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わたしは寝食もそこそこに祈りの間に籠り、新しい祈りが与えられるたびに研究に没頭した。
「クソッ! 漢字が出てきやがった! 組み合わせ無限大かよ!」
目の下に隈を張り付け、エッタやアンヌに引きずられるように自室に戻されるわたしを、修道女長は心配しながらも畏敬の目で見ているようだった。
11100011 10000001 10000010 (あ)
11100011 10000001 10001011 (か)
11100011 10000010 10001010 (り)
11100011 10000010 10010010 (を)
11100011 10000001 10100100 (つ)
11100011 10000001 10010001 (け)
11100011 10000010 10001101 (ろ)
11111111 (実行)
「……あかりを、つけろ」
デコードしてみれば、 ' 輝きの祈り ' は、ただの音声コマンドだった。前世の1LDKの玄関で、スマートスピーカーに向けて何度も言ったことのあるような。
仰々しい儀式も、祈りも、信仰心も関係ない。祈りの間はコンソールボックス。特定の文字列を特定のプロトコルで流し込むだけの、単純なI/O処理だ。
『あやまたず祈りを唱えると、神の御光が現れます。大抵はこの祈りの間に。または修道院のどこかに』
修道院長の言葉を思い出す。
「要するに、コードのデプロイ先の引数がないから、奇跡の出現場所がランダムになったのね」
祈りの解析に成功したというのに、わたしの心は凍えていた。
ここが本当に ' 3月ウサギの穴の中 ' なら、それを作った誰かがいるってことだ。何のゲームで、それともアニメで、どんなエンディングに向かっているのか。
わたしは知りたい。それがたとえ、世界の機嫌を損ねたとしても。
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……できた。
できてしまった。
「E6 8E 8C E3 81 AB E5 85 89」
わたしの手の上に現れた光球にシスターたちはどよめき、一斉に平伏した。
まだほんの数文字ではあるが、ショートコマンドを探す過程で、16進数のバイト列でもコマンドが通ることを発見したのだ。
わたしは神への祈りを解析し、確実に、安全に、奇跡を起こすコマンドを手に入れた。
奇跡は普遍化した。
神は、堕ちた。




