら刀を突きつけられて、服を斬られたとは言え、普通ならそこで退くと思う。けど君は退かなかった」

「……」

 話は聞いているが、顔を真っ赤にして何も言えない深月。

「ありがとう。おかげで助かった」

「い、いえ、そんな事は……」

「聞かせてくれないかい? 君は本当に俊の事が好きなのか」

 お礼を言われて、返事に困る深月だが更にそこへ返事の困る事を言われた深月である。

 焦って、源刻の顔を見れなかったが横目で源刻の目を見る。

 その目は、真剣で真っ直ぐに深月を見ていた。

 その目を見た深月は、恥ずかしいが、

「好きです。大好きです」

「……、そうか。どうか、俊の事をよろしくお願い致します」

 深月の返事を聞いた源刻は満足そうな笑みを浮かべてから、また深々と深月に頭を下げた。

 そして、その光景を見ていた杏華は固まっていたが。

「ええええええええええええええ!?」

 二度あることは三度ある。と言わんばかりに同じリアクションをする。

 またも、あたふたする杏華。普段から慌てる姿を見せない杏華を見た源刻は笑う。

 だが、杏華に近付き頭に手を乗せて落ち着かせてから、深月を見る。

「……酒井さん」

「な、なんでしょう?」

「何故、俊があれ程までに私が嫌いなのか、お教えしましょう」

「――!! お願いします」

「お父様、良いのですか?」

 少しだけ心配をする杏華に優しい笑みを見せてる源刻。

「あぁ、良いんだ。むしろ、ここまで俊を好いてくれている女性だ。話してやらないと、蚊帳の外はまずい」

「……、承知しました。では、来客用の部屋を使いましょう」

「分かった」




 そして深月は杏華、源刻の後ろについて行き、




 

 俊の隠している秘密を知る事になる。




 つづく。

はい、結局文字数など、一話の長さ的になぜ京都にいるのか説明できませんでした。申し訳ないです。

次話で、しっかりと説明したいと思います。

京華ちゃん可愛いですね。いいですね。ちょっと欲しいです。

では、この辺で、ありがとうございました。

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