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猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める  作者: 遥風 かずら
アフターストーリー 2

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猫の宿屋『ぺルーシャ亭』へようこそ!

 モフっとした感触に浸りながら歓迎している猫さんの姿を見てみようと顔を上げると、目の前にいたのはスヤスヤと気持ち良さそうに寝ている猫さんだった。


 寝ている猫さん以外に目をやると、思い思いのままにくつろぐ猫さんが見える他、会話している猫さんたちの姿があちこちに見えている。


 耳を澄まして聞いてみると、聞こえてきた会話は――


「――ここ、気持ちよさそうだけどいいかにゃ?」

「いいにゃ」


 などなど、人間のような会話が自然に聞こえてくる。

 

「人間でここに入って来たのはトージさんが初めてニャン。だけど、これから後にも先にも入れる人間はいないけどニャン~」


 周りの猫さんから視線を外し、歓迎してくれた猫さんを見るとその子は綺麗な長毛の被毛をした女の子のようで、毛色は全身ゴールド、鼻ぺちゃの広い顔が特徴だ。


 寝そべりながらではあるけどお礼を言わないと。立ち上がると目線も合わなくなるし、しばらくこのままでもいいかもしれない。


「人間なのに歓迎してくれてありがとう! えっと――」

「――ニャン?」


 むぅ。コムギさんは当然ながら美人さんに間違いないが、目の前のこの子は可愛い感じで首傾げの仕草だけ見てもとても愛くるしいぞ。


「えっと、お名前は何ですか?」

「わたしの名前はルルって名前ニャン。すぐ近くで宿屋をしてるニャン」

「ルルさんだね。もちろん、利用させてもらうよ」


 そこら中に猫さんがいるだけでも至福なのに、宿屋の猫さんに歓迎されるなんて生きててよかった――。

 

「全く、トージは節操がないニャ……」

「そうか? トージはおいらたちが好きすぎるだけで、普通だと思うぞ~」


 遅れて入ってきたコムギさんとクウは、寝そべる俺の真横を通り過ぎながら呆れたような会話をしている。


「わわわっ! コ、コムギさん~」


 悪いことをしてるわけでもなかったが、俺は慌てて起き上がった。


 そんな俺を見るコムギさんは――


「――フンッ!」


 ……などと、不機嫌そうな鼻息を鳴らしてこの場を離れてしまった。


 あぁぁ。調子に乗りすぎた。


「トージ。おいらも適当に歩いてくるぞ~。しばらくどこにも行かないんだろ~?」

「……ん。あぁ、そうだね」

「そっか。じゃあ、おいらは気が向いたら戻るからな~。探さなくていいぞ~」


 相変わらずマイペースな猫さんだけど、彼らしいな。


「ふむ。トージ。お前は猫なら誰でもいい男なのか?」


 一番最後に入ってきたレイモンが不思議そうな顔で俺を見てくる。猫さんに少し照れただけなのに、そんな風に見えたんだろうか。


「えぇ? そんなことはありませんよ! 俺はコムギさんのパートナーなんですから!」

「ならば、コムギの機嫌を元に戻しといたほうがいい。あの子はああ見えて頑固なんだ。トージが思うよりも頑固だぞ」

「た、確かに……じゃあコムギさんを探しに――」

「――トージ、待て」


 こうしちゃいられない、そう思ってこの場を離れようとすると、レイモンが俺の腕を掴んで動きを封じる。


「えっ?」


 ここに来るまでフードを被って顔を隠していたレイモンだったが、感覚を研ぎ澄ます為なのか、長い耳を表に出してみせた。


「落ち着け。コムギに限ったことじゃないが、猫というのは自由に動くんだ」


 それは確かに言えてる。クウなんかはまさにそのままだし。


「不機嫌になってどこかへ行ったのかもしれないが、この村でトージが自由に動ける場所は限られている。歓迎はされたが、まだ村を歩き回れるほどではないんだ」


 パッと見回しても猫族の拠点はそこまでだだっ広い場所じゃない。ただ、村となっているので奥の奥まで通じる道がありそうな可能性がある。


 それこそ猫じゃないと通れない道とか。


「そうなんですか? しかし、それだとどうすれば?」

「心配しなくてもコムギは我が連れてくるから、トージは宿へ行っててくれないか? そこで退屈そうに待っている子がせっかくトージを歓迎して迎えに来てくれているんだ。今は宿へと案内してもらう方が正しいと思うぞ」


 レイモンの言う通り、ルルさんは俺とレイモンの話が終わるのを待っているのか、大人しく座って待っている。


「トージは部屋に戻ってくるコムギをいつものように迎えてやるだけでいい」

「何も言わずに抱っこするだけ……ですか?」

「うむ。いつもしていることをするだけでいい。あの子はそういう子だ。トージから無駄な言い訳など聞く必要はないと思っているからな」

「な、なるほど……。そういうことならお任せします」


 コムギさんには誤魔化しが効かないからな。変に言い訳しても駄目だし、ここは古くから知るレイモンに任せる方が良さそうだ。


「うむ! 我に任せるがいい!」


 そう言いながらレイモンは嬉しそうに俺に手を振って、この場からあっという間にいなくなった。


 ……コムギさんを探しに行ってくれるのは確かだろうけど、レイモンも村を自由に歩き回りたいのか、俺よりも焦りを隠しきれていなかったな。


「お話は終わったニャン?」

「はい、お待たせしてしまってすみません」

「謝ることなんて何もないニャン。ニャにはともあれ、猫の宿屋『ぺルーシャ亭』へごあんニャ~い!!」


 そうだ、ペルシャ猫だ。思い出した。


 今はひとまず俺も落ち着いて、それからコムギさんを迎えよう。

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