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第41話:適性鑑定②

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 私が魔法陣の真ん中に立つと、所長がぼそぼそと、何やらつぶやいた。おそらくそれが適性鑑定の魔法陣を起動させる条件なんだろうな。魔法陣全体が白く輝き、図形や文言が赤みを帯びたオレンジ色に光り、浮かび上がって来た。美しい。静寂の中、幻想的な光が溢れている。初めて見た陣形魔法に思わず見とれてしまい目的を忘れそうになる。


 ん! 光が文字を描き出してきた。


「防御魔法、回復魔法、土魔法。これが私の魔法適性なのか?」


 浮かび上がった文字を読み上げていった。防御魔法と回復魔法は赤色で表示され、土魔法はやや黄色っぽい色で記載されていた。土は全く想定していなかったが、この文字の黄色ってことにも意味があるのか? 


「ほう、リナ君、すばらしいね。回復魔法だよ! この要素を持つものは少ないし、赤で表示されたので無制限だよ。これは彼女以来だ」


「所長殿、この文字の色の違いは使える魔法に制限のあるか、どうかを示しているのでしょうか?」


「ああ、そうだ。赤い文字なら無制限だから何も制限が無く身に着けることが可能だ。黄色は使える魔法に制限があるという意味だ。基本的には、ほとんど使えなくって一つだけが使えると言うケースが多いがな」


「なるほどです。私の場合、土が黄色でしたが、土魔法の何が使えるのかはどうやって知ることが出来るのでしょうか?」


「ああ、それは使ってみないとわからん。初級魔法を一通り唱えてみて、全く反応しない魔法は使えないと分かるので繰り返していくことで、自分が使える魔法が何なのかを知ることができる。それにしてもリナ君は回復魔法の方は驚かないんだな。一番これに食いつくと思ったが」


「はっはっは、村に来た回復士の回復魔法を見ていた時に出来そうだなって思っていたんですよ」


 あ、あっぶなー。ヨハンさんから聞いた話では、ハンスさんは小隊長として、私が回復魔法を使えたことを司令部に報告していないはずだ。もし、報告しなかったことがバレるとハンスさんの立場がマズイから、ごまかすしかない。

 うん。これも、笑うしかないってことだな!

 いやー。紹介状に何て書いてあったんだろう。ほんと読んでおけばよかったなぁ。


「そうか? 見ただけで使えそうだなって思えるのもすごいが、素質というのは、そういう部分もあるのかもな」


 ふぃーー。ごまかせた!! 見ただけで使えそうなんて分かったら苦労しませんよ?


「あ、所長殿、先ほど所長殿のお言葉で、回復魔法が赤字なのは彼女以来とおっしゃっていましたが、その彼女と言うのはどなたでしょうか」


「それは『それはアンジェリナ・クラウザー大尉、私の事ですよ』」


 うぉっと!! びっくりした。所長の言葉を遮って、声がしたと思ったら、突然ドアが開いて中年の女性が入って来たぞ。

 だ、誰?? いや、今、自分で名乗ったかアンジェリナ大尉??


「ハーマイン、この子は回復魔法の素質があるのね。しかも赤字ですって。じゃあ私がもらうわ。基礎訓練の要否は、この後も見せてもらって、訓練が必要なら仕方がないから終わるまで待つけど、訓練が要らないようなら、そのまま実地訓練に移行しますわ。その流れで良いですね」


「アンジェ、アンジェ。君は、どうして型破りなんだ。ちゃんと基礎訓練から受けないと他の訓練生も『だまらっしゃい! そんな形式に拘るよりも、実力をつけることが優先でしょうが。せっかく回復士の素質を持っているんだから時間を無駄にしている場合じゃないのよ』」


 ん、んん! ま、またしても所長の言葉を遮って、意見を押し通したよ大尉って少佐より偉かったけ? というか、所長を名前で呼び捨てにしたよ。あれ?? 私の階級の順番が間違えているのか??? 所長が口をパクパクさせている。うん、ちょと可哀そうな気がしてきた。なぜか陸に上げられた魚を見ているような気分になってきたぞ。


「あ、ああ。リナ君、これが先ほど言っていた私が所長をやっている間に、唯一赤字の回復魔法の素質を持った回復士のアンジェリナ大尉だ。まぁ、何だ。私の妻だ」


 所長が魚から何とか進化して陸地でも息ができるようになったかと思ったら……つ、妻!?


 なるほど、だからファーストネームで呼び合うのか!

 って! それはともかく、さっき私が貰うとか何とか言ってなかったか? 貰われるのは、私の事だよな?


 何がどうなっているのか、わからないまま、クラウザー夫妻は私を連れてどこかに向かった。


 はっ!! ここは何処だ?? ぐるぐるぐると考え事をしている間に、いつの間にか外だし、なんだか木が生い茂った場所に来ているんだが!?


「リナ君、混乱させてすまんな。とりあえず身体能力を検査させてくれ。この森林の奥に広場がある。そこに旗が立っているから、それを持ち帰ってきてほしい。ただし途中で何人か君を捕える、または行動不可能にしてくる。それらを躱して、どこまでもたどり着けるかを見るのが目的だ。相手は殺さなけば武器の使用は許可する。もちろん相手も武器を使用する。死ぬ気で頑張りたまえ。内容は理解できたかね?」


「はい。大丈夫です。迫り来る者を躱して森林の奥の広場から旗を持ち帰ってきます」


「うむ。では合図を上げれたら検査開始だ」


 と言うと、所長は上空にファイアボールを打ち上げた。空で爆発し散開する。


 うぉーーっし! 持ち帰ってやろうじゃないか!!


 身体強化!


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