空中ロード 01
皆がざわつき出す。当たり前だ。
空中を歩くのは人間には不可能だ。
「このゲームの制限時間は30分です。
急がないと終わってしまいますよ?」
ミネがうふふと笑って俺達を見下す。
しかし、やはり他の人間達は誰も足を踏み出そうとしない。
すると、春波が俺に向かって囁いた。
「行くよ、一ノ瀬」
やっぱりこいつは物分りが悪い。且つガキだ。
ガキには空中が歩けないことも分からないのだろうか。
俺は春波に言う。
「あのな、空中を歩くのは無理なんだよ。
だからこんなゲーム最初からクリアなんて……」
春波が言葉を遮って俺をじろっと見る。
「無理なのか?
本当に無理なのか?
無理なゲームをわざわざやらせるのか?」
俺は一瞬動揺する。
一理はある。
確かに無理なゲームをわざわざやらせる意味はない。
だとしたらどこかにこのゲームを攻略するヒントがある筈だ。
このゲーム、空中ロードを攻略する方法が……。
その時、俺の中で何かが引っかかった。
空中ロード?ロードっておかしくないか?
まるでここからあそこまでに道があるかのような……。
俺は春波を見た。
春波は地面の砂を手にとって風の動きを読んでいる。
「なんで風の動きを読んでるんだ?」
春波はぼそっと呟く。
「なんとなく」
聞いた俺が馬鹿だったみたいだ。
しかし、俺はそれを見てこのゲームの意味を理解した。
そう、空中ロードってことはやっぱり道があるんだ。
でなければこの空間に風を吹かせる必要はない。
道を歩かなければ風で落ちることもないからだ。
つまり、どこかに見えない道がある。
しかし、それは目には見えない。
いや、よく考えろ。
目に見えないなら見えるようにすればいいじゃないか。
俺は春波の持っている砂を奪って向こう側へと向かう淵に立った。
そしてしゃがみ込んで、砂を落とした。
その時だった。
砂はそのまま下の黒い空間に落ちずに、途中でとどまった。
そう、やはり見えない道は存在していたのだ。
俺が試しに足でその場所を踏んでみると、やはり道はあった。
しかし、その瞬間あることに気付いた。
砂は、風に吹かれてすぐ消えてしまう。
ということは道が見えるのはほんの数秒だけってことだ。
春波は笑った。
「なかなか難易度が高いみたいね」