1―3 再会と情報
あの後、俺とアルティナはヴェインに連れられて宿に来ている。ちなみに宿の名前はシラカバだ。
ここで、自分たちの知っている情報をお互いに確認する。
一つ、地球での名前が言えない。正確にはこの世界の住人の聞こえる範囲内だが……。
二つ、他にもこの世界に来ている地球の出身者が複数存在している。
三つ、ステータスの年齢、身長、体重は他者から確認することは本人が口答で告げた場合のみ確認出来る。
四つ、この世界に来るとutopiaでのプレイキャラクターの容姿、ステータス、装備(アイテム、武器、お金を除く)、種族。
五つ、この世界はゲームに酷似しているだけで現実である。
六つ、地球に戻る方法は不明、同様にこの世界に来る理由も不明。
「こんなところだな」
「……そうだな」
ヴェインの言葉に頷く。
ヴェインの容姿は赤毛の短髪で髪は少し立っている。瞳の色は金色でワイルドな顔つきだ。
そこにアルティナが戻って来た。アルティナには少し席を外してもらっていたのだ。
「話が終わったように見えたから戻って来たんだけど……まだ終わってなかった?」
「いや、ちょうど終わったところだよ」
俺が不安そうに言うアルティナに答えると、それに続いてヴェインが言う。
「そうだぜ、お嬢ちゃん。とりあえず席に座りな」
ヴェインが椅子を引き座るように促した。
アルティナが座るのを確認するとヴェインが話し出す。
「それにしてもお前はいつこっちに来たんだ?オレは一昨日だ」
アルティナが聞いても問題ない話にするようだ。
「俺は昨日だ……それでお前の夢は相変わらずなのか?」
俺はコイツの夢を思い出し苦笑してしまう。
「夢?ヴェインさんの夢って」
アルティナは気になるようだコイツの夢が……そう――。
「ああ、オレは――ハーレムを作る!!」
やはりコイツはコイツのままか……アルティナはポカーンとしている。だってそうだろうハーレムを作るなんて普通に言う奴はまずいない。
「変わらぬお前のままで俺は安心したよ」
「えっ?……安心出来るのこの夢で!」
アルティナが突っ込む。
「……だって初めて会った時からだし……夢が変わっていたほうが驚きだ」
確かに初めて聞いた時はさすがに冗談だと思っていたが……本気だと知った時は驚いた。この時の出会いは語る機会があれば語るだろう。
「まあ、オレの夢の話は止めて、これからのことだ」
ヴェインが地図を取り出し真剣な声音で言う。
「オレはこの街から出て南に向かうつもりだ……理由は夢のためと冒険のためだ。……レイオット、お前はこれからどうするんだ?」
「そうだな………」
クイッと袖が引っ張られる。見るとアルティナがぎゅっと服の袖を掴んでいた。
ヴェインは俺の袖をアルティナが掴んでいるのを見るとニヤニヤとしながら言う。
「俺としてはお前について来て欲しいんだがなぁ〜」
それを聞いたアルティナがさらに力を入れて袖を掴む。
「……行っちゃうの?」
不安そうに俺を見るアルティナ。
それを見て困っている俺をニヤニヤして見てくるヴェイン。
ヴェイン……覚えてろよ……いつかこの仕返しを必ず。
「ヴェイン……断るよ。俺はもうしばらくここにいるよ」
俺の言葉を聞きホッと息をつくアルティナ。
たいしてヴェインは、「まあ、いいさ」とだけ言う。
コイツ……俺が断ると判ってて言ったな。
「そういえば、お前は街に何しに来たんだ?」
あっ……ヴェインに会ったことですっかりと忘れていた。
「これを売りに来たんだよ」
俺はポケットから毒除けの指輪を取り出す。
「どんな効果だ?」
「毒除けだよ……それほど強く無いけど、せいぜい耐性が20%上がる程度の物」
「20%も上がれば充分じゃねえかよ」
呆れたようなヴェイン。そう言われても作る側からしたら物足りないのだが……。
一応この場で状態異常について説明使用と思う。状態異常には大きく分けて二種類ある。
一つ、身体的異常……毒、麻痺、眠り、部位欠損、骨折などである。
二つ、精神的異常……幻覚、感覚消失、恐怖、催眠などである。
状態異常を無効化するにはスキルによる耐性があるか、魔道具で耐性をつけるしかない。
魔道具で無効化する程の耐性がある物は高価で安い材料では作れない。
だから俺が作った毒除けの指輪は毒を無効化するのではなく毒状態になりにくくするだけだ。
以上、説明終了。
まあ、今から道具屋に売りに行きますか。
俺は席から立ち上がる。
「ん、どこに行くんだ?」
「指輪を売りに道具屋に、これが目的で街にきたんだし」
ヴェインの問に答え、宿の入り口に向かって歩き出す。
「待って、レイオット」
アルティナが急いで立ち上がり俺の隣に駆けてくる。
「ん〜〜〜じゃあ、オレもついて行く」
何故かヴェインも来るようだ。
そして俺たちは道具屋に向かった。……だが、俺は道具屋に来たことを後悔することになるとは今の時点で知る由もなかった。
道具屋の前につき扉を開ける。
バタン!
