エンドレス
俺は死んだ。
そう、俺は死んだのだ。
このゲームで死んだのだ。
「……きろ……!」
死んだはずなのに声が聞こえる。
おかしいな、空耳だろうか。
「起きろ!!」
あれ?確実に声が届いてくる。
いやそれどころか目の前がくっきりと見えてきた……。
目をごしごしとこする。
まるで眠っていたような感覚。
そうだ、俺は落ちる中で気絶してそのまま……。
死んでない。
あれ?死んでないぞ俺。
春波が俺の目の前ににゅっと顔を出して言う。
「ようやく目が覚めたみたいだな」
俺はすかさず春波を問い詰める。
「ど、どうして俺達あの高さから落ちて死んでないんだ!?」
春波は両手を広げて馬鹿にしたように笑った。
「あのね、ここは電脳シティなの。
現実と同じ構造ではできてない。
だからさ、落ちても死なない。
というか、ここにいる限りは死ぬことは絶対にないわ」
死なない……マジかよ。
俺は辺りを見回して自分が本当に天国にいないかを確かめる。
周りの景色は俺達が来た時と同じように
数字の壁で作られたビルが無数にたっているだけだ。
「とりあえず、身体を起こして。
ご飯でも食べに行こう」
そういって春波は俺の手を引いて近くのビルへと向かった。
そして、ビルの中に入り適当なテーブルに付いてイスに座る。
「お子様ランチ二つ」
そう春波が言うと、テーブルの上に本当にお子様ランチが出現した。
「一体どうして……」
「別に不思議じゃない。
電脳シティは全ての元素を組み合わせてあらゆる物を構成でき……」
「いや、俺が聞いてるのは一体どうしてお子様ランチなのかってことだよ」
「……だって好きなんだもん」
春波が頬を赤くしながら下を向く。
12歳にもなってお子様ランチ食ってんじゃねーよ、と
突っ込みたかったが恥ずかしそうな春波を不覚にも
可愛いと思ってしまったので止めておいた。
仕方なく目の前においてあるお子様ランチを食べながら、
俺は一番気になってることを聞いた。
「あのさ、落ちても死なないってことは、
俺達はこの世界にいる限り不死身ってこと?」
すると、春波は顔を上げてさびしそうな顔でこう言った。
「不死身じゃない。
生ける屍というのが正しいわ。
私達は勝つまでエンドレスにあのゲームを繰り返さなければならないのよ」
俺は最初その言葉の意味が分からなかった。
だから、春波を元気付けるように言った。
「死なないでいられるなら、ずっとここにいればいいだろ」
しかし、春波はまたさびしそうな顔でこう言った。
「死ねないというのが実は一番辛いのよ」