十五話 放たれた悪意編 Ⅴ
ブクマ100行ったので、無理をしまし……、ごほん。
頑張りました!(白目
突然倒れた沙由莉と凛花に駆け寄る彰吾と俊。
「沙由莉! 久能さん!!」
すぐに彰吾はこの事態を引き起こしたであろう人物を睨む。
「へぇ~、東堂沙由莉を庇いつつ、戦闘態勢を取るとは……、凄いね」
ニコニコ笑いながら言う実行犯らしき人物。
この状況を見ていた通行人は「え? 何? 撮影?」「何の映画?」「ドラマ撮影かしら?」と小声で彰吾達を見る。
「ふーむ、ギャラリーが多くなってきたなぁ……」
辺りを見ながらいう実行犯らしき人物。
その隙を見過ごさなかった俊は、衝撃波を使い相手を吹き飛ばす。
吹き飛ばされたが、空中で態勢を立て直して綺麗に着地をされる。
「いったぁー……、でもまぁ、私に触れなくて正解だよ」
笑いながらいう実行犯らしき人物。
「何?」
どういう意味か分からない俊は聞き返す。
「私の能力は毒生成っていう能力でね。自身で毒を作れるのさ。だから、触れてたらそこに倒れてる二人と同じ末路になってのさ」
フフフ、と笑いながら倒れている二人に指を指しながら言う実行犯。
もはや、コイツには悪意しか感じられなかった彰吾である。
「何が目的だ?」
沙由莉を抱え、睨みながら実行犯に言う彰吾。
「目的は簡単……」
実行犯は彰吾と俊に指を指す。
「俺たちか……!」
「東堂さんと久能さんは関係ないだろ……!!」
睨みながら言う彰吾に歯を食いしばり、握りこぶしを作って震えながら怒りをあらわにする俊。
「そだね、あまり関係は無いけど……」
ニコっと笑う実行犯は、
「こうでもしないとしっかりと食いつかないでしょ?」
と笑いながら言った。
それを聞いた俊は流石に堪忍袋の尾がキレた。
「彰吾、長い棒何かねぇか?」
「今は無いな……、すまん」
「なら、今ここでぶっ飛ばす……」
闘気を全開で放つと、辺りの空気が張り詰める。
それに気づいた実行犯は軽く慌て始める。
そして、実行犯に近付こうとした俊。
「あー、先に言っておくよ。その二人を救うには私の作った解毒が必須だよ。因みに、私をぶっ飛ばすなら解毒は作らない」
実行犯の発言を聞いた俊はそれ以上、実行犯へ近づけなくなった。
「思い出したかの様に言ったな? お前、嘘か?」
俊の後ろにいる彰吾が睨みながら言う。
それを聞いた実行犯はハァ……とため息を付く。
「いや、だって、向ってくるとは思わないじゃん? それに驚いただけ」
またも、俊は実行犯の発言に怒りを覚えて更に闘気を放つ。
「うっーわ、こぉーっわ……まぁいいや。とりあえず、その二人少なからず病院に行かせなよ。少しは毒の侵攻を遅くは出来るから。あくまで、遅くさせる事なだけだけど」
少し、後ろに引きながら俊に言ってから、挑発的な言い方で二人を更に煽る。
しかし、二人は実行犯に手が出せない為、歯を食いしばり、握りこぶしを作って内側に怒りを溜めるしか無かった。
すると、
「おい、ここまで大きくしろとは言ってねぇだろボスは」
突然、長身の男が人ごみの中から表れ、実行犯に近付き言う。
「……」
男の顔を見た実行犯は無視してそのまま、その男を睨む。
「あーあ、結局無視かよ。そして睨まれるのかよ」
ヤレヤレと言わんばかりに頭をかく男。
「で? 目的は?」
「果たした」
「あ、そ……んじゃ、いくぞ」
「待て!!」
どこかへ行こうとする実行犯二人を呼び止める俊。
俊に呼ばれた二人は振り返り、俊を見る。
「残り8時間」
「は?」
いきなり、毒を沙由莉と凛架に使った実行犯が口にする。
何を言っているのか分からず、言い返す俊。
「そいつらの生きられる時間が8時間」
「なッ……!?」
「マジかよ……!」
まさかの発言に驚く彰吾と俊。
その光景を見た実行犯はフフ……と笑う。
「四人、そこのデパートの屋上に連れて来なさい。そしたら、話しの続きをして上げる。あー、別に警察でも何でも協力しても良いよ? でも、四人で屋上に来なさい。もちろん、あなた達二人は絶対参加だけど」
「ふざけるな!! 今すぐ、解毒を作れ!!」
と、彰吾が怒りをあらわにしながら言う。
「い、や、で、す。欲しいならまず、あと二人集めて、四人で屋上に来なさい。では、これで。いくぞ」
