第18話:襲撃 第五日目そして覚醒
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「リナさん、小隊長をお願いします! 我々が敵を食い止めます!」
う、うん。わかった。とにかくハンスさんだ。
私は、何とか建物の陰までハンスさんを引っ張っていった。
身体強化が残っていて良かったけど、もうすぐ切れるな。
エルザさんは合流したメンバーには居なかった。
うがーー何処に居るのかわからん!
どうする。エルザさんを当てもなく探している場合ではないし、他の隊員に居場所を聞きたいが交戦中で聞けない。
私か? 私がやるしかないのか?
うぉーーっし! やってやろうじゃないか、死なせてたまるか!!
ハンスさんの怪我は内臓まで損傷している。
鎮痛剤とか、止血剤とか、そんなレベルをとっくに超えている。
薬師の範疇では、完全に間に合わない。ハンスさんの命は持っても数分だ。
今すぐに回復魔法をかけないと死ぬ!
回復魔法を行うには、三つの動作が必要で魔力検知、魔力操作、魔法発動と言っていた。
エルザさんの治療を見て、詠唱は覚えているから魔法の発動は出来る。
魔力検知も、もともと出来るから大丈夫だ。
最後の一つ。
魔力操作?? んなもん出来たこと無い!
でもやるしかない。やれないとハンスさんは死ぬ。
ハンスさんの傷口の手をかざす。気持ちを鎮め、意識を集中する。
集中する。
集中する。
集中する。
集中する。
体の魔力を手に集める。
集める。
集める。
集める。
集める。
詠唱を思い浮かべる。
そして、最後に魔法発動! 「ヒーール!!」
自分の手が熱く感じる。手が光っている。
七色の光が激流となって傷口へと流れ込んでいく。
…………呆然としていた。
気が付くと光は無くなっていた。夢ではない。
はっ、マズイ、戦闘中だ。
まずは、ハンスさんの様子!
脇腹の怪我……初めから無かったかのように綺麗な状態だ。背中の重度の火傷……無くなっている。
よぉっしゃ!! 助けられたぞ!!!!
おっと、そうだ大量に失血しているから血を増やさないと。
えっっと、造血剤は……
「なんだ! 誰も死んでないのか!? 一つや二つは黒焦げ死体が出来ていると思ったんだけどな。
やっぱ、夜の遠距離攻撃は難しいな」
なんか、ぶつぶつ言いながらやってくる奴がいる。というか、こいつかさっきの攻撃魔法は。
「貴様が、フリードリッヒ小隊とかの隊長か?」
「あれ? なんでバレてるっかな? まあ良いや。ここまで引き付けたから任務として完了だしな。
じゃあ、お前らーー! お片付けの時間だ! 全制限解除だ。皆殺しにしろ!」
「ハッ!」
敵の隊長の声で、他の奴らが攻撃魔法を打ち始めやがった。
あーー。ひょっとして全員、魔導士なのか!?
ちょ、ちょっと、まずく無いか??
……って思ったが、意外と大丈夫そう。第八小隊の皆は魔法を躱しつつ斬り込んでいく。
まあ、敵の攻撃魔法も大したことは無い、牽制ぐらいにしかならないレベルのようだ。
いやー焦ったよ。
さっきみたいな強力な魔法をドッカンドッカン打たれたら勝ち目ないからな。
などと思いながらも、とにかく造血剤を飲まさなければ……
「お。お嬢ちゃん。その死にぞこないは俺が止めを刺してやろう!!」
いきなり、走り寄ってハンスさんに剣を振り下ろしてきた!
ギンッ!! 何とか短槍ではじく。
あっぶな! っていうか今、なんつったぁ!
私が治療した患者が、死にぞこないだと!!
うぉーーっし! 誰が死にぞこないか教えてやろうじゃないか!!
おっと、いっきなり突きが来た。しかも速い。顔の両サイド、喉など上段に連続して突いてくる。
くっ! 間合いを開けようとしても、足さばきも速い、すぐに詰められる。
攻撃を体術だけで避け続ける!
ジワリと槍先を下段に移して――足を斬りつけるっと見せかけて! 槍を回転させ柄で奴の肩を――打つ!!
かーーキツイな。速い、足さばきも剣の動きも、全てが速い!
うぉ。体当たり!!槍を立てて衝撃を逃がすが、突き飛ばされる。
再び突きを狙っている! 背面飛びで飛ばされながら、槍で地面を突いて、さらに後転を追加!
間合いを取った思ったが、さらに追随してくる! だったら、それに合わせて地面スレスレを――回転斬り!
惜しい、読まれた! でも間合いが取れた!
ようやく、間合いが開いたと思った瞬間。
「ファイアアロー!」
突然、炎の矢が十本ほどが超至近距離に出現した!
くぉっりゃ!! 必死で体を捩じって――避ける!
はぁ、はぁ、はぁ、っ!!
炎の矢を避けたって安心したところ、回し蹴りが来た! 間に合わん!
くぁっ!!
脇腹に直撃。体が宙を舞い、激しく地面に叩きつけられた。
くぅぅーー。肋骨二~三本折れたな。
しかし、今度こそは間合いが開いた。
肩掛けのカバンから、手探りで薬瓶を取り出す。
「おいおい。ずいぶん頑張ったじゃないか。だが、これで終わりだ! フレアランス!」
でっかい炎の槍が迫ってくる!! マジか!
何処かで、「ゲッ! 逃げろーーっ!」っという叫び声が聞こえた。
ふん。馬鹿なこと言ってんじゃないよ! 私が逃げたらーー!!
後ろのハンスさんに当たるだろうが!!!!
身体強化、二重掛け!!
絶対できる!
できる!
できる!!
「でぇぇりゃーーぁぁ!!!!」
ズドーーン!! 砦の外で火柱が上がった。
「んな!!!ば、馬鹿な、槍で上級の攻撃魔法を叩き飛ばしただと??」
そんな、間抜け面している奴に薬瓶のプレゼントだ!!
「うわ! 貴様、何をぶっかけやがった!」
……ん? 私もわからん。なんつっても手探りでつかんだ瓶だからな。
ただし、治療用ではなく武器用なのは間違いないよ。
「ごjふぉぺjmf。ふじこ」
いや、何を言っているのかわからんが……あぁぁ、崩れ落ちた。
うん。これは筋弛緩剤だったんだな。元々はバイパーという蛇型の魔物から採れる毒だよ。
このバイパーに噛まれると、筋肉に力が入らなくるんだ。例えば、足を噛まれたら、足に力は入らず
立っていることも、動くことも出来なくなる。
しかも毒が心臓に回ると、筋肉で出来ている心臓も動かなくなる。
まあ、私はこれを使って、筋肉のハリをほぐして腰痛の改善に役立てているけどな。
うん。ニータばあちゃんの腰痛に良く効く湿布薬。それの原液だ。
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