はりきり猫さん、おたから?を掘り当てる
「ウニャニャニャニャ!!!」
ううむ、凄い。
今までのコムギさんとは何かが違う――気がする。
「コムギさ~ん! 無理しないで程々でいいからね~」
「大丈夫ニャ! トージは何も心配しないで待っててくれればいいニャ~」
☆
好物おやつのかつおぶしを食べて満足したコムギさんは力がみなぎってきたらしく、クウを追ってダンジョンへ走り出していた。
ダンジョンといっても最深部まで来たわけじゃなく、以前に来たところより手前の分かれ道まで進んできただけである。
そこまで進んだにもかかわらず、クウの姿はどこにもなく、彼は相当奥へと進んでしまっていることが分かった。
そんなクウに感謝したいのは、ここまで進んでくるまでに全く迷わなかったこと。どうやら俺向けらしいが、数十メートルごとに壁に印をつけてくれていた。
ちょくちょくダンジョンに潜っているだけあって、あとからダンジョンに来る俺のことを思ってくれているので、それだけでも感謝したい。
コムギさんはそんなクウを全く心配してないようで。
「クウくんは今頃どの辺を進んでいるんだろうね」
「クウなら何も問題ないニャ。彼はこれまでずっとひとりだけで行動してきたのニャ。トージが心配しても、クウは勝手に動いてるから心配いらないニャ」
などと言いながら、機嫌良さそうにしていた。
そんなコムギさんに置いて行かれないように後ろをついて行くと、何かを見つけたのか、突然凄い速さで先の方へと走って行ってしまった。
「トージトージ~! 見つけたニャ!!」
それから間もなくして、彼女の嬉しそうな声が前方から聞こえてくる。
その声はこのダンジョンを見つけた時と同じくらいのテンションで、すぐに俺に見せたいといった感じだ。
「ここニャ~! ここにあるニャ」
早く見せたそうなのでそこに急ぐと、コムギさんは一見何の変哲のない壁に向かって手を上げて教えてくれている。
「え? ここって石壁、いや土壁……?」
このダンジョンは全て岩で出来ているわけではなく、所々に土がむき出しになっている壁があったりして意外に脆い場所がある。
こういう場所だけ見ると、自然のダンジョンではなく誰かの手が加わったダンジョンだと考えてしまうが、今は気にしないでおく。
「匂いがするニャ! きっとここを掘ればトージの欲しいものが見つかるニャ」
「匂い? んん?」
当然だが、俺が近づいても匂いは全く感じられない。これは猫さん特有、いやスキルや力を有するコムギさんの鼻利きによるものかも。
「俺が欲しいもの? 何だろ……」
「もう我慢出来ないニャ。掘っていいかニャ?」
一応俺の許可を求めていたようで、俺が頷くと、途端に彼女は鋭い爪を出して土壁を勢いよく掘り出した。
どうやら見つけた時から土壁を掘りたくて仕方がなかったらしい。
「ウニャニャニャニャ~!!」
――ワンコさんはこの世界ではまだ見てないが、ワンコさんに負けず劣らずな掘り方をしている。
そうしてしばらく壁掘りに夢中になっているコムギさんを待っていると、壁からわずかながら何かが光ったような感じがあった。
次第にはっきりと肉眼で分かるくらいの輝きを増してきているが、それが何なのかは全く分からない。
「トージ。ちょっとここを見てほしいニャ!」
すると、それまで勢いよく掘りまくっていたコムギさんが掘るのを止めて、俺に確認するように促してくる。
「コムギさんがいるところだね。すぐ行くよ」
――といっても、彼女が掘っている場所からそう離れてもいないので、すぐに彼女の元に近づいた。
「ここニャ! このピカピカなものに触れてほしいニャ」
「輝いてるね。これって……いや、とにかく触れてみるよ」
「ウニャ」
俺の鑑定スキルを使えばそれが何なのかすぐに判明するが、相当に輝いているその石はどう考えても――
【アレキサンドライト】
魔導師がとても喜ぶもの。魔導車に使うと……?
取引先限定。
「――うん、宝石だね。それもかなりレアなものみたいだ」
どうやら魔導師には相当なお宝になりそうだ。そのうえ魔導車が、とか見えたけど今は魔導車が無いからこれは気にしなくても良さそう。
「ニャフフ。やっぱりそうだと思ったニャ! これでトージは大金持ちニャ?」
「いやぁ、魔導師には喜ばれるものみたいだけど、取引も多分限定されるだろうからすぐにお金持ちにはなれないかもね」
「むむぅ~それならもっともっと掘りまくるニャ!!」
そう言ってコムギさんは、さらに強い力で壁を掘りまくり始めた。しかしその勢いがあまりに強すぎたのか、周辺が揺れ出してきたような気が。
「ちょっとちょっと、コムギさん? 洞窟全体が揺れてるような気がするんだけど」
「ニャニャニャニャ!!!」
……駄目だ、全然聞こえてない。
まさかこのダンジョンに異変が生じるとは考えたくないけど、とてつもないエネルギーを持ったレアな宝石を掘り当てたんじゃ?