「へいへい、面倒だなぁ……」
そう言うと、実行犯と男がその場から一瞬で消えた。
消えた瞬間に俊が走り出し、実行犯のいた場所から辺りを見渡し何処かに居ないか確認する。
だが、辺りを見渡しても二人の姿が無かった。
「くそ! どうする! 彰吾!」
「とりあえず! 救急車だ!!」
「あぁ!」
そう言うと彰吾は一旦沙由莉を地面に寝かせて、凛架を沙由莉の近くへ連れて行く。
さすがにこの事態が映画の撮影や、ドラマじゃない事に気がついて来た通行人は手伝ってくれた。
中には、動画を撮ったり、写真を撮ったりする者もいた。
そんな通行人を他の通行人が叱り、撮影をやめさせる。
そして、通行人のおばちゃんがわざわざタオルを濡らして彰吾に渡す。
「ありがとうございます!」
通行人のおばちゃんからタオルを受け取り、沙由莉の顔をまず拭いて上げる。
その後、彰吾の持っていたカバンを枕代わりにして沙由莉の頭の下に置く。
俊も持っていたカバンを彰吾に渡し、凛架の頭の下に置いた。
彰吾はタオルを頭に乗せる前に沙由莉の額を触れる。
熱い……、高熱か? と彰吾は思うほど、沙由莉は熱かった。
凛架も熱いが、痙攣していた。
俊がスマホで救急車を呼んでいる最中に彰吾はやれる事をやる。
「しょ、彰、吾さん……」
うっすら目を開けた状態で元気の無い沙由莉が彰吾を呼ぶ。
彰吾は、地面に膝を着けて寝ている沙由莉を見る。
「どうした? どこ痛いのか?」
「い、いえ……そうでなく……、人、が、足りないん、ですよね?」
苦しそうにしながら言う沙由莉。
「聞いてたのか……」
「は、い……。すみません……」
「謝る事じゃない。大丈夫、俺と俊で何とかしてやるからな」
「ありがとうございます……、人を、集めるなら、スマホを取って下さい……カバンの中にあります……」
彰吾は沙由莉の持っていたカバンの開ける際に「ごめん」と言ってからカバンを開けて、中に入っているスマホを取り出す。
そのまま、沙由莉に渡す彰吾。スマホを受け取った沙由莉はパスワードを解いて、電話帳を開いた。
「深月なら……、事情を話せば、手伝って、くれ、ます……」
「絶対零度の酒井深月か」
「は、い……、私の電話からなら、出ます。それで説明、すれば、協力してくれます」
「分かった。ありがとう沙由莉」
安心させるように優しく言う彰吾。
それを感じ取った沙由莉は限界だったのか、そのまま気を失う。
「沙由莉、ありがとうな」
言った瞬間に、彰吾のそでが誰かにクンッと引っ張られた。
引っ張られた方を見る彰吾。
「ず、随分とたのし、かった、よう、で、すねぇ……」
自分自身苦しい筈なのにも関わらず、悪い笑みを浮べながら言う凛花がそこにいた。
彰吾は濡れたタオルで凛花の額を拭う。
「きも、ちい、いです」
「今救急車呼んでますから、待ってください」
「そ、そう、ですか……。彰吾さ、ん、紙、とペン、あり、ますか?」
「待ってくださいね」
彰吾はカバンの中から紙を取り出そうとしたが、自分のカバンを沙由莉の枕代わりにしていた為、取り出せなかった。
彰吾は何か無いか、ポケットに手を突っ込む。
すると、ポケットから昼間に会った美人女性から貰った紙を取り出した。
直ぐに立ち上がり、彰吾は辺にいる通行人からペンを借りて、凛花の元へ急いで戻った。
「はい、紙とペン」
「あ、りがと、うご、ざいます」
そう言って手が震えながら紙に数字を書いていく。
何とか読める数字を書けた凛花は、紙を彰吾に渡す。
「どこに繋がるんだ?」
紙に書かれた数字、電話番号を見てから言う。
「久能は、おお、きい為、軍とのつな、がりがあ、るんです。そ、の中の、特、殊部、隊です」
凛花の言葉を聞いた彰吾はもう一度紙を見る。
「一、度、その回線で、ブツッ、と切れま、すから、そこ、で、0000と、0四つ、言って下されば、繋がります」
「分かった。ありがとう、久能さん」
「いえ、こ、れくら、いし、か出来ません、から……、後は、よろし、くお、願いしま、す」
沙由莉と同様に限界だったのだろうか、凛花も気を失う。
「ありがとう。休んでてくれ、気づいた時には治ってると思うから」
「彰吾、後もう少しで救急車が到着する!」
