ホーム
春波がその言葉を告げた後、俺達は暫く無言になった。
そうして時間が経ったとき、誰かがこのビルの中に入ってきた。
「おっす、新入りさん」
俺に手をひらひらと振って入ってきたのは
20代くらいの若い男で、青い髪が異様に長かった。
「青柳、来てたのか」
どうやらこいつは春波の知り合いらしい。
何だか社会生活不適応者って感じの雰囲気だが、
こいつは誰なんだ?
春波が俺に紹介する。
「こいつは確か第51回目からこの電脳シティに入った男だ。
ここに来た私にこの世界の説明をしてくれたんだ」
青柳が笑う。
「思い出すよお。
君はここに来た瞬間急に俺を見て説明しろって叫んだんだよね。
俺は正直面倒くさかったけどしがみついて離さないから仕方なく……」
春波が口を挟む。
「まあそんな訳で仲良くしてやってくれ一ノ瀬」
なんかここには変な奴しかいないみたいだな。
そこで俺はふとあることに気付く。
51回目ってことはもう70年近くここにいるのか?
でも年はまだ若い……。
俺はその瞬間鳥肌が立った。
本当にこの世界はエンドレスなんだ。
時間も俺がここに来たときからずっと止まっているってわけか。
永遠にここにいたら永遠にゲームを続ける。
そうしていつかはここにいることすら苦になっていく。
死ねない悲しみ。
それはその苦にあるのかもな。
俺がそんなことを考えていると、
青柳が俺に話題を持ちかけてきた。
「それより君、今日どこに泊まるの?」
「え?」
「まさか、春波さんの家に泊まるのわけじゃないよねえ。
君だって結構いい年なんだし」
俺は春波を見た。
春波は怪訝な顔で俺の方を見ている。
おいこら、なんだその表情は。
すると、青柳が俺にある提案を持ちかけてきた。
「君、家に泊まらない?」
「え、いいんですか?」
「いいっていいって。
ていうか、家って言ってもここに来たときに
単に見つけた場所を家にしただけだしね。
ここは時間が進まないからいくら寝ていても大丈夫だよ」
「ありがとうございます!
今日はお言葉に甘えて泊まらせていただきます」
そう俺がお礼の言葉を言っていると、
春波はにやっと笑って黒い顔で俺を見ていた。
一体何が言いたいのか分からないけど俺は
青柳に付いていく事にした。
ちなみに春波が第一話で「どうしてここにいるの?」ってもとからこの世界の仕組みを青柳から聞いていた癖にどうして聞いたんだって思う方がいらっしゃると思いますが、最初のその発言は単にからかってるだけです。
馬鹿にしてるだけなんです。
本当はどうしてここにいるか知ってます。