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猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める  作者: 遥風 かずら
魔導世界

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第24話 魔導宅配ボックス ②

「ムギヤマさん? どうでしょうか? 何なのか分かりますか?」

「そうですね……」


 どうも何も間違いなく、日本でよく見た()()()()()()()()と同等のボックスにしか見えない。


 そもそも魔導石を投じて注文したのは俺で間違いがなく、説明のしようがないんだよな。そうかといって正直に言うわけにもいかないし、どうすればいいのか。


 全体的に大きめで真っ黒いボックスを目の前にして、俺は思わず頭を抱えてしゃがみ込んでしまった。


 そんな俺を見ながら。


「ムギヤマさん。お連れの猫さんがギルドに入ってきましたけど、こちらに入れてもよろしいですか?」


 ……などと、ロードから吉報が届けられる。


 コムギさんが吉報かどうかは、あくまで俺の主観によるものに過ぎない。だが、彼女は俺が困った時に現れてくれたり助言してくれることが多いので、今回も何となくそんな予感があった。


 それこそ、困った時の招き猫のような。


「ニャ!」

「あっ、コムギさん」


 コムギさんが来てくれたのは嬉しいが、言葉が分からない状態ではどうにもなりそうもないし、どうすればいいのか。


「フー! ウー!!」


 あれ、何で急に怒って――いや、これはもしや。


「ロードさん、すみません。コムギさんの機嫌が悪いみたいでして、少しだけこのお部屋をお借りしても?」

「ええ、構いませんよ。猫さんはデリケートですからね。外では撫でさせていただきましたが、建物の中で人が沢山いる状態だと興奮状態にあるかもしれませんからね。まして、入口付近には他の猫さんたちがいましたし」


 コムギさんは普通の猫じゃないけど、でも猫に理解がある人で助かった。


「ボクはしばらく外しますので、コムギさんが落ち着きましたらお呼びください」

「すみません。ギルド長のお部屋なのに追い出すような感じで……」

「いいえ、とんでもないです」


 ……というわけで、部屋の中はコムギさんと俺だけになった。


「トージは何を困っているのニャ?」

「このボックスなんだけど~……」


 箱のことを知っているのは俺だけではあるが、魔導スキルを使っている以上はコムギさんに知らせておく必要がある。


 魔導師ルーナへの共有に繋がるので、大まかに説明してあげた。


「ふんふん……」


 猫のコムギさんにはあまり関係がない物ではあるが、彼女は親身になって頷いてくれた。


「……移動販売をする俺にとって願ってもないビジネスチャンスなんだけど、どう説明すればいいのかな?」

「迷う必要なんてないニャ! そのまま説明すればいいのニャ。トージは移動販売で王都に来てるニャ?」

「そ、そうなりますね」

「旅の途中で王都に来たついでに、魔導スキルで発注しといたボックスを営業しに来たとか適当なことを言っとけばいいニャ。簡単ニャ~」


 ううむ、俺よりも商売人……いや、商売猫さんだな。


 そういえば、


「ところでコムギさん」

「ニャ?」

「俺の護衛兼使い魔さんとして一緒にいるコムギさんって、基本的に他の人間に懐くとか撫でられるとか、それってどうなんですか?」


 魔導師ルーナの割り切った考えを参考にすると、コムギさんはあくまでビジネス猫さんであって無駄に愛嬌を振り向かせることはないという認識だった。


 それだけにロードに懐いていたのは意外だったというか。


「ニャ? 理由は簡単ニャ。他の人間に撫でさせたのは、あくまでビジネスニャ。トージの商売が上手くいくニオイがしたからニャ。そのためならなんてことはないのニャ!」


 なんというプロ猫さん。


「え、じゃあ街についてすぐに俺から離れてどこかに行くのは……」

「私とトージはビジネスパートナーだからニャ!」

「だ、だよね」


 流石、猫カフェのトップ猫さんだっただけのことはある。そこがまた魅力的ではあるんだよな。


 コムギさんの助言を元に、俺はロードを呼んで取引の話をすることにした。


「――そ、そうだったんですね。ボックスを前にムギヤマさんも動揺していたので、想定外のことが起きたとばかり」

「い、いやぁ、注文してすぐに届くとは思っていなかったものですから。設置場所も特に指定しなかったせいで、ギルド長のお部屋に届いてしまったんですよ~」

「そうでしたか!」


 物は言いようだ。


 だが、魔獣相手にミナギリンαを飲ませたきっかけで生まれた縁だ。魔導宅配ボックスを設置するに相応しい取引相手といっても間違いじゃない。


 それほど規模が大きくない王都ではあるが、ここを皮切りに取引していければ安定した収入を見込める可能性があるし、俺にとっては好都合だ。


「それで……すでに設置されている状態ですが、このまま置いていただいてもよろしいでしょうか?」


 ほぼ強制的ではあったが、ボックスも重くてそう簡単に動かせそうにないし、このまま設置してもらえれば俺にとっても初めての顧客になる。


「こちらとしましても、ムギヤマさんと取引を続けたいと願っていました。ですので、このまま置かせて頂きましょう!」

「あ、ありがとうございます!!」


 ロディアーク王都のギルド長のお墨付きをもらえたのは大きい。


「報酬は如何ほどにいたしますか?」


 そういえば肝心なことを言うのを忘れるところだった。


「その件ですが、報酬は私との直接的なやり取りではなく、魔導宅配ボックスを通すことで私に入る仕様になっています」


 ……多分そのはず。


「魔導の力はそんなことが可能なんですね! 確かに何もないところからいきなり商品が出ていたのは驚きました! その効果も計り知れないものでした」


 魔導宅配ボックスを置けば、たとえボックスが俺の目の届かない場所にあって俺が移動中だったとしても、売り上げ的なものは全て自動入金されるはずだ。


 コムギさんと話をしていた時にチラッと見たが、魔導宅配ボックスにも投入口が付いていた。それだけで判断すれば、おそらくお客様自身がお金を入れられるという意味だと思われる。


「ここに銀貨や金貨を入れれば、ムギヤマさんに届く……そういうことですか?」

「そうなりますね」


 そして一番の特徴は、異世界には絶対見られないタッチパネルのような画面がボックスに見えていることだ。


 それを操作してもらえば俺に知らせが届き、そのうえで発注をする――この流れが旅の先々で普及していけば、少なくとも収入に困ることはなくなるのではないだろうか。


 もちろん今回の設置はあくまで王都のみであって、他の土地で受け入れてもらえるかは不透明。だが、初めての相手が王都のギルド長なのは幸運としかいえない。


「……なるほど。そういうことでしたら、ムギヤマさん。今後とも、よい取引をさせていただければと思います」

「こちらこそ!」


 これもやはり招き猫さんのおかげだな。


「ウニャ~」

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