俺はすぐに扉を閉めた。
「おい?どうしたんだ」
ヴェインが何やってんだコイツといった表情で俺を見る。
「どうしたの?レイオット」
アルティナは不思議そうに俺を見る。
「ああ……ありえない光景が見えてな」
そうだ幻覚に違いない!アレは何かの間違いだ……たぶん。
気を取り直しもう一度扉を開ける。
そして俺はショックを受けた。見間違いじゃないことに。
そこには――――。
長い黒髪に水色に白いフリルが付いたエプロンドレスを身に纏う某世紀末覇者並みの顔つきと肉体を持つ漢がいた。
俺が固まっていると後ろからヴェインが来た。
「おい、なに固まっ………て……」
俺と同じ様に固まってしまうヴェイン。
「どうしたん……で………す……か……」
そのヴェインが気にかかり店内を見たアルティナも固まってしまう。
「あらん、お客さん?どうしたの早くいらっしゃいな(パチン☆」
店員又は店長であろう人物がウィンクして店内に入るよう促した。
「う、う〜〜〜ん」
フラッ……ガシッ!
フラリとアルティナが倒れ込む、それを俺は慌て抱き止める。
「…………………………………………………」
ヴェインは今に固まったままだ。
「ヴェイン、しっかりするんだ」
「ハッ……信じられないものを見た気がする」
「ヴェイン……残念ながら現実だ」
床に突っ伏すヴェイン。
「ん〜〜どうしたの?早くいらっしゃいな」
催促をする信じられない姿の人物。
この現状から俺たちが元に戻るのに数分の時間をようしたのは言うまでもない。
その後、とっとと毒除けの指輪を売り店から出た。二度と来たくない店だ……ちなみに毒除けの指輪は1500Gで売れた。
気を取り直し、俺たちは冒険者ギルドに向かっている。理由はヴェインの冒険者登録のためだ。
冒険者としつ登録すればギルドカードが簡単な身分証として使えるので関所などで一々通行証が必要な場所を楽に行ったり来たりと出来る。
ギルドカードは全ギルド共通であり、冒険者はフリーかギルド所属の冒険者の二種が存在する。
フリーはそのままの意味でどのギルドにも所属していない者である。
ギルド所属冒険者はそのギルドが運営する宿を無料で使え、ギルド専属の技術職に材料を渡せば格安で装備を作って貰える。などの特典があるがギルドからの依頼を請け負わなければいけない場合もある。
もちろん、ヴェインはフリーの冒険者だろう……南に向かうと言っていたし、夢のハーレムを実現するためにはあちこち巡り歩く必要があるからギルド所属はしないだろう。
冒険者ギルドに到着し、ヴェインは早速冒険者登録を始めた。
ヴェインが登録に向かうとアルティナが話しかけてきた。
「レイオットは登録しないの?」
「今は登録するつもりはないかな」
「どうして?」
「それはね――」
バンッ!!勢いよくギルドのドアが開かれた。
「おいッ!デビッドが重傷だ……」
「っとなんか問題が発生したみたいだ」
アルティナに登録しない理由を言おうとしたら勢いよく冒険者風の男がギルドに入ってきた。
「わかりました、医者を呼んでおきますので何があったか説明出来ますか?」
受付役が冷静に対処する。
俺は数分後にギルドから出なかったことに後悔することになるのをまだ知らなかった。