強さの町
97話 強さの町
あの人は、どんな技を使うんだろ。
見てこようと、道場へ行くと入口で。
「すみません、個人の技なので見学は出来ません」
「え、どういうコト?」
「技を見せるのは、個人の危機にもなります。で、教えを願えれば我が道場の門弟にもと……」
「それは、ここの宿代にも含まれてるのかな?」
師匠、いつの間に。
「それは、ご自由に解釈してください」
「まあ、ソレはいいとして。この町は娼館は本当にないのかな。私はココの門弟でも、なんでもないのだから女絶ちは、しなくてもよかろう」
「ありません……が、居酒屋の方に少々女娼が……」
「あんたは、正直だなぁ。名は?」
「コンチィといいます。レイ・コンチィと」
「そうか、イイ名だ。良かったら弟子になりなさい」
珍しい師匠が、弟子入りを進めるとは。
「うあっ!」
「うぐっ!」
「ほあぁつ!」
「げっ!」
「ほう、あのにいさん派手にやってるな」
声だけは聞こえる。
「アロン、町に出よう」
「し、師匠。知ってるでしよ。ボクが呑めないの」
「ああ、だがコレからは少しずつ呑みなさい。そうしないとチャオの酔拳は教われんぞ」
「師匠。おことばですが、酔拳は酔ったフリで敵をあざむく拳ですよね、本当に酔っていたらヤラレちゃいます。酔えば酔うほど強くなるなんて伝説と聞きました。だから呑めなくても……」
「あら、こんなトコでナニしてんのアロン、師匠。わたしたち買い物に……ああ、門弟のおにいさん。雑貨屋みたいのは、あるわよね」
「はい、中央通りを右に曲がった所に。あの女性一人で?」
「ニュウも行く!」
「あたしも」
「師匠、ボクはリァンたちと」
「そうか、悪いが少し……」
「はい、師匠。無駄使いしないで下さいよ……」
ボクらは中央通りへ。
師匠は、途中まで一緒で、路地に入った。
「雑貨屋はここね」
「こんにちは~」
「いらっしゃい……」
無愛想な爺さんが一人。
「女の衣服とか、下着はあるかしら?」
「あ〜女のはね、そこの奥に……かぁちゃん!」
奥から爺さんの奥さんらしい痩せた中年女性が。
「珍しい女の客だ、相手してくれ」
「あんたら旅行者かい? 武者修行の武術家には見えないが……ああ、あんたは別だ双剣のお人」
「ボクは武術家のはしくれみたいのだ。師匠について来た」
「わたしは、彼の姉弟子よ」
「その子はあんたらの娘かい」
「娘だ!」
「違うよニュウ……あ、まあそーゆーコトになってる」
「わけありじゃな……まあ、この町に来る人間は皆、ワケ有りだ……。珍しくもない。なぁニイアン」
「たいした武術家じゃないなら、長居は無用だよ。ここは地獄みたいな町だから」
「おばさん、大げさだね。地獄ってあんたたちは地獄に住んでるの?」
「ええ!」
うわぁ、おばさんは棚の剣を取りリァンに。
「危ないじゃない!」
「リァン、どけっあたしが」
カキン
カキン
カキン
「小娘、中々やるね。あんた!」
奥さんが剣を爺さんに投げた。
それを取った爺さんの動きが早い。
が、リーさんも、二枚目の剣をぬき双剣技に。
カキン
ザッ
カキン
ズッ
「おう、見事な腕だな小娘……」
「私ら二人を……負けたわ。何でも好きなだけ持って行くがイイ」
ホントに、強さの町なんだココは。
じゃ師匠なら、カネいらずだ。
路地中の居酒屋。
「おや、あんた坊さんだろ。飲酒はいいのかい?」
「女将、居酒屋なら知っておろう。酒は百薬の長と」
「まあ確かに……」
「ソレに女も百薬の長だと……女は女将だけか? 私はもう少し痩せた女が好みなんだが」
「まあ、私じゃ……。お客さん、この町じゃ商売は難しいのよ。特に商売女は」
女将が礫の様に酒椀を投げた。
かわすのは簡単だ。
連続できた、が同じ事。
「ほう、いいね。あんた。 こんなの避けられなかったら、あの道場で死んでるよね。あそこから来たんだろ」
「あそこは、そんなに物騒なとこか女将」
「ああ、生きてこの町から出れるのは一握りだよ」
つづく




