トレーニング 03
ロープで100階までの高さを上る?
「無理だ……無理に決まってる」
俺がそう呟くと青柳はすかさず口を挟んだ。
「だから、俺はエレベーターに乗るなといったんだよ。
それでも乗ったお前が悪いんだ。
最後までしっかり上りきることだな」
正論だ。青柳の言っていることは確かに正論だ。
でもだからこそムカつく。
何もいえなくなった俺は仕方なく
青柳を睨み付けながら上る準備をした。
「あ、一ついっておくけど、ここの世界では
怪我をしてもすぐに治るから落ちて死ぬ心配はないよ。
まあ、落ちた瞬間は同じ痛みがあるけどね」
死ななくても同じ痛みを味わうって、
そっちの方が逆につらいような気がするんだが……。
遥か上に青柳が立っている。
俺は絶対上った後青柳を殴るということを
モチベーションにしてロープを上り始めた。
脚はもう大分使い物にならない。
でも、ロープを上るには腕を使うのも可能だ。
俺にはスポーツで鍛えた自慢の腕力がある。
それならきっと最後まで上ることは可能だ……。
そう思っていた。
しかし、暫く上っていてから異変が起き始めた。
「痛い……」
そう、ロープを上るためには様々な力が必要だ。
特に握力。これが相当無いとロープをうっかり
離して地上に真っ逆さまなんてことになりかねない。
しかし、俺の手が大分赤くなってきている。
結構これはやばい状態かもしれない。
仕方なく、俺は片手でロープを掴みながら
片手を休めることにした。
するとその瞬間急に掴んでいた手が滑り、
俺はその瞬間ロープから落ちそうになった。
「うわっ!!」
慌てて両方の手でロープを掴んだ。
「大丈夫かー?」
青柳が俺を見下しながら言う。
クソ……一瞬たりとも油断ができない。
このロープ上り、一見単純に見えて色んな能力が必要みたいだ。
「っしゃあああああ!!」
俺は今一度気迫を入れ直して、またロープを上り始めた。