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影の存在

前回の続きです。楽しんで頂くために以下のことをご了承ください。

・一部流血表現があります

・死についての話があります

・ヴァンパイアについて独自の設定があります


ジークのことが好きなのかもしれないと思い始めた次の日、体に何かが乗っていることに気づいて隣を見るとジークがすやすやと寝息を立てていた。はぁ!?どどどどういうことよ!!!



「おっ起きなさいジーク!」


「ん?アカネ?…もう少し…」



更にぎゅっと抱きしめられていよいよ耐えられなくなった私は勢いよく起き上がりゴロゴロと転がるジークを他所に寝室に入るのを禁じたのだった。



「ってことがあったんだけどどうすればいいの?」


「だから何で毎度私に相談するんですか?」


「だって他にいないから」


「はぁ…とりあえず女性としての危機感を持ちなさい。」


「ハイ…」



最早恒例になりつつある黒瀬くんのお悩み相談室がいつもの居酒屋で開かれていた。そしてまたしてもお説教された訳だけど…



「今回のは不可抗力だよ…」


「だとしてもです。貴女は本当に危機管理がなっていませんね。もし私が家に行きたいと言ったらどうするんですか?」


「来るの?いいよ?」


「違う!!!そうじゃない!!!そこは断るところです!!!」


「あっそうなんだ」



でも来たいならいつでも来ていいのに。そんな考えがバレたのか呆れた様子でため息を吐かれた。



「私の胃が保ちませんよ…」


「あっなんかごめん…」


「謝るくらいなら今後はちゃんと気をつけなさい。」


「はーい」


「分かってませんね?」


「ごめんあんまりだって相手黒瀬くんだし」


「そういうことを男にさらっと言うのはやめなさい。馬鹿な男は期待しますよ。自分に好意を持っているのかと。」



ん〜そういうものなのか?よく分からないけど…



「でも黒瀬くんはそうじゃないでしょ?」


「はぁぁぁぁもういいです。私の負けです。」


「えぇ…この数分に何があったの?」


「それはもう色々と。ですが…そうですね。一つ頭に入れて置きなさい。魂の伴侶だからこそ強制的に惹かれている可能性があるということを。」


「そっか…分かった。ありがとう黒瀬くん」



その日の黒瀬くんは何となく兄っぽさが滲み出ていて、もしかしたら妹さんと重ねて見ているのかなと思案した。


それにしても魂の伴侶だから惹かれている可能性…か。考えたこともなかったな。ただ漠然とそういうものがあるんだなとしか思っていなかったからまさか心境にまで変化を及ぼすところまで頭が回らなかった。


だとしたら私のこのモヤモヤした気持ちは何なんだろう。答えを出せないまま私は帰路に着いた。



「ただいま」


「おかえり。今日もあの男と会っていたのか?」


「あの男…あぁ黒瀬くんね。うん相談に乗ってもらってた。」


「む…俺ではダメなのか?」



そんな子犬みたいな顔されても…本人にできるわけなくない!?ここはどうにかして切り抜けないと。



「えっと…仕事の話とかしてたからさ。大丈夫だよ何もないから。」


「貴様が何もないとないと思っていても相手がそうとは限らないだろう」


「うっそれは…あぁそうだ!きっと妹さんを重ねてるんだよ!」


「…その事なんだが。」



眉間に皺を寄せて考え込んでいた。話題ミスしたな。



「ごめん今の忘れて」


「いや…アカネの思っているようなことじゃない。実はクロセとやらの匂いを嗅いだが全然好みじゃなかったのだ。」


「えっ何の話?」


「匂いは魂レベルで似るものだ。それが意味することは、あの血統は俺の好みではなかったということだ。」


「あぁ…偏食って言ってたもんね。えってことはまさか」


「誰かが俺に濡れ衣を着せた可能性が高い。」


「じゃあ黒瀬くんの仇はあんたじゃなかったってこと?」



ジークは静かに頷いた。なら一体誰が黒瀬くんの妹さんを殺したの?顔に出ていたのかジークは言葉を続けた。



「考えたこともなかったが…もしかしたら俺には半分血の繋がった兄弟がいるのかもしれない。」


「半分?それって」


「異母兄弟だ。」


「異母兄弟…異父兄弟の可能性はないの?」


「ないな。父はヴァンパイアで母は元人間だったが魂の伴侶だったから俺は純血のヴァンパイアとして産まれた。しかし魂の伴侶ではなく、五感のいずれか三つが反応した母親の子は半純血のヴァンパイアとして産まれる。」