気を失った凛花に感謝の言葉を言うと、俊が連絡を終えて彰吾に報告した。
「俊、沙由莉のスマホで絶対零度、酒井深月に連絡して協力して貰う様に言ってくれないか? 今の現状を話せば、分かってくれる人らしい」
「分かった。お前は?」
「俺は久能さんから貰った電話番号を使って、他に協力を要請する」
「じゃあ、急ぐぞ」
「ああ」
彰吾と俊の二人は直ぐに連絡を始める。
俊は彰吾に言われた通り、沙由莉のスマホで絶対零度に連絡をする。
コール音が三回鳴った所で、
『どうしたんですか? 沙由莉?』
絶対零度の酒井深月らしき人物が、電話に出た。
俊はゴクリと唾を飲む。
「俺は東堂沙由莉ではない……」
『……、沙由莉は?』
俊が言うと、少しだけ口調が変わった酒井深月だと思われる人物。
「今、東堂さんは何者かに毒を浴びせられて倒れた。救急車は呼んである」
『それを信じる人がいると思うのですか?』
「信じないと思う。けど、あの爆弾師の東堂沙由莉が簡単に捕まって、電話を取られると思うか?」
『……、仮に信じるとして。本当かどうか知りたいので、病院を教えて下さい』
「分かった教えるが、東堂さんに浴びせられた毒は、病院では治せない」
『何を言ってるの? 只でさえ、信用仕切れてないのに』
そんな事は俊も分かっていた。だが、
「それを直すには四人集めてデパートの屋上に来いって言われてるんだ」
『どうして欲しいの?』
「東堂さんを救う為に、協力して欲しい」
『……、今からGPS機能使ってそっちに向かいますから、現状起きたこと、そこで顔を合わせて話しましょう』
「分かった。待っている」
『近くまで来たら連絡しますから、沙由莉のスマホは持っていて下さい』
「分かった。ありがとう」
俊は酒井深月だと思われる人物との通話が終了し、その場でふぅ……と一息ついた。
一方、彰吾は俊と同時位に凛花から貰った電話番号を使い、通話していた。
だが、一向に切れる音が無く、電話番号でも間違っているのか?と思い、電話番号とスマホの画面を確認する。
しかし、電話番号は間違っておらず、何が何だか分からなくなってきた彰吾。
『この電話番号は……、公衆電話か固定電話しかいかないみたいですね……』
分からなくなった所に、アリスが彰吾に教える。
「そうなのか」
『はい、多分そうじゃないと繋がらないように設定されてますね』
「分かった。ありがとうアリス」
『いえいえ、急ぎましょう』
「ああ!」
そう言うと一度電話を切り、イヤホンを指して片耳に着ける彰吾。
「俊! 公衆電話探してくる!」
「分かった! 俺はここで待ってなくちゃいけない! 待ち合わせ場所は」
「屋上で!」
「了解、行くときに一度連絡入れる!」
「すまん! じゃ!」
俊に言ってから彰吾は公衆電話がある場所を探す。
「アリス、公衆電話がある場所を――」
『既に検索済みです、そのまま真っ直ぐ進んで右に曲がってから真っ直ぐの所にあります』
「さすが」
『公衆電話で無いとダメって分かった辺りから検索しておきました』
「ありがとう」
『いえいえ、これも彰吾さんの為でもあり、二人の為でもありますから』
「アリスの友達であり、俺の友達だ。助けような!」
『はい!』
彰吾はアリスの教えてくれた通りのルートを走っていると、対向車から救急車が走ってきた。
俊が呼んでくれた奴か。と思いながら救急車とすれ違う彰吾。
そして、有る程度進んだ所で右に曲がって突き進むとアリスの教えてくれた通りに公衆電話があった。
直ぐに公衆電話に入り、受話器を取ってから300円入れてから、凛花から貰った紙を取り出して入力する。
コール音が鳴り、その数秒後にブツンと切れた。
その時に彰吾は、
「0000」
ゼロ四つ言うと、何処かに繋がりコール音が再開された。
コール音がなり、その数秒後に、
『はい』
女性らしき人が電話に出た。
「……」
『ここに繋げた人は極わずかの人物だから、悪戯電話とかしたら罪になるからね?』
「久能凛花が毒を盛られて、倒れた」
彰吾が言うと、受話器の向こう側でガシャン! と音が立ち、ガサガサっと紙を退かす音が聞こえた。
『この番号は久能凛花から?』
「はい、そうです」
『状況は理解。でも、それだけならここには連絡しないよね? どうして連絡したの? 後、名前聞かせて?』
