トレーニング 01
「ここが俺の家だよ」
そう言って青柳がつれてきた場所、
それは100階はあるであろう超高層ビルだった。
俺は唖然としながら聞く。
「よく、こんな凄い場所一人で占領できましたね」
「いや、このビルは俺一人じゃなく他の人も住んでるよ」
「あ、そうなんですか?
じゃあ青柳さんの部屋は何階にあるんですか?」
俺のその言葉を聞いて青柳はにっと笑った。
その笑顔が春波のものと重なり俺は嫌な予感がした。
「100階だよ」
「はあ!?」
「君が100階まで辿り着いたら泊めてあげよう」
「ええ!?」
嘘だろ!?
100階までこの階段を上りきれってか?
冗談じゃない、俺はエレベーターを使うぞ。
すると青柳に先に釘を刺された。
「ちなみにエレベーターを使うのは無しだ。
もし使ったとしたら100階、階段を上る以上の辛いことが起こるぞ。
じゃあ俺は先に100階にエレベーターで行ってるから、
ちゃんと上ってこいよ」
そう言って青柳はエレベーターに乗り込み、
俺にひらひらと手を振りながらこう告げた。
「これはいいトレーニングになるぞ。
あのゲームを攻略するためにもお前は力を付けておいた方がいい」
俺はそんな青柳を見て思った。
それはあんたもだろ、と。
こうして100階もあるビルを俺は階段で上る羽目になった。
最初の内はまだ、体力も有り余っていたので楽だったが、
100階あるということが精神的にダメージを負わせ、
50階あたりで足が既に重くなってきた。
「くそ……どうして俺がこんなことを」
その時、このビルに住んでいる誰かが俺の横を
通り過ぎてエレベーターに乗った。
その様子を見ていると、どうやらエレベーターは普通に機能しているみたいだ。
本当は別に乗っても何も起こらないんじゃないか?
そういう考えが俺の頭にふと沸いた。