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猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める  作者: 遥風 かずら
魔導世界

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第29話 ガルスの大森林

「――よし、これで燃料は回復……と」


 魔導宅配ボックスの代金としてアドリアナから魔導石を二個頂いたので、早速魔導車に投入して燃料不足の問題は解決した。


 あとは出発するだけなのだが、珍しくコムギさんが他の人魚たちとじゃれ合っているみたいなので、俺は彼女が落ち着くまで干し肉をかじっている。


 そんな俺の近くにはアドリアナがいるのだが。


「……そう、トージはあてもなく旅をしているのね。もしトージとやり取りしたくなったら、ボックスにお願いすればいいのかしら?」

「え? い、いやぁ、ボックスはあくまで注文商品を転送させるだけですので、話が出来るようなものでは……」

「そうかしら? トージやあの使い魔はスキルが上がるのでしょう? そのたびに色々出来るようになっているみたいだし、ボックスを通じてお話が出来ると思うのだけれど」


 取引が成立してからすぐに出発しなかったせいもあって、アドリアナとずっと話をする羽目になってしまった。 


 魔導宅配ボックスの話はおそらく可能性の話をしていたんだろうが、遠くの者と話をするなら、それこそスマートフォンのようなものがあれば可能かもしれない。


 しかし商人としてのスキルアップではどこまで出来るようになるのかは全く読めないだけに、アドリアナには期待されるような返事は出来なかった。


「ウニャ~人魚族とは話が合うニャ~」


 ……などと、ご機嫌よくコムギさんが戻ってきたところで、ようやくルゴー海底洞窟から出発する。


 魔導石を一気に二個消費した魔導車に特段の変化は見られなかったが、自動見守り運転が追加されたうえ、燃料ゲージは上限解放がされた。


 その代わり、強力すぎるライト性能は弱体されたらしい。


 意味がよく分からなかったが、


「燃料不足になる心配は薄れたニャ! だけど原因になる部分はカットされたのニャ~」

「そうなんだ」

「ニャ」


 魔導車の燃料問題は俺が訊く前にコムギさんが説明してくれた。


 コムギさんの話では、魔導車がスキルアップした直後に魔導師ルーナからその機能について伝達され、その際に魔導操作で介入するのだとか。


「魔導石が投入されるとルーナが嬉しくなるのニャ」

「そういえばそんなこと言ってたね」

「だけど、アイゼルクラスに好き勝手させないみたいニャ」

「……なるほど」


 コムギさんとの話を楽しみながら魔導車を走らせていると、あっという間に海底洞窟を抜け、密林のような大森林に出ていた。


「おっきい木ばかりニャ~」


 そういえば猫語が分からない時にコムギさんに案内され、大木の隙間を抜けて王国にたどり着いたんだよな。


 大森林を見てるだけなのに何だか懐かしい気分だ。


 魔導車は基本的に魔物がいるところを避け、大木が目の前にあっても向こうから避けるように出来ていて魔導車は影響を受けない性能になっている。初めから凄い性能だとは思っていたが、戦えない俺にとっては異世界最高の車といっていいかもしれない。


 しばらく獣道を走行したところでようやく大森林エリアを抜け、小さな集落にたどり着いた。


 おそらくここがガルスの村だと思われるが。


「コムギさん。降りようか?」

「トージだけで行ってきてニャ」

「え、どうして?」

「眠いニャ」


 村だから危険な目に遭うことは無いだろうけど、コムギさんが一緒に行かないのは寂しいものだ。


 しかし、俺よりも力を有する猫さんには目に見えない疲れがあってもおかしくはないし、魔導車の中で眠れるのであればそれが一番安全で安心なのは間違いない。


「じゃあ、行ってくるね」

「ムニャ」


 よほど眠かったのか、俺が出たと同時にコムギさんは丸くなっていた。


「こんにちは、商人さん! ガルスの村へようこそ!」


 魔導車から離れて歩き出してすぐ、集落の人から声がかかった。大森林の中に拓けた村があるのも驚きだが、小さな村だとしてもここが拠点であるのは間違いない。


「こんにちは。ガルスの森……ここが魔導師の拠点で間違いないかな?」


 俺に声をかけてきたのは少年だけだが、奥の方には多くの人が集まっている感じを受ける。


「そうだよ。ガルスさまに会いに来たの?」


 初めの頃、魔導師の拠点にはあまり魔導師が常駐しないという話を聞いていた。しかし、俺が魔導師の力を借りながら商売を始めた辺りから拠点が活発になったという話も聞くようになった。


 もしかしたら魔導師ルーナやアイゼルクラスが言っていた日本ツアーに参加した魔導師の影響が関係しているかもしれないな。

 

「魔導師ガルス様はこの奥にいるのかな?」

「うん! 呼んでこようか?」

「あぁ、大丈夫。自分で歩いて行くから大丈夫ですよ」

「わかった~!」


 魔導師の拠点はアイゼルクラスのところは規模の大きい町になっていたが、ここは小さな村。魔導師の個性によって変えているとしたら、それぞれに派閥のようなものがあるのだろうか。


 などと思いながら村の奥へたどり着くと、ひと際大きな家の前で沢山の大人と子供が大人数用の四角いテーブルを囲うようにして立っている。


 テーブルの上にいくつか物が乗っかっているようなのでそこを見てみると、またしてもどこかで見たことのある物が並んでいて思わず吹き出しそうになった。


「こんにちは。初めまして」


 村のほとんどの人が集まっていて声をかけづらいが、商売をするのに臆してなんかいられない――そう思って身を乗り出すが。


「お待ちしていましたよ、ムギヤマ・トージさん!」

「えっ?」


 声をかける前に向こうからかけられてしまった。


「魔導車で旅をする商人さんですよね? 使い魔の猫さんは一緒じゃないんすか?」

「え、はい。あの……?」

「オレですか? オレはガルス村の村長っす!」

「村長さん……!?」


 随分と若い、十代後半くらいの若者だが、悪く言えば何だかチャラそうな男性だ。


 だが、他の村人と同様に格好は民族衣装のような茶色い貫頭衣を着ている。中央の穴から頭を出して着るごくごく単純な衣服といったところだ。


「そうなんすよ。ムギヤマさんのことはガルス様から詳しく聞いてるんで、安心していいっすよ!」


 ……何が安心なのか分からないが、魔導師から聞かされることで先入観を持たれてしまうのか。


「ところで、そのテーブルの上の()()は……?」


 テーブルの上に置かれているのは、人数分以上の器だ。


「即席で食べられるものを再現したいみたいで、みんなここでずっと待っているんすよ」

「……即席」


 まさか三分とか五分とかで食べられるアレのことか?


「いやぁ~待たせたね! ようやく出来上がったよ」

「ガルス様! ムギヤマさんが来てますよ」

「おぉっ! 異国の商人さんか! なんてツイているんだ、我は! これで解決出来るぞ~!」


 この世界で即席メンを再現させようとしていたらしいが、湯気しか見えていないところを見るとメンそのものがないみたいだ。


「我は魔導師ガルス。商人ムギヤマ! 君の亜空間倉庫で即席を売ってくれ!」

「そ、即席ですか?」

「うむ!!」


 今度は日本ツアーで即席メンに魅了された魔導師なのか。

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