「じゃあジークのお父さんの血を受け継いだ誰かの仕業ってこと?」


「そういうことだ。そこでだ、アカネ。頼みがある。」


「黒瀬くんに調査依頼するの?」


「ふっ話が早くて助かる。あと血を舐めさせてくれ。そろそろ足りなくなりそうなんだ。」


「分かった」



いつものように針でプスッと刺して血を舐めさせてあげる。この時間にも慣れたと思ったけど、ジークのことを思ったらなんだか落ち着かない。



「どうした?アカネ」


「なっなんでもない」


「そうか。…すまない。」


「何が?」


「またアカネを危険に晒すかもしれないからだ。」



なんて顔してるの。まるで私が好き、みたいな。まさかね。そんな思惑を隠し、頬を撫でた。



「大丈夫だよ。ジークがいてくれるなら。」


「あぁ。必ず守る。」



その力強い言葉に私も首肯したのだった。



翌日の夜、黒瀬くんを家に呼び出し昨日話したジークの仮説を伝えると怒りを抑えられなくなってしまったようだ。



「ヴァンパイアめ。そのような不確定な仮説で私への懺悔をしようなどと、舐められたものですね!」


「舐めてなどいない。貴様、クロセと言ったな?エクソシストは基本どのようにヴァンパイアを見分ける?」


「それは…見た目と匂いですが…はっもしやその情報が似通っていた可能性があるということですか?」


「あぁ。異母兄弟なら可能性が高い。」


「それなら納得がいく…しかし貴方がやった可能性がないとは言い切れないでしょう?」



疑いの目を向けられるとジークは静かに首を横に振った。



「その可能性はない。貴様の匂いが好みじゃないからな。」


「は?」


「俺は偏食らしい。だから嗅覚と味覚が反応しない限りは食ったりせん。」


「確かに魂レベルで匂いは似るものですが…しかし…」


「戸惑うのも無理はない。協力してもらえるというのなら俺はこの力を貴様の妹のために解放しよう。」


「くっ…白月さんが信頼なさっていて、しかも魂の伴侶を見つけた個体であれば、信憑性は増しますね。分かりました。協力致します。ですが、あくまで私の妹のためですので悪しからず。」


「あぁよろしく頼む。」



そうしてジークの汚名を晴らすため、黒瀬くんの妹さんの仇を探すため協力関係が結ばれたのだった。



と言ってもやれることと言えば匂いを頼りに辿るだけなんだけど、いかんせんこれが難航した。


夜ジークと黒瀬くんの二人で捜索してるみたいだけど、進展がまるでないみたい。私にも何かできることがあればいいんだけど、それを言ったら二人に止められた。うっ危ないのは分かってたけどさ。



ある日の夜、買い物をして帰ろうとしたら近くの公園で蹲っている男性を見つけてしまった。どっどうしよう。とにかく声かけてみよう。



「あの、大丈夫ですか?」


「うっ…たす…けて…」


「とりあえず歩けますか?」



その人は小さく頷いて大人しく着いてきた。家に着いたはいいけど何食べるんだろう。うーん簡単にうどんでも出しとくか。



「はい。どうぞ。」


「これは?」


「うどんです。召し上がれ」


「………いただこう」



結構間があったけど苦手だったかな?と思ったけれど杞憂だったみたいだ。その人は水色の眼をを輝かせて無我夢中で食べていた。なんだか子供みたい。



「美味しかった」


「ふふっよかった。どうですか?家に帰れそうですか?」


「あぁ。その前にキミの名前を伺ってもいいかな?」


「私は白月暁音って言います。あんたは?」


「僕はアルト。アカネ…か。覚えておくよ。」



そう言うとアルトさんは肩に当たるくらいの青い髪を靡かせながら去っていった。…綺麗な人だったな。それになんとなくジークに似ていた気がする。まぁ気のせいか。



今夜も何の収穫もなく調査を終え、アカネの家へ戻ると何者かの魔法の痕跡を見つけた。クロアのものとも違う他のヴァンパイアのものだ。俺はクロアのみが解除方法を知っている結界を張り、眠りについた。


翌日そのことをクロセに伝えると苦い顔をしていた。



「十中八九狙いは貴方でしょうね。でなければ白月さんを介して接触を試みようとは思いませんよ。それにしてもヴァンパイアのあの強い痕跡を消せるだなんて。高度な魔法を使いますね。」


「あぁ。恐らく俺と同等くらいの力を持っているだろう。俺は今通常時よりも力が衰えている自覚がある。とはいえ相当の手練であることに違いはない。気を抜くなよ。」


「そちらこそ」



そう言葉を交わし今宵も調査を続けるのだった。



やっと、見つけた。あいつの魂の伴侶。まぁ誰にも邪魔されたくはないから匂いなどの痕跡は魔法で消しておいたけれど。


何せ僕の復讐は始まったばかりだからね。


ははっキミの大切なものは全て壊してあげるよ。ジーク。

ここまでご覧くださりありがとうございました。これからも頑張ります。

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