荒野の歌姫と鎧ネズミ
94話 荒野の歌姫と鎧ネズミ
切り裂かれたテントの布から剣を持ったヒゲ男が現れ、前に座っていたローラさんの首に剣をあて。
「楽しいお茶どきを邪魔して悪いな、女の命を助けたかったら有り金全部出しな」
テントの裏側から数人の男が出てきた。
野盗か。まあ、それ以外ではないのがわかる。
「おい、坊主。おめぇが持ってそうだな」
「いや、財布は持たない主義でな。弟子に持たせてる」
「弟子……そこの小僧、おまえが弟子か、ウヒャハハ、誰だ俺の背を」
男が後ろを向いた瞬間、何かが首に巻き付いた。
ローラさんは、楽器で男のアゴを突くと、こちら側へ転がり離れ。
「うぎゃ!」
野盗たちが、豚に突き飛ばされた。
その一瞬の皆の行動が早かった。
ブタと反対側の野盗をボクが手刀で。同じくチャオも。
「ナニよ、あたしの分も残しておいてよ」
「まだ、一人立ってるぞリー殿」
それは背後からあの鎧ネズミの長い舌で首を絞めらてる男。
「おい、あんたが頭か。剣を捨てな」
「ウググ……」
男は剣を手から離した。
「あ……ローラさんだっけ、この舌を」
「ジロー、はなしなさい」
舌が首からはなれ鎧ネズミの口の中に。
その途端、男が剣を拾おうとしゃがんだら。
舌がまた、飛び出し首に。
そして、男の体ごと引き寄せた。
鎧ネズミは前まで寄せて両前足を肩に乗せた。
「ひいっ。重い、助けてくれ!」
「おっさん、誰に言ってんのよ」
リーさんが近くまで行くと落とした男の剣を拾い。顔の前まで来て。剣を頬にペタペタしながら。
「あんた、女の顔に剣を当ててたね。ローラさん、キズは?」
「大丈夫、無いわ」
「良かったな、あんた。女の顔にキズ付けてたら、あんたの顔にも付けてやるつもりだったんだけどね」
と、リーさんは座り込んだ男の股間に剣を刺した。
「ヒイッ」
「安心しなよ、土に刺しただけだから。あ~あ、お漏らしした」
「お願いだ、このバケモノどかしてくれ! グワァアアッやめろ!」
「あ~ジローくんの前足の爪が肩にくい込む……」
「ジローはバケモノって言われるの嫌いなの。また言ったら、あなた押しツブされるわよ」
「ゴメンなさ〜い。助けて〜」
「おい、おまえらの頭は情けないなぁ」
「頭は馬以外の生き物が苦手で……」
「坊さん、こいつらどうする?」
「武器を置いて、お帰り願おうか」
「お前ら、コレにこりたら野盗から足洗え!」
素手でも襲って、こられるのも面倒なんで皆手首を縛り開放した。
「運が悪けりゃ他の野盗にやられるかもね!」
「そうだな。ニュウ」
切られた布をよく見ると丈夫そうな布だ。
「コレ、ボクの持つ針は入るかな……」
「とりあえず接着布で貼り付けますから、向こうに帰ったら新しいのを買うから大丈夫です」
「あの鎧ネズミは頼りになりますね」
「ええ、いい相棒です。何度も命を助けられました」
ちょっと怖いが近くまで行って頭をなでた。
「お前は利口だなぁ まえに荒れ地で鎧ネズミを見たけど、こんなにデカくなるヤツもいるんだなぁ」
「まれよ。はじめは普通の大きさだったわ」
「アロン、あたいのブタもホメてやってくれ」
「そうだな。ブタ、ありがとなっ!」
「ブタ? 名前はないの」
「食べるときににね、気がねになるから付けないのさ名前。あいつは緊急時の食料なんだ」
「そうなの……」
「また、盗賊が現れる前に出かけるかアロン」
「そうですね、私はコレから北方の国へ行きます。また、縁があったら」
「さようなら〜」
「なんか、デレデレしてなかった。アロン」
「デレデレなんて、ただ綺麗な人だなぁとは」
「リァンファ、美しい人を見ると人は皆、幸せなのだ」
「男だけじゃないんですか? 師匠」
「そんなコトはない、ホラ」
「ローラさんって、声はキレイだし見た目もキレイだし、欠点あるのかなぁ。でも、あんな女に生まれたら人生変わっただろうなぁ」
「わかるわぁあたしなら地上最強の美人剣士目指すわ」
「あたい、あの鎧ネズミ欲しかった。ブタと交換は、してくれないよなぁ」
「まいったなぁ。あの野盗に馬を放せれちゃって、徒歩だよ。日暮