第08話:襲撃 第二日目そして会敵
本日の第二弾!
詰所の前にいた二人が弓を構えた??
え! 嫌な感じがする。……あ、いや、マズイ。これは、マズイぞ!
咄嗟にカバンから薬瓶を取り出すと、身体強化をかけた。
賊たちの合図で、人質の二人は付き飛ばされ、そのまま死に物狂いで走り出した。
っ間に合うか!
いっけーー!!
力いっぱい投げた薬瓶が、詰所の前にいた賊たちの中に飛び込んだ。
小さく、薬瓶の割れる音がする。
賊の四人は崩れ落ちるように倒れていくが一足遅かった。矢も放たれてしまった。
走っていた二人の村人も次々と倒れていく。
くそっ! 間に合わなかった!!
二人に向かって走った。
くそっ、くそっ! 失敗した!! 私だけでも突撃すべきだった!
後悔の念が渦巻くなか、倒れた二人のとこにたどり着き、二人を見ると弓矢が刺さっていたが……
一人は太ももに、もう一人は腕に……
「良かった! 死んでいない!」
「リナちゃん。勘弁してよ~。まだ死んでないよ~」
「ザークさん。足は動ける? まずは、ベッカルさんを連れて建物の影に隠れよう。矢は隠れそうな場所に行くまで我慢してくださいね」
「ああ、大丈夫だ動けるよ。なーに、矢の一本や二本ぐらい我慢するさ」
「ベッカルさんはザークさんに任せて治療の準備だね。まずは、この薬で……っ!!」
「あ? 情けねーな。村人ごときにやられたのかぁ!?」
詰所の裏に居た男が出てきてしまった。
どうやら、ザークたちを治療するのは後回しのようだ!
ザークさんに使う予定だった薬瓶をとりあえず腰のベルトに挟んで、背負っていた短槍を手に持ち替えた。
「あん? こいつらをやったのは、お前か? おいおい。村人でも酷いのにガキにやられたってのか? とことん使えねーな。まあ、良いや。使えねー奴らを始末してくれたんで、お礼をしないとなぁぁ」
男は、倒れている賊たちよりも上質の皮鎧を着て、武器は重そうな長剣だ。言葉使いは粗いが身のこなしに隙は無い。おまけにデッカイ。なんだ、この大男は!
って、マズイ。これは、マズイぞ。絶対、私より強い奴だぞ。
「ガキが! 死ねや!」
大男は、大きくて重そうな長剣を軽々と振り回した。
咄嗟にしゃがんだが、頭の上をブォーという不穏な音が通り過ぎた。
「はっ、早い!」
身体強化を発動しておいて良かった。とりあえず一撃は躱せた。
しかし、とても反撃する余裕なんてない。
長剣の斬撃を短槍で逸らせるのって難しい! 長剣は重量を活かした力重視、短槍は軽量を活かした速度重視。まともに打ち合ったら力負けして短槍が折られる!
それでも!
うぉーーっし! ガキをなめんな!!
剣を振りかぶって横払い! 地面ギリギリを這いずるように――躱す!
頭上を通り過ぎた剣が再び切り返しが来た! うぉーーっしゃがんだままの――バックステーーップ!
前蹴りを入れながら間合いを詰めて来る! 小さくサイドステップ!
おっと、回し蹴りと思わせて剣の斬り下ろし! 剣に槍先を当てて軌道を――そらっす!
こんなもん、私の体だと一発でも当たれば終わりだ。
こっちからも、細かく、そして素早い刺突を入れて動きを牽制!
ぬぉ! 上段から斜めに斬り下ろし! 体を逸らして――避ける!!
ん! マズイ。体が流れてしまった。
こっちの体制が整う前に、下段からのすくい上げ来た! 剣の軌道に槍先を沿わせて、金属音を軋ませながら――そらせる!
ふぉーーーーキツイって!
お互い致命的な当たりは無いけど、何とかしないと!
……ん? 腰に何か……あ、さっきザークさんたちに使うつもりだった『月光の雫』をベルトに差し込んでいたんだ。
「あぁーちょこまか、ちょこまかと、うっとうしーぞ!」
大男が横殴りに剣を振ったのに合わせて、大きく屈んで、奴の足に槍の柄を叩きつける。
よっし! 奴の体制が崩れた。
片手を槍から離して腰の薬瓶を……掴んでっと!
上体を伸ばすのに合わせて、薬瓶の中身を全部、大男の顔目掛けてぶっかける。
そして大きくバックステッーープ。
うぉーーっし! 薬師をなめんな!!
「てめー。何をしやがった? あーーん? ……あがっ!?」
ズサ! という音を立てて大男が倒れた。
ひゃー。一か八かだった。
『月光の雫』、これは止血剤だ。その原液を薄めずに大量使ったら、血液が過剰に固まる。
血って固まると血栓っていう血の塊が出来るんだよ。
そんな薬を大量に頭に被ったら、脳の血管に血の塊が詰まって……ってあくまでも可能性の問題。
実際に起きるかどうか、わかんかったから、本当に賭けだった。
あ、ちなみに、クマ野郎の時の反省から私は被らないようにバックステップで避けたぞ。
うん。私もちゃんと学習しているな!
「ふぁーー疲れた! 薬師のくせに、まったく、薬の用法用量を守っていない気がするぞ!?」
などと思っていると、詰所の裏からもう一人走ってくる。おまけに壊された門の外にいた連中まで
騒ぎに気が付いたのか向かってくるのが見える。
うぉーーい。お前ら反則だろう! 女の子一人を相手に三人がかりか!?
マズイ。これは、マズイぞ。何か考えないと避けるだけでは無理だ。
「おいおい。マジかよ。ふくたい――じゃなくってヤイグさんが、やられているぞ。あの人を倒せるってこのガキ、何者だ?」
いや、何者もなにも、ただの薬師だ! って心の中で叫びながら……考えるんだ、考えるんだ。
何か策は無いか……止血剤も残っているけど、これを使うとザークさんたちの治療に困るし、睡眠薬はさっき投げ込んで使ってしまった。鎮痛剤を大量にかければ、意識の混濁が発生する可能性はあるけど、複数相手に期待は薄いし、武器になるって思って毒薬も持ってきたけどザークさんたちが近くにいる状態では使えない……
うがぁーー。全然思いつかん!
何も策が思いつかないまま、短槍を構える。とにかくザークさんたちを守らないと!
賊たちも剣を構えた。三対一で戦って、ザークさんたちの護衛もしないといけない。
かぁーー! 厳しいな!!
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