トージの亜空間な植木鉢 ①
小屋にしばらく滞在することを決めた俺は、部屋に放置していた土まみれの植木鉢を移動させ、全て小屋に移動させた。
土の成分は流石に分からなかったが、コムギさんが拾ってきた物はどれも何かしらの性質があるので、土は捨てずにそのまま持ってきた。
「なぁ、トージ。トージの部屋へはいつでも行けるのか~?」
小屋に移動し終えたところでクウは猫の姿に戻っていた。なるべくなら本来の姿の方が楽ということなのかも。
猫の姿の方がモフれるから俺としては猫のままの方がいいけど。
「うん? 小屋からって意味なら行けると思うけど、どうして?」
「村の人とか、こっちの小屋から何かが入り込んだら危ないんじゃないか~?」
……あぁ、そうか。
村の人はともかく、小屋に侵入してくる何かが繋がった部屋に移ってくる可能性もあるのか。そうなるとメルバ漁村の人たちに危険が及ぶ可能性が。
「う~ん……、それもそうだね」
「だろ~! だから扉はもっと分かりづらくした方がいいぞ~」
クウに言われたので、引き戸の辺りを眺めながら対策を考えようとそこに近づくと、コムギさんが俺の足元にすりすりしてくる。
その行為の意味はもちろん分かるものの、コムギさんの場合は他に伝えたいことがあったりするので彼女を見つめてみた。
すると。
「トージは何も心配する必要なんてないニャ!」
「え?」
この言い方はまたしても怒ってる?
「こことお部屋を繋いだのはトージのスキルのおかげなのニャ。だからトージがいない時や、私が近くにいない時はただの壁なのニャ。クウが言うようなことにはならないから何も心配しなくていいのニャ!」
なるほど。確かに俺の亜空間スキルで繋がってるだけで、俺がいない時でも自由に行き来出来たらおかしな話になる。
「全く、クウはトージのことをなんにも分かってないから困るニャ~」
そう言ってコムギさんは、クウに対してやれやれといった可愛らしいポーズで呆れて見せた。
「なんだと~!! おいらだってトージを助けられるぞ~! コムギだってただぐうたらしてるだけじゃないか~」
ああぁ、そんな言い方しなくても。
「フゥゥ!!!」
「ギニャ~!!」
やばい、どっちも臨戦態勢になってる。
ううむ、こうなったら人間の俺では止められない。何か止めるようなことがないと止まりそうにないけど、何かないか何か。
今のところ睨み合って威嚇してるだけで飛び掛かる段階じゃない。となると、俺が何か驚くことをすれば――。
そういえば、持ってきた植木鉢に全然触れていなかった気がする。
コムギさんとクウの喧嘩が始まらないことを祈って、俺は大量の植木鉢の中からとりあえず適当な植木鉢を急いでテーブルに並べ、土を一定の高さに揃えて適当な種を植えてみた。
水が手元にないので種をそのまま土の中に埋めてみたまではよかったものの、やはりそんな簡単に何かが起こるわけがなく、何も動きが無い。
……う~ん?
「フゥゥ――――!! ムカつくニャ!」
「なんだと~!! それはおいらの方だ~!!!」
あぁぁぁ、もうどっちか怪我をしそうなくらい興奮してる。
どっちが怪我をしても嫌だし悲しくなるので、俺が傷を負ってでもいいという思いでふたりの間に飛び込もうかと思いながら植木鉢から目を離した。
その直後、テーブルから植木鉢を落としてしまう。
「フゥゥーー……ニャニャ? か、体が動かないニャ!?」
「ううぅ……おいら、どうしちまったんだ……こんな動かせなくなったことなんて……うぎぎぎ」
コムギさんとクウに異変が生じていて、ふたりとも向き合ったまま動けなくなっている。
「コ、コムギさん!? クウくんも? ど、どうしたの?」
床に落ちた植木鉢を見るも、植木鉢は全く割れておらず、土が少しだけ飛び散っているだけだった。
「トージ~……動けないニャ~」
「う、うぅ……」
「ど、どうしよう、どうすれば……動けないって、どんな感じなの?」
コムギさんは自分に起きた症状に理解出来ずに戸惑っている一方で、クウは初めて起きた異常に理解が追いついていない感じに見える。
「力が上手く入らないニャ……手足がくすぐったいような針のようなもので刺されちゃってるような、変な感じがするニャ……」
力が入らない、針で刺されたような状態――もしかして?
俺は床に落ちて転がった植木鉢を拾い上げ、土の中に埋め込んだ種が少し割れていたのでその欠片を手に取り鑑定してみた。
すると、見えたのは。
【パラリシスの種の欠片】
【効果:麻痺】
【徐々に回復】
【亜空間植木鉢:亜空間スキル制限】
亜空間に繋がってる植木鉢なのか?
しかもよりによって麻痺の種を植えていたのか。まさかこんなのまであるなんて驚きしかないんだが。
亜空間スキルに制限があるみたいだけど、数ある植木鉢の中でどれでもスキルが使えるわけじゃないって意味だろうか?
それにしたって少量の土が飛び散っただけなのに、まさかこんなに強力な効果が表れるなんて。
だけど。
「フニゥ~……仕方ないニャ~」
「おいらも悪かった~……うぅ~……」
ふたりとも麻痺にやられてすっかり大人しくなったので、今回は麻痺の種に救われたと思うべきかもしれない。




