クウ、地下拠点の町を見つける?
「ニャニャッ!? 何だ何だ、何が来た~? ……あれ? コムギ? ということは、トージか~」
レイモンを背中におぶり、コムギさんを肩に乗せながらクウがいる場所に近づくと、彼は一瞬何が来たのかといったばかりに後ずさりを見せたが、すぐにコムギさんに気付きついでに俺にも気づいてくれた。
「全く、見ればすぐに分かりそうなものなのニャ」
「変な動きをしてたし、体がボコボコだったから分かるわけないだろ~!」
レイモンをおんぶしてたからはっきりと分からなかったんだな。
「ウニャ! トージはトージニャ!」
そう言ってコムギさんは肩から地面に下りて、クウに怒っている。
「そんなのはおいらだって知ってるぞ~!!」
「面倒な性格だニャ!!」
「コムギもだろ~!!」
ううむ、何でそんなことで口喧嘩を始めてしまうのかな。レイモンにも何か言ってもらわないと。
「あの~レイモン? コムギさんとクウをどうにかなだめて……」
「……スース―」
やはりというか、そうだろうなと思っていたがぐっすり寝てるとか、他の魔導師と違ってかなりのんびりしてる人なんだな。
「魔導師レイモン! 起きてください!!」
「…………んんん」
荒療治になるが地面に落として無理やり起こす――それはいくら何でも酷すぎるし、 体を揺らして気づいてもらうか。
コムギさんとクウが激しくニャーニャー言い合っている中、俺は出来る範囲で屈伸を始めたりとにかく意味もなく歩いたりした。
「全く全く、これだから野良の猫は――ニャ? トージ?」
「偉そうなことを言われるとムカつくぞ~……ん~? 何だ、トージ、どうした~?」
無駄な動きをしまくってどうにかレイモンを起こそうとしていると、コムギさんとクウが驚いた顔で俺をジッと見つめていることに気付いた。
「え? コムギさん、それにクウまで、俺に何か問題でもあるかな?」
「トージはあまり無理をしないでほしいニャ。慣れない環境で無駄な動きをすると、すぐに体力の限界がきてしまうニャ……」
「そうだぞ、トージ。おじさんは無理に頑張ったら疲れやすいって聞いてるぞ~。無理するな、トージ」
いつの間にかこの子たちの口喧嘩が収まっていたどころか、俺の体の心配をされていたようだ。
「……ははは。そうだね、そうするよ」
元はと言えば寝ているレイモンを起こそうとしてただけだったんだが、彼女は俺の必死の動きに対しても全く反応が――
「――ん~……やはり砂の上を歩くだけでも暑さを感じてしまうものだな。ん? どうした、トージ?」
反応がないかと思ってたらすでに目覚めてたうえ、俺の背中からいなくなっていた。
「はぁ……いや、何でもないですよ」
「無理は良くないぞ、トージ。我は魔導師だから平気だが、トージは常にいたわらなければならないはずだ。無理は駄目だからな、トージ」
「…………そうします」
俺だけ無駄に疲れたな。
「トージ。大丈夫ニャ?」
「ありがとう、コムギさん。俺は平気だよ」
何はともあれ猫たちの口喧嘩が収まっていたし、レイモンも自分で起きたからこれでいいと思うしかない。
「ところで、クウは?」
「ニャ? またどこかにいなくなってるニャ……」
「ふふ。あの男の子は冒険猫なのだな。じっとしているのが苦手なのだろう」
「それはありますね……」
砂地の遺跡都市らしき場所を探し出したからといって、あの子が俺たちと日陰で休むわけはないと思っていたが、やっぱり大人しくしてるはずがなかった。
とりあえず日陰となるような壁があるので、砂がかぶっていない石の上に寄り掛かるようにして座ることにした。
「ふぅ~……」
「トージはゆっくり休んでニャ」
コムギさんは手を俺の膝にちょこんと置いて、元気づけてくれた。
「ありがとう。コムギさんは?」
「私も少しだけ近くを歩いてみるニャ」
そう言って密かにクウを探そうとしているようだ。なんだかんだ言ってもクウを嫌ってるわけじゃないのがコムギさんのいいところだ。
「ふむ。この遺跡都市は我が訪れた頃よりも、かなり砂に沈んでいるのだな。トージが腰掛けている石は建物の上部のように思える。年月が経っているにしても、ここまで沈んでしまっているとは思わなかったな」
「見ただけで分かるんですか?」
「……うむ。我の記憶では建物がいくつか残っていたのだが、今やそのほとんどが砂の地下に沈んでしまっている。あの頃は魔物が盛んにいたのだが、そのせいで砂が地下に流入してしまったんだろうな」
俺の背中で熟睡したおかげなのか、レイモンが随分と饒舌だ。
「なるほど。魔物が盛んに……」
「あぁ、惜しいものだな」
その時のことを思い出しているのか、レイモンは腕を組みながら目を閉じている。そんな彼女を見つつ、俺も軽く目を閉じてしばらく大人しくしていると、遠くの方から猫の声が聞こえてきた気がした。
「ニャニャニャニャ!! おいら、見つけたぞ~!! お~いお~い!」
あの声はクウだな。
「ふむ。あの男の子の方角はおそらく……む? トージ、寝ているのか?」
「……トージが目を覚まさないニャ!!」
声は確かに聞こえたものの、どうやら知らぬ間に眠ってしまったようでコムギさんとレイモンが俺をずっと揺らしている。
そうかと思えば、ざらざらとした感触が頬の辺りを何度も往復しているうえ、何かに覆いかぶさられているような気も。
「うぅぅ……う? あれ?」
「ニャゥ、良かったニャ……」
もしや、俺の頬を舐めてくれていたのか?
「トージ。我を思いきり抱き締めて安心させてくれ……頼む」
「へ?」
そしてレイモンは俺にかぶさっていて涙を流していた。どうやらかなり心配をかけてしまったらしいので、レイモンを安心させるつもりで抱き締めることに。
「……トージ、我もコムギも泣かせないでくれ」
「も、もちろんですよ」
「ニャゥ……よかったニャ」
「……コムギさん」
そうか、軽く目を閉じたつもりが熱中症みたいになってしまったのか。
――ということは、クウのあの声も幻聴?
「トージトージ!! おいら、見つけたぞ~! ……ん? どうかしたのか、トージ。コムギとココアも何やってるんだ~?」
幻聴かと思っていたら、嬉しそうにするクウが俺を呼びにきた。何も知らないクウとは別に、コムギさんとレイモンはまだ俺にくっついている。
「いや、なんてことはないよ。それよりも何を見つけたの?」
「聞いて驚け~! おいら、砂の下を見つけたぞ~! きっと地下に拠点の町があるに間違いないぞ~」
「地下拠点の町?」
「そこに行けば何かあるぞ~」
自分が見つけたのが嬉しかったのか、クウはその場所に案内してくれようとしている。
「じゃあ、そこに行こうか」
どれくらい眠っていたのかはともかく、体が軽くなったので腰掛けていた体を起こして動くことにした。
体を起こすと、コムギさんとレイモンは安心したようで俺から離れた。
「こっちだぞ~」