「あ、はい。天月彰吾です。要件はその毒の解毒剤を欲しければ四人集めてデパートの屋上に来い。と言うこと何です。久能さんはその毒で8時間後には死んでしまうので、早めに」
『な、なるほどね。要件は了解、天月彰吾さん、電話番号を教えて下さい』
「あ、はい」
彰吾は携帯番号を伝える。
『ありがとう。後で、また連絡します。因みに、天月彰吾さん」
「はい、何でしょう?」
『ここの部隊の事知ってる?』
「いえ、久能さんからは特殊な部隊としか聞いてないので」
『そう……なら、次電話掛ける時は冒頭にファントム部隊って付くからそうしたら私達だから、よろしく』
「分かりました。では、よろしくお願いします」
『では、これで』
女性らしき人物がそう言うと、電話が切れた。
彰吾は受話器を置いて、公衆電話出てから二人が倒れた場所へ戻る。
彰吾から連絡を受けた女性らしき人物。
リリン・アーキウィントはまず、ファントム部隊隊長である木林少佐に連絡する。
「あ、少佐? 実は――」
リリンは彰吾から聞いた情報を話し、今後についてどうするか意見を仰ぐ。
『今、タイミングの良い事に貴ヶ谷中尉が沖縄でテロ対策をしている最中だ』
「おぉ、貴ヶ谷いるんだ」
『貴ヶ谷に協力して貰うんだ。これは私の許可で動いていると言ってくれ。後、久能家には随分とお世話になってるからな』
「あーい、んじゃ貴ヶ谷に一本入れまーす」
『了解、ただ気をつけろよ? 最近はゴーストが動いてない。何かあるかも知れないからな』
「伝えて置きます」
『では、頼む。兵装の許可も出して置く。ただし、強襲の機動力と防衛の火力を兼ね備えた、特務兵装は禁止だ』
「それは流石に私もしませんので、では」
そう言って木林との通信を終えた所で、貴ヶ谷に連絡を入れる。
「貴ヶ谷? 沖縄でしょ?」
インカムマイクを通して言うリリン。
『突然どうした? 確かに今は沖縄だが』
「今、天月彰吾から連絡受けてね。久能凛花が毒を盛られたのよね」
『天月彰吾からだと……!? なんで、番号を……って毒もか……それも予て説明しろ』
リリンはどういう形式で、彰吾がファントム部隊に直接電話をしてきたのか、凛花が毒を盛られたのか説明した。
「っと言うことの」
『っと言うことってお前……。人が今テロ対策に沖縄に来てて、こんな事件が起きるとか……、悲しくなるだろ』
「とりあえず、ポイントは後で送るから、アーマー着て向かってくれる?」
『了解、兵装の許可も出てんのな』
「一応ね、特務兵装以外はね」
『当たり前だ。前のテロと同じ規模並みの戦争でもする気か。まぁ、今から行く』
「はーい、んじゃね」
リリンは電話を切り、彰吾の電話番号を書いた紙を手にとった。
俊は彰吾が公衆電話に向かってからその数分後に、ある人物が来た。
「GPSだとここらへんですね」
そして、スマホを取り出して電話を掛ける。
『はい』
「着きました。どこです?」
『えっと、今手を上げますので探して下さい。その近くに居ますから』
俊は自分の居場所が分かるように手を上げる。
すると、スマホを片手に急ぎ足で俊に駆け寄る女性。
「あなたが沙由莉の電話で私に掛けた人ですか?」
「ああ、そうだ。俺は宮下俊」
「そうですか。私は知ってるとは思いますが酒井深月です。で、沙由莉は?」
「今さっき救急車で病院に運ばれた」
「で、状況を話して下さい」
「ああ、分かった」
俊は目の前で起きたこと、犯人の要求を深月に話した。
「犯人は四人集めて、あのデパートの屋上にくれば、話が進むんだ。だから、頼む。手伝ってくれ!」
俊は深月の目を見ながら真剣に言う。だが、深月はため息を付く。
「沙由莉と凛花を守れなかった貴方が言うの? それを?」
「……」
何も言わない俊、いや、言えなかったのであった。
「仮に四人集まって屋上へ行って、そこで毒の奴が何らかの方法で、私たちを攻撃したらどうするの?」
「今は、四人集めて行くしかないんだ……!」
「確かに沙由莉、凛花は大切な友達。それをこんな目に会わされて私だって許せない。でも、一番怒っているのは」
言いながら深月は俊に指を指す。
「貴方よ。何故、その場で捕まえて警察なりガーディアンに引き渡さないのですか?」
