表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める  作者: 遥風 かずら
猫と商人

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

37/51

第37話 アースガルフ市街のドワーフ少女 前編

 魔導車を降りた後、俺はマリヤをおんぶして奥に続く薄暗い道をひたすらに歩いている。鉱山となっているが人の行き来がそこそこあるうえ、松明(たいまつ)の灯りがあったのは助かるところ。


「……トージ。ありがと~」

「気にするな」


 ぼっちの俺には娘なんてものはいなかったが、もし娘がいたらこんな気持ちになっていたのかもしれないな。


「トージはゆっくり来てニャ」


 コムギさんは最近よく眠る。それもあって、自分の足で動く時はかなり軽やかに歩けるようになったらしい。


「やぁ、こんにちは」

「どうも」


 こうして鉱山道を歩いているだけでもすれ違うとは、ドワーフの里はかなりの町なのでは。


「……人間は知らない相手でも声をかけるんだ?」

「ん~まぁ、誰にでもじゃないけど、挨拶したりされたりはあるね」

「ふぅん……」

「人間が嫌いというわけではないんだね?」

「何も思わない。会わないから」


 エルフの王国に暮らしていれば確かに会わずに済むか。


 コムギさんが先行して進んでいる鉱山は、かなり奥の方まで続いている。すれ違う人間もかなり多く、おそらく観光地化された場所だ。


 そうしてしばらく道なりに進むと、鉄の板でできた道しるべが立てられていた。

 

「アースガルフ市街は右……か」

「左は?」

「旧市街だな。松明がないし、人の出入りがなくて廃墟かも」


 ドワーフの里としか聞いていなかったが、正式名称はアースガルフで間違いないはずだ。そこにジーナ女王に頼まれたドワーフが素直にいればいいが。


 選択に迷うことなく右へ進むと、進むにつれて人工的な照明が天井にぶら下がっている。


 器用な種族ということだけは知識として備えているが、実際に会ってみないことには判断出来ない。


 もしかしたら俺に物を押しつけたドワーフの子供にも会えるかもしれないが、そればかりは何とも言えないだろうな。


「こっちニャ、トージ」

「コムギさん! 待っててくれたの?」

「ニャ」


 鉱山市街への入り口付近で待っていたコムギさんの口元を見ると、すでに何かを食べてきたようで、何度も舌なめずりをしている。


「もしかしてコムギさん……」

「美味しかったニャ~」


 以前は町に着いたと同時にどこかにいなくなってそのたびに何か食べていたっぽいが、今回もそうだったところを見るとコムギさんらしさが戻った感じがする。


「トージ。わたしを降ろして」

「あ、そうだね」


 ずっと俺におんぶされっぱなしのマリヤだったが、流石に市街に入る手前になって歩きたくなったようだ。


「手を繋いでもいい?」


 アズリゼ王国の時は姉の女王の手前、側近のような言葉遣いを見せていたが、今はすっかり年相応の少女らしさが出ている。


 それだけエルフの王国では気を張っていたんだろうが。


「はぐれないように気を付けて」

「それはトージも同じだから」

「マリヤと手を繋いでいたらそうはならないよ」

「どうだろうね~」


 ……途中までとはいえ、こうしてマリヤと歩くのもなかなか悪くない。そうしてマリヤと手を繋ぎながら歩いていると、鉱山の中とは思えないほど賑やかな通りが姿を現した。


「らっしゃい! 研ぎたての短剣短刀小刀~何でもあるよ~!」

「こっちは鉄で作った前あてだ! 腕のある冒険者は買っときな」


 思いきり冒険者向けのマーケットだな。ということは、旧市街へ行けば冒険者だらけなのか。


「う~ん、ドワーフの数よりも人の数が多いな。こんなところでどうやって頼まれのドワーフが探せるんだ?」

「それなら平気。ドワーフは小柄だから」

「あ、そういえばそうか」


 ジーナ女王は俺にははっきりとした情報を伝えなかったが、妹のマリヤにはきちんと特徴を伝えていたわけだ。


 ……よほど猫化出来なかったのが尾を引いてるんだな。


 人並みをかき分けはぐれずに進むと、全くひと気のない閑静な小屋が建ち並ぶ通りに出た。小屋の一部からは何らかの作業をやっている音が漏れ聞こえている。


「うん、きっとこの辺にいると思う」

「特徴はドワーフというだけ?」

「小さな子で髪の色は多分、真っ赤」

「……うん」


 あのドワーフの少年も小さかった。


 髪の色だけでは見つけるのも苦労しそうだが――。


「お前たち、どこから、何しに来た?」


 おっ? 


 向こうから見つけてくれたか?


「あなた、アースガルフのフラン?」


 声をかけてきた幼い少女に対し、マリヤもすぐに聞き直す。


「そうだ、フランだ。じゃあ、お前がエルフか?」


 すると相手はすぐに自分を認めて名乗った。


「そう、エルフのマリヤ。長く貸してたものがあるから返してもらいにきたの」

「ついてこい」


 それにしても本当に幼くて小さい。それなのに、俺より力こぶがあって強そうに見えるのは少女が本物のドワーフだからなんだろうか。


「おいお前! お前は何だ? 何でついてくる?」


 ……マリヤと手を繋いでいるのに、俺が見えてないのか見てないのか。


 怪しまれても困るんだが、ここはきちんと名乗っておこう。


「俺は旅の商人、トージ。ここへはマリヤの付き添いで来たんだ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