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お救いください

作者: 雉白書屋

 盛者必衰。とうとう訪れた滅亡の時。高台に集まった宗教家たちが祈りを捧げる。


「……イエスさまの御名によって祈ります……アーメン」


「ぷっ」


 と、おれはつい笑ってしまった。不愉快そうに顔を歪め、おれを睨むのはキリスト教の者。おれは、ふんと鼻を鳴らしてやった。この程度で怒るようでは修業が足らないぞ。それに、仕方ないじゃないか。お前たちは、あまりにも古いのだから。


「ボウボウボウボバウバウバウバウ、オオウ、オッ、オッ、オッ、サラペスタイガベスタヌヌンカヌウ……偉大なる宇宙の神よ。我らをお救いください……」


 と、今祈りを捧げたのはボブイニ教の者だ。かつて、この星に迫りくる巨大隕石を破壊し、人類を救った宇宙人が広めた宗教である。

 これにより、キリスト教を始めそれまで影響力を持っていた宗教団体は、信者たちの鞍替えにより、その力のほとんどを失ったのだ。


「ふーっ、ふっー! ふーっ! キアアアアアアアアアアイ! アイアイ! サァァァァァァァン! アイ!」


 と、今、祈りを捧げたのはジャクルカタル教の者だ。

 かつて、地球を侵略しにきた悪しき宇宙人たちの前に颯爽と立ちはだかり、成敗した宇宙人たちが広めた宗教だ。

 ちなみにボブイニ教を布教した宇宙人は侵略者を前に「こりゃ勝てぬ」と早々に逃げ出したため、その求心力を失った。


「ブラボバイイイカクノノケウライカイカイガ、と間違えた……えー、ダウダウララカアカフノムノニガフジョゴビッルピルピルヌヌヌサ!」


 今、祈りを捧げたのはスラッパ教の者だ。

 かつて、地球に住まうほぼすべての生き物に感染した凶悪なウイルスがあった。スラッパ教は、この滅亡の危機に駆け付け治療し、そしてウイルスを根絶してくれた宇宙人が広めた宗教だ。

 彼らとは科学力に差があるのだろう。ジャクルカタル教を広めた宇宙人たちはその窮地に何もできず、求心力を失ったのだ。


「えー、ゴホン……アーオーウララーウーラーウーラクララーンーンンンーハーララウンラー」


 今、祈りを捧げているのはショウラ教に属するこのおれだ。

 かつて、太陽消滅の危機に駆け付けてくれた宇宙人たちが広めた宗教である。

 

「アァァァァ! 〇〇△クアクアアアアアアァァァァ〇△ラァァ○○○!」


 と、いたのか。シ〇×▲コ教の者。人間には発音できない言葉なので、まあ、あまり人気はない。


「ジャヴァヴァヴァヴァッヴァ!」

「おほっ、おほっ、おほほほ!」

「たすけてぇ……」

「お救いくださーい!」

「騙してるつもりはなかったんだー!」


 他にも次々と祈りを捧げる宗教家たち。もはや、それが各々が信仰する神への祈りなのか、命乞いなのか区別がつかなくなってきた。

 だが、それも無理はない。この怒り狂う民衆を前にしては。

 神などという存在しないものを、あたかも存在するように見せ、心と頭の弱い者たちから搾取し続けてきた。それはずっと昔からやってきたことだし、まだいいのだが、太陽消滅の危機など嘘であったり、実はそもそも自分たちがウイルスの原因だったり、実は地球侵略ではなく、宗教戦争を持ち込んだだけであったり、巨大隕石でさえ人工的に作られたものだったりと、数々の嘘が露呈した結果、宗教は根こそぎ弾圧され、今、滅亡の危機に、あ、あ、あ、あ、ああ、神よ、我らをお救いください……。

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