砂地の遺跡都市へ行こう!
見渡す限りの砂漠地帯。おまけに日差しが暑く灼熱と言っていい状況。
そんな中、俺の背中にはエルフのレイモン、そして肩の上には――
「――たまにはトージの肩に乗るのもいいかもしれないニャ~」
と言った感じで、上機嫌なコムギさんが乗っている。
こうなった理由は実に単純だった。
――さかのぼること数分前くらい。
「秘密の道を通っている間に、トージはとうとう見境なく節操が全然ないオスに成り下がってしまったのニャ!」
ほふく前進で外に出た直後、レイモンは早速俺の背中を要求し、俺もまた余計な文句を言わずに腰を下ろしたのだが、不自然的なやり取りに対しコムギさんはすぐに激怒した。
レイモンの動きはとても素早いものだった。なぜなら、足元を気にするコムギさんの僅かな隙を狙っての動きだったからだ。
そんなレイモンが俺に過剰に近づくのを納得出来るわけがないコムギさんは、すぐに背中の毛を逆立てて威嚇のポーズを見せた。
「ち、違うよ、コムギさん」
そんな彼女に俺はひたすら謝るしかなく、顔を上げられなかった。そんな中、レイモンがコムギさんに放った言葉は。
「うむ。それは全くの誤解だぞ、コムギ。トージは我、いや猫以外には何の興味を持たぬ男だ。それ故何の下心もないことが分かったからこそのおんぶだ!」
……決してそんなことはないんだが、コムギさんを怒らせるのは得策じゃないしそういうことにしておかねば。
「そうなのニャ? やっぱりトージはトージなのニャ?」
「うむ! そこは信じ切るべきだと思うぞ」
「ニャゥ……私もトージを近くで感じるために肩に乗るニャ!」
何がやっぱりなんだろうか。とはいえ、コムギさんの中の俺のイメージはほぼ猫好きで固まっているはずだから、多分そういう意味のやっぱりなんだろうな。
――ということがあり、コムギさんは俺におんぶされたレイモンの手を避け、負けじと俺の肩にちょこんと乗ることで機嫌を直してくれた。
「ふふ、美人に乗られまくる感想はどうだ?」
この場合の美人はコムギさんのことだと思われるが、もしかしてレイモンも含まれているのだろうか。
「役得ってやつなので嬉しい限りですよ」
「無論、我も美人に入るのであろう? 我の顔を近づけるたびにトージが顔を赤らめるのもそのせいだろうからな」
どうやら自覚はある模様だ。
「まぁ、そうですね」
「トージのおかげで足が熱くならずにすんで助かったニャ~」
「そうだね、それは本当に良かったよ」
コムギさんの機嫌取りの意味があったが砂が熱いのは確かだし、こうして機嫌良く肩に乗ってくれているのは得でしかない。
コムギさんはもちろん、幸いにしておんぶしていてもレイモンから重さを感じないので、俺の体力でも歩くだけならそこまで疲れないからいいとして。
「それにしても暑い……」
こうも太陽が照りつけるようでは、時間が経つにつれて疲労が溜まっていくのは流石に避けられそうにない。
何せ何度見渡しても、日陰となるような建造物もなければオアシスのような水辺もまるで見当たらないからだ。
「レイモンは昔ここに来たことがあるって話でしたけど、近くに町か村はないんですか?」
「む? むむむ……? いつ来たのかもよく覚えてないな……」
「なるほど」
期待してたわけじゃなかったが、そうなると一体どこから探せばいいのか。
「コムギさん。何か見えるかな?」
「見てみるニャ」
俺はそれほど身長が高いわけじゃないが、俺の肩に乗っているコムギさんなら俺よりも遠くまで見渡せるはず。
レイモンの古びた知識はあまり当てに出来そうにないので、ここは猫の動体視力に頼るしかない。静止視力はそこまでじゃないにしろ、動いているのがいればかなり遠くまで見えるはずだ。
「ニャ? 何かが動いているニャ」
「えっ」
もう見つけてくれるなんて優秀な猫さんだなぁ。
「ウニャ? アレはクウのような気がするニャ……」
「クウ? そういえば先に行くとか言ってたような」
こういう時に自由に動く猫さんがいるのは有難いというか、単純に自分勝手に動いてくれているおかげというべきか。
「……ふんふん。トージ! 遠くでクウが何か見つけたみたいニャ」
「おぉ! じゃあそこに――」
「――思い出したぞ、トージ!!」
「ニャニャニャニャ!? う、うるさいニャ」
コムギさんが真っ先に驚いているが、俺は驚くよりも先に耳元に声が響いて思わずレイモンを落としそうになった。
「こ、こら、トージ! 我をしっかりとおぶってくれ」
「すみません。というか、耳に響くんですからいきなり大声を出さないでくださいよ」
「それはすまぬ。猫のクウが何かを見つけたと言ったが、その場所には恐らく砂地の遺跡都市が沈んでいる。そこにたどり着けば、暑さを凌げるはずだ」
砂地の遺跡都市か。遺跡ということはすでに無人ということになりそうだが、しかし日陰にありそうな場所はあるだろうし、行くしかない。
「トージ。そこに行くニャ?」
「そうだね。クウが見つけてくれたし、そのおかげでレイモンも思い出したみたいだから、そこに行けばとりあえず凌げると思うよ」
「さぁ、トージ! 我とコムギをそこに導いてくれ!」
俺におぶられてるし俺が歩くしかないもんな。
「トージ。レッツゴーニャ~!」
コムギさんが相変わらず可愛すぎることに満足を覚えながら、俺はクウが待つ場所へ歩き出した。




