道場の秘密
98話 道場の秘密
「素晴らしいですな、スー・チーアル殿、その武術を我が道場に伝授いただけませんか」
「いや、世話になってる道場なのでお見せしましたが……まだ、未完成なのでコレは人に伝授できる技では」
「では、完成しているところまでを」
「難しいな……やはり未完成の技など教えるわけには」
「さようですか……。ご披露かたじけない。次は……」
「はい、土泥流バオユイ殿です」
以外にあっさりあきらめたな。
まあ教える気は、ねえんだが。
土泥流バオユイとは、どんな技を使うのか、見たいものだ。
あのボロ雑巾のような男。
入口で立って見てると。
「すみません、他流の方の見学は出来ません」
「そうなのか、ソレはすまん」
きびしいな。他流の技は見れないのか、武道大会だって、予選では万人に見せるぞ。
ここの門派は、そんなに秘密主義なのか。闘った相手は平凡な突きや蹴りしか見せてなかった。かまえもどこにでもある型だった。
女を、男を……性交を絶つ拳法など聞いたこともないが、ここの師範の我流か?
仕方がないもどるが。
「あ、そこの門弟のあんた」
「私ですか?」
「すまんが、夕飯時に酒を頼めるか」
「すみません、今日のとこはお酒が……。町に居酒屋がありますそこで」
「そうか、その店を教えてくれ。買ってくる」
町の路地の居酒屋。
「女将、ここの酒は強いなぁ……」
「ハハハハハッその酒の名前はね『虎殺し』ってねぇ虎も呑んだら、ちどり足でよたよたに」
「そうか、ちょっとようをたしてくるカワヤはどこかね?」
「坊さん、入口から右の奥に入ったトコだ……。ちゃんと動けるかい」
「おっとと……。大丈夫だ、女将……」
「大丈夫じゃないね、そっちは逆だよ……」
「こっちか……」
ここを曲がってまっすぐとな。ありゃあれがカワヤか。
「女将? 人が居るな先客かなぁ」
「坊さん、この店はな、こいつでカネを払うんだよ!」
カワヤの男が殴りかかってきた。
「グギャ!」
「あの坊さんもたいしたことないねぇ。ボロ、終わったら裏口から捨ててしまい。殺しちゃダメだよ裏口が汚れるから」
「女将、裏口は何処だ。こいつは気絶してるだけだ」
「あ〜あ、坊さん。無事なの……おい、ドン、ダドン! やっちまいな!」
おや、新手か。
おっと、なんの、腕が上がりすぎだ!
「ウガァ……」
「おい、突きがあまいな」
ほれ、蹴りとはこうやる。
バキッ
「おかみ、すまねぇうっ……」
「おい、あんた。そんなトコで倒れたら他の客が店に入れないじゃないかうぃ〜」
「坊さん、あんた、そりゃまさかの……酔拳ではないか?!」
居酒屋へ来てみれば店内で格闘。
あの町長の道場の広間にいた坊さんではないか。
「ほう、コレは酔拳に見えるかな? マネごとでやってみたうぃ〜」
「マネごとで……あんた、マジに酔ってないか?」
「まあ少しな、ここの『虎殺し』とか言う強い酒飲まされてな…。女将、小便行きそこねたから行ってくる」
「お客さん、あんた。あの坊さんと知り合いかい?」
「まあ顔見知り程度だが。酒をくれ、安いのでいい。、このひょうたんに入れてくれ」
「女将、カワヤを汚してしまった。あの用心棒かなんかに掃除させといてくれ。ちょっと動いたら酔が冷めた……」
「あんた強いね、そこでお願いがあるんだよ!」
「すまん、用心棒を倒しちまったが、代わりはやらん。先を急ぐ……まぁそんなに急いでもないが」
「いや、用心棒じゃないよ、私の助っ人になって欲しいんだ」
「助っ人?」
「ああ、仇討ちのね。私は町長に兄ど弟を殺されてね、ここで強い助っ人が現れるまで待ってたんだ。私一人ではかなわない、しかも大勢の門弟がいる……」
「そこの用心棒じゃダメだったのか?」
「私はもともと武術家の娘だ。見ればわかる。こいつらじゃ返り討ちだ。 ハイよ、にいさん。酒代は、あんたの知り合いの坊さん次第だ」
「はあ? なんだソレは女将? オレとこの坊さんはちょっと前にあったばかりだ。なんでそうなる。酒代は払うよ」
「女将、その仕事は彼にやってもらったらどうだ。その男は、なかなか腕がたつ。あの老いぼれ程度なら、勝てるだろ」
「なんだ、その話は坊さん。オレに安酒ひょうたん一杯分で助っ人をやれってか、ありゃなかなかの武術家だそんなもんで出来るかよ」
「あんたも、あの道場の客だね……いや、カモかしらね」
「カモ?」
「そうだよ、あの道場はね他から来る武術家の技を盗んでいるのさ。あんた、技を見せたのかい」
「ああ、伝授してくれと言われたが、断った」
「そうかい、見せちまったのかい。もう手遅れだね。あの町長はね、見た技を瞬に記憶できるという能力があるんだよ。で、断ったあんたはその晩に殺される仕組みだ。伝授してもしばらく命が長びるが、この町を出る前に殺される……。あの男が町長になってからは、ここから出た武術家はいないんだよ」
「そんなコトをして何になる。人の技を盗んで強くなっても、こんなトコに居たら宝の持ちぐされだろ」
「女将、もしかしたらアヤツ、門弟を軍に売ってないか。あそこの門弟は妙に皆真面目だ」
「人身売買か、坊さん?!」
つづく




