コムギさん、即席おやつで体力アップ?
ガルスの即席おやつの種を植え、しばらく待っていると外で見回りをしていたクウも小屋の中に戻ってきた。
クウは俺とコムギさんが一つの植木鉢をじっと眺めていることがおかしく見えたようで――
「――植木鉢を眺めるのが面白いのか~? 何だか怪しいぞ~」
などと首を傾げながら、なぜか俺とコムギさん相手に警戒心を高めていた。
「変でも何でもいいニャ。トージのスキルは目に見えないものなのニャ。クウが理解出来なくても、私は理解出来てるから全然怪しくなんかないニャ」
そんなクウに俺は笑うしか出来なかったが、コムギさんはクウの言葉を聞いても怒ることなく落ち着いているようだった。
「ふ~ん、そうなのか。コムギがいいならいいや。外は心配ないし、おいら、洞窟に行ってくるぞ~。トージが安心出来るようにしてくるからな~」
「そっか。気をつけてね!」
クウは俺の猫さんというわけでもなくダンジョンで出会った探検猫さんなので、俺がすることに関してはほとんど気にしてこない。
とはいえ、自分の村に帰ることが彼の目的でもあるので、それが達成するまでは手助け出来るところだけはするという話だった。
強制されないしするつもりもないけど、協力する時もあるという意味ではとことん気まぐれ猫さんな感じだ。
「そろそろかニャ~?」
気まぐれなクウとは別に、コムギさんは俺を中心に考えてくれているので、つくづく最高のパートナーと言えるし可愛すぎる相棒猫さんと言っても過言じゃない。
「トージトージ! お花ニャ~」
「え、花?」
「大きくな~れ~大きくな~れ~ニャ~!」
植木鉢を見てみると、コムギさんが言うように急速に蕾が伸びたかと思ったら、何かの花のようなものが咲こうとしている。
「あれ、おやつなんじゃなかったっけ……」
魔導師が作った種だから単なる花として育つわけじゃないと思うけど、どうなるんだろ。
野菜と穀物の種は花が咲いてもおかしくないけど、即席おやつで花が咲くとなると何とも不思議な気がしてならない。
「ニャッ!? どんどんどんどん膨れてきてるニャ! だ、大丈夫かニャ?」
「ほ、本当だね。コムギさんのお願いが効いたかな」
コムギさんと俺とで期待と不安が入り混じる中、膨れ上がった蕾が今にも花開こうとしている。
――直後、小屋全体が揺れたような気がしたうえ、視界全体が白っぽくかすんだような気がした。
眩しさはなかったものの少しずつ目を開けようとすると、
「ニャニャニャニャ~!! 鳥のささみの味がするニャ~! 美味しいニャ~」
俺より先に、コムギさんが喜びまくっていた。
しかもすでに食べてる!?
慌てて目を開けると、そこで見えたのはかつおぶしがまるで花びらのように小屋の中にひらひらと降りまくっている光景だった。
コムギさんが鳥のささみがとか言ってるものの、俺に見えているのはかつおぶしの乱舞である。
「コ、コムギさん? それ、かつおぶしだよね?」
「ニャ~! 見た目はかつおぶしニャ。だけど、味は鳥のささみとかサーモンとかまぐろが感じられるニャ!」
「そうなんだ」
「美味しいニャ美味しいニャ~!!」
何とも大げさな仕掛けだが、これも魔導師の仕業だと思えばそこまで驚くものでもない。
それよりもコムギさんが物凄く嬉しそうにしているので、これだけでも魔導師ガルスに感謝したい。猫に限るおやつというだけあって好物を厳選した感じがある。
即席おやつの種、恐るべし。
「コムギさんが喜んでくれて良かったよ!」
「トージのスキルがなければ食べられなかったから、トージはもっと誇っていいと思うニャ!」
「ははは。そうだね」
「ニャ~美味しかったニャ!」
それほど時間も経っていないのに、コムギさんはあっさりとおやつを食べ終え舌をぺろりと出して満足そうにしている。大量に見えたけど、かつおぶしの量はそれほどでもなかったかも。
「膨らんでいた蕾から出たかつおぶしはそんなに多くなかったんだね」
「色んな味があったから充分ニャ! クウは惜しいことをしたニャ」
「でも、誰かにごちそうになったって言ってたから、今は必要なかったかもしれないね」
クウは植木鉢や種に関心がない猫さんだったけど、食べるものは自分で何とかするタイプなのかも。
「何だか少し眠くなってきたような、そうでないようなだるさがあるニャ……」
美味しいおやつに満足したのか、コムギさんが眠たそうにしている。
「大丈夫? 眠いなら寝ちゃってもいいんだよ?」
「ウウニャ……違う、違うニャ……」
「んん?」
「お腹……ううん、体がぽかぽかしてとってもあったかいニャ。これが何なのか分からないニャ」
具合が悪くなったようには見えないけど、さっきまで喜びを露わにしていたコムギさんとは打って変わってだるそうにしているような。
もしかして、即席おやつの効果が関係してるとか?
せっかく元気になったのに、コムギさんはテーブルの上で横になってだるそうにしている。
「ニャニャニャニャ!? な、何だかみなぎってきたニャ……」
だるそうにしていたかと思っていたらコムギさんが突然起き上がり、テーブルの上から降りて、俺のいるところを耳をピンと立たせながら落ち着かない様子でぐるぐると回り始めた。
「コ、コムギさん? どうしたの……?」
様子を見る限り悪い感じではなさそうだけど、何が起きているのか。しばらくぐるぐると回り続けたところで、コムギさんがピタリと止まったかと思ったら――
「――力が溢れてきたニャ~!!!」
などと、そんなことを言い放っていた。




