第43話:身体能力検査②
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げっ、解せぬ!!
所長の言ったとおり、旗を持ち帰ったのだが、身体能力の検査として不十分だというのだ。まあ、まともに戦ったのは六人中二人だけ、それも背後からの奇襲で倒してしまったので、身体的な戦闘能力を測れないと。
いや、知らんがな!
それなら、回りくどいことをせずに、各自と模擬戦でもやらせれば良かったのでは!? などと、思ったが顔に出すわけにもいかず、もちろん口に出すことも叶わず。
うーーーーむ。解せぬ。
「よろしいわ。それでは私が相手しましょう」
「いやいやいや。アンジェ、それは駄目だ。いくら君でも、年甲斐もなく何を言っているんだ。第一、君は回復士であって戦闘員ではないって、いったい何年前から言い続けていると思っているんだ」
「何を言っているの! 私はまだ十分戦えるよ。少なくともハーマイン、あなたより強いわ。私も何度も言っているでしょう。回復士だからと言って戦えないような奴は戦場では死んでしまうのです。回復士が先に死んだら、誰が怪我人を助けるんです。だから私は強いんですよ」
「あ、あの私が戦うというのはどうでしょうか? 元々、その予定でしたし」
「お、おう。そうだよ。お前たちが戦うのが分かりやすいよな。今までの訓練生も戦ってきたんだから実力が分かりやすいだろう。良し、アンジェ。彼の状態を完璧にしてくれ」
「えぇ!? せっかく私が戦ってみようと思っていたのに、仕方がない。エリアヒール!」
アンジェリナ大尉の言葉で、あたり一帯が光に包まれた。
おぉぉ。これは、『ヒール』の広域版なのか!? シェロブの巣に捕まっていた男と、私が眠らせた三人を回復させた。
あ、そうそう、巣に好か舞っていた男が、最初の三人組で私の前方に回り込んできたが、完全にスルーした人だ。私を見失った後、慌てて追いかけてきてシェロブの糸に捕まって、そのまま保存食にされそうになったらしい。
うーーん。何て言うかな、そんな、うっかりさんと戦ってなにが分かるんだろうな。戦う前に、私の方が強いってわかってしまうんだが……偉い人には、それがわからんのですよ。
じゃあ、さっそくってことで、所長とアンジェリナ大尉の前で模擬戦をすることになった。ちなみに、最初に私が倒した二人は、酷い怪我をさせてしまったので、アンジェリナ大尉に治療して貰った後も、今日は安静という扱いになってしまった。す、すみません。
私の模擬戦相手は、教官の一人のようだが名前の紹介は無かった。
まぁ、今日のところは良いや! 何か教えてもらうことになったら、改めて聞けば良いな。
べ、別にクラウザー夫妻のやり取りを聞いて疲れたわけではないぞ。
――――
瞬殺。この言葉に尽きる。
すまんな。一応、身体能力検査と言われているんだから、手加減しては検査にならんだろう?
だから全力で仕掛けた。相手の人が剣を抜ききる前に三弾突きを入れてやった。
もちろん急所は逸らしているから殺していないぞ。
うーーん。だから、今まで戦った奴らよりも遅いんだよな。まぁ命もかけていないから、殺気も無い代わりに気迫も無い。私は先攻するのは苦手だが、この程度なら大丈夫なんだよ。
「あぁぁ。ハーマイン。相手にならなかったじゃない。だから私が……」
「良し、次! 三人で行け!!」
えぇぇぇ! なんでそうなるかな? 所長は旗を守っていた三人をけしかけて来た。
うぉーーっし! 三人とも相手になってやろうじゃないか!!
三人とも抜刀! 片手剣、左手にバックラーという小型の盾。
三人が並んで剣を振り下ろした。
斜めにバックステップで躱す。順番だよ順番。同時に相手などやってられるか! 斜め後ろに移動することで包囲させるのを防ぎ、最低一人は離れることになる。そう、一人を遊兵にするのが目的。あぁー、薬で倒したいが、駄目なんだろうなぁ。
私から一番遠くなった奴が、何とか食らいつこう私の位置に合わせて斜め前に踏み込んだ。踏み込む足さばきに合わせて、私も前に踏み込む。ただし槍を中段に構えたままだがな。出頭突きとも呼ばれるカウンターだが、バックラーで槍先を逸らされる。うむ。当然、流されることは想定済みだ。流されるままに槍先は隣の仲間に向けられる。槍先の動きに合わせて、さらに一歩踏み込んで――刺突!!
惜しいが、相手の左肩を削っただけになった。
が、そのまま勢いをつけて、相手の胸元を前蹴り! その勢いでバックステップ!
ヒュっという音と共に、横の者が剣が振り下ろしていた。
あぶないなー。バックステップが遅れたら、横から斬られてたな。
着地と同時に、しゃがみこんで、体を地面に近づけたまま槍を横払い一閃。良し、私を切ろうとした奴の足首を打ち付けた! 足首払われた奴は大きくバランスを崩す。もちろん、そんなチャンスを逃しはしない。しゃがんだ状態から起き上がる勢いを使って相手の腹部に――刺突!
本来なら喉や心臓を狙う所だが殺しては駄目だな。
よし! 一人目!
奴らの一人がバックラーを私の顔先に突き出すように突っ込んできた。ほう、体格差を利用して来たのかな。まぁ大体が、この動きをするときはわたしの視線を逸らして別の者が斬りかかるのが定石だよな。
あえてバックラーに槍先を当て、相手に向かって、足から滑り込むように地面に倒れ込む。地面に寝そべった私の上を剣が薙ぎ払うように流れていく。流れた剣は、私の顔のあたりに来ていたバックラーに当たるが、当然私は地面に倒れているから、そこには居ない。
地面に倒れたまま、槍を縦に振り下ろす動作。まぁ私も槍も寝そべっている状態だから、倒れていた槍を叩き上げることになる。私に切ろうとしていた奴の股間に――クリーンヒット!
もちろん、槍先で切り裂くなんてことはしていないぞ。それは回復魔法で修正出来るにしてもなんか、アレだから、打撃だけになるように槍先を平打ちの方向に回転させた。叩き上げられた槍に股間を強打された奴は軽く飛び上がり、そのまま体が硬直したように横に倒れた。
さぁ、最後の一人だ!
ん!? 最後の一人は、剣を捨てて両手を上げていた。
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