トレーニング 05
「さあ、どうした。
そろそろ上ってこないと力尽きて落ちるぞ」
青柳の言葉を耳で受け流しながら俺は体勢を整える。
そして、俺はロープを左右に揺らし始めた。
青柳と春波がそんな俺を見て笑う。
「何してるんだお前?」
「いいから黙ってみてろ」
俺の剣幕に圧倒されたのか、春波たちは黙る。
チャンスは一度、もしこれに失敗したら命は無い。
けれど、もし成功したら俺は確実に100階へと上りきれる。
息を大きく吸い込む。
揺らしたロープの振り幅が最大限に達する。
そして、俺はロープから手を離した。
俺は振られた勢いで高く飛び上がる。
宙を舞う俺の身体。しかし、それは100階の高さまで届かない。
「そこから飛んで100階までこれると思ったのか?
甘い。甘すぎる。それくらいの勢いじゃ到底ここまで届かない……」
しかし、次の瞬間青柳に初めて焦りが見えた。
それもその筈。俺は振られて宙に舞い、
そしてそのまま壁を蹴ったからだ。
「お前、まさか……!!」
青柳のセリフが聞こえた時、俺は壁を蹴って
そのまま反対側の壁へとまた跳んだ。
そして連続でまたその壁を蹴りまた反対側の壁に戻る。
その時、俺の前に遂に青柳と春波の顔が見えた。
「見たか!!」
最後の壁を蹴る途中勝利を確信した俺は、そう叫んだ。
しかし、瞬間、思わぬアクシデントが起きた。
脚を捻った―――。
最後の最後で遂にいけると思ったのに。
脚を捻ったせいでこの跳躍では向こう側には届かない。
でも、届かせるにはどうするか。
その方法は一つしかなかった。
そう、残されていたのはもうほとんど使い物にならないこの腕で
100階の淵に捕まるという方法だけだった。
「限界を超えてみろ」
俺を見て春波が呟いた。
その時思った。
あ、やっぱりこいつら裏切ってなかったって。
限界を超えてみろなんて裏切ってたら言わない。
なんだなんだ俺の思い過ごしだったのかって。
でも、今更それに気付いたところでどうにもならない。
俺はもう飛んでしまった。今から戻ることはできない。
ここから落ちたら青柳の言ったとおり100階から落ちる痛みを味わうことになる。
俺は思いっきり手を伸ばした。
そして、100階の淵に捕まった。
しかし、それはたった一瞬だけだった。
その直後腕がビキビキという音を立てすぐに手が離れてしまった。
ああ、もう駄目なのか。
そう思った刹那、急に足に異変が起こった。