第22話:いざ、マグリーナ!
おもしろかったら、下の星マークも忘れずにつけてね
夜が明けると、いつもよりも早く目が覚めてしまった。
別に村を出て行ってしまうつもりではないけど、なんとなく村をもう一度見ておきたくなったんだ。店の外に出ると、誰も出歩いていない薄明かりの中、朝靄がかかった村の景色を一瞥した。そこには戦いの傷跡ともいえる焼き焦げた臭いが漂っている。この臭いをかぐと、やはり回復魔法を使えるようになっておいた方が良いと改めて思う。
何度もマグリーナに行ったことはある。それでも、今回はいつもの薬の取引とは違って、新しい期待に胸が躍る。回復士と呼ばれる回復魔法を学べる場所がある。そこを見学させてもらうのだ。
村の存亡にもよるが、ひょっとすると、私はそこで学ぶかもしれない。しかし、それもまた複雑な気分なんだ。村が無くなると私はマグリーナに出て回復魔法を学ぶことができるが、村が存続するとなると、やはり村を離れている間に村人に何かあったらと思うとマグリーナに行けない。でも村は存続してほしい。でも回復魔法も学びたい……
いや、とにかく今後、学べるようになるかわからないけど、まずは見学だ。
うん。行こう!!
――――
荷物を背負ってエルザさんたちが泊っている村長さんの家に行くと、エルザさんたちも出発の準備が出来ていたようだった。家から、村長さんとナジーラも見送りに出てきてくれた。
「みなさん、おはようございます」
「やあ、おはようございます。リナさん、マグリーナまでよろしくお願いします。あと、ハンス隊長に会って紹介状を書いてもらったから忘れないうちに渡しておくよ」
ユリアンさんが昨日言っていた紹介状だ。うん、手順ってものも大事だからな、これがあれば、すんなりと見学させてもらえるんだろう。
「ありがとうございます。ユリアンさん、助かります」
ユリアンさんは、大したことは無いって軽く手を上げてくれた。
「リナよ。村のことは一旦、忘れて、ゆっくりしておいで。お前は頑張り屋さんだから、たまには羽を伸ばすのも大事じゃぞ」
「うん、うん。そうなの。もうなんだったら、そのまま向こうで暮らして回復魔法を学んでも良いの。こっちの店は、私の方で荷物をまとめて引っ越し業者に渡すぐらい出来るの。何とでもなるからね」
「村長さん、ナジーラ、ありがとうございます。日程は一応、七日間ぐらいを想定しているけど、実際に着いてすぐに見学できるかわからないし、見学も一日だけなのか、何日か体験させてもらえるのかとか、全くわかっていないから、向こうの滞在が長くなるようなら手紙を出しますね」
いよいよ。マグリーナに向けて出発だ。
村から、マグリーナへ向かう道は決して舗装もされておらず、わずかに道かなってわかる程度の状態だ。一応、村とマグリーナへの間で月に一度程度、行商人が行き交いして商売が行われている。その行商人の馬車が通る程度で、それ以外は徒歩の往来がある程度だ。徒歩の人も月に三、四人程度じゃあないかな。私の場合、両親が生きていた頃に何度か付いて行っていた。私一人になってからは二、三か月に一度ぐらいの頻度で村で手に入らない薬の原料を購入しに行ったり、店で調合した薬を売りに行ったりで使う程度だ。
その細い道を三人で歩きながら軍人のことを教えてもらった。二人とも少尉という階級だそうだ。
普通に入隊すると、一般兵から軍曹、曹長と言った下級士官を経て昇格するようだが、士官学校を卒業して軍人になると下級士官のもう一個上の少尉からスタートとなるそうだ。エルサさんとユリアンさんはこのパターンのようだ。
ちなみにハンスさんは中尉だそうで、大きな小隊は中尉が指揮をすることが多いが、小さな小隊だと少尉が指揮することもあるそうだ。ほう。階級も色々あるんだな。小隊長といっても中尉かもしれないし、少尉かもしれないとか、うーーん。わかりにくいな。
更に、少尉から大尉までを尉官と呼ぶこともあり、少佐から大佐までを佐官とも呼ぶらしい。あーー頭がこんがらがる。
「あ、そうそう。回復士は通常の戦闘兵とは違って一番下でも准尉からスタートなんだよ。准尉と言うのは、曹長と少尉の間の階級なんだけど尉官扱いなんだけど、普通の昇格では通らない特別な階級でね回復魔法が使えるけど士官学校を出ていない時だけに割り当てられる階級なんだ。もっとも、士官学校を卒業して入隊すると少尉スタートになるのは戦闘兵と同じだけど、佐官から先はまた変わってきて、上級回復魔法が使える上級回復士になれるかどうかで少佐になれるか決まってくるんだ」
ほうほう。回復士は回復魔法が使えるという時点で戦闘兵より優遇されているんだな。
ん? 上級回復魔法が使えるかどうかで少佐になれるか決まるってことは、上級魔法が使えないといつまでたっても大尉で止まってしまい、逆にいきなり使えてしまったら少佐になれてしまうのか?? 何だか裏技みたいだなって思ってエルザさんに聞いてみたら、やっぱり、いつまでも大尉止まりになるケースは、たくさんあるらしい。でも、いきなり少佐というケースは過去に実例はないんだって、ただ、制度だけで言ったらなれるはずなんだって。
むむむ。不思議な制度だがそういうものなんだーーって思うしかないな。
あ、さらにユリアンさんから魔導士も回復士と同じなんだって教えてもらったよ。なるほど、魔法を使える者の制度ってことなんだな。
で、なんでユリアンさんが魔導士の事を言ったかというと、ユリアンさんって実は下級魔導士なんだそうだ。
「おお、ユリアンさんって攻撃魔法が使えるんですね。すごい。魔法は何種類か使えるんですか?」
「いやぁ。実は戦闘には使い物にならないんだよ。魔量が少なくって全然駄目なんだ。それで、僕は魔導士の訓練学校に行って鍛え治すことにしたんだよ。だから、暫く軍から離れて学生にもどるんだ」
少尉さんなのに、もう一度勉強するのか……なかなか勉強好きなんだなって関心していたら、そもそもユリアンさんは、普通の戦闘兵として士官学校を卒業していて、魔導士としての素質は最近開花したんだって、だからこそ、魔導士の能力を向上させたいんだそうだ。
ユリアンさんも一つの道だけではなく、他の道もちゃんと探しているのか……私も道は一つではないのかも知れないな。
「面白い!」「続き読みたい!」など思った方は、ぜひログインしてブックマーク、下の評価の5つ星をよろしくお願いします!
星マークを付けてくれたら作者のモチベーションも上がりますので、更新がんばれます。よろしくお願いします!
面白かったら、是非、他の作品も見に来てくださいね。