「……」
「そんな人に覚悟、度胸があるとは思えません」
言い返せない俊は歯を噛み締め、己の未熟さに苛立ちを覚えながらも深月を見る。
「……じゃあ、どうすればいい?」
「そうね、今ここで土下座して。ただし」
深月が言った瞬間、地面が凍る。
「この凍った地面の上で土下座して、私に頼みなさい。因みに、土下座したら低温火傷は免れないので」
フフっと笑う深月。確かに今は沙由莉と凛花を助けたい深月であったが、どうしても俊にだけは何か一つしないと気がすまなかった。
出来ないでしょ? 絶対に低温火傷する温度まで下げているのですから。
と思う深月。
だが、
「分かった……!」
俊が言った瞬間、膝を着いて凍った地面に手を着けてから額も下げて土下座をした。
「お願いします。東堂さんと久能さんを助ける為に、協力してください……!!」
まさかの出来事に驚いて、固まる深月。
驚いて固まっている間は数秒だが、普通の一般人ならもう限界で土下座を自ら止めるのだが、俊は止めなかった。
「あ、貴方! 火傷するのに、こんな理不尽な事言われて! それでそこまでしますか!?」
つい口を開いてしまう深月。
深月自身も理不尽な事を言っている事は分かっていたのだが、言わずには居られなかった。
「火傷や理不尽どうこうより……!」
顔を下げたまま言う俊にビクッと驚き、半歩下がる深月。
「東堂さんと久能さんの命の方が大事だッ……!!」
顔を上げ、深月の目を見て言う俊。
その目は真剣そのもので圧倒された深月であった。
「……、協力します。土下座も止めて下さい。そして、手を見せて下さい」
言われた俊は立ち上がり、深月に手のひらを見せる。
俊の手のひらは真っ赤になり、所々皮膚が向けていた。
そんな俊に、深月はバッグから消毒液とガーゼと包帯を取り出す。
「よく持ってるな……。驚いた」
「……、こういう事は慣れているので」
そして深月は手際よく俊の手のひらの手当を終えた。
「一応、この事件が終わったら病院で見てもらってください」
「おう、ありがとな」
ニコっと笑う俊に、フン……とそっぽ向く深月であった。
「俊! 沙由莉と久能さんは、病院か?」
「ああ、運ばれた」
「そうか。って、あれ?」
そんな時に彰吾が戻ってきた。
彰吾は有る程度聞くと、俊の近くにいた深月を見て驚く。
「あ。あの時の人」
深月は口元を片手で押さえながら彰吾をみて言う。
それを見た俊は、彰吾と深月を交互に見る。
「え? 何? お前ら知り合いなの?」
「知り合いっていうか……」
「助けて貰ったって言うべきですかね?」
「は?」
何がなんだが分からず、俊が言う。
「いや、どこで会ったの? じゃあ?」
「そこのデパートで、道を聞かれたんだ」
「親切に教えてくれました。天月彰吾さんですよね?」
「あぁ、はい。そうです」
「改めまして、酒井深月です。あの時はありがとうございました」
「いえいえ、とんでもない」
「天月さんでよろしいでしょうか?」
「好きに呼んでください」
などと、何故か俊よりも辺りの優しい彰吾を見て驚く俊。
「やっぱり、お前は死ね。彰吾……!」
「いや、何でだよ……」
突然、死ねと言われた彰吾は俊につっ込む。突っ込んだ後に、携帯電話が鳴る。
急いで彰吾は電話に出た。
「はい!」
『ファントム部隊の者です、今からそっちに一人向かわせている最中ですので集合場所を教えて下されば直接向かわせます』
「では、自分の今いる現在地がわかりますか?」
『わかりますよー』
「その近くのデパートの屋上に集合お願いします」
『分かりました。では、そのように伝えて置きます。後、この電話番号はこの通話が切れたら存在しなくなるので』
「分かりました。協力感謝します」
『では、御武運を……』
そして、電話が切れてから俊と深月の方へ向く彰吾。
「今から屋上に行こう」
「人数が揃ったのか!」
「ああ」
「では、行きましょう」
深月が言って、彰吾と俊が頷き屋上へ向かった。
つづく
こんな短期間に出来るもんなんですね、驚きです。
やろうと思えばこう行けるものですね、あまりやりたくはないのですが。
これで一旦落ち着いて、書いていきます。
では、これで。
ありがとうございました。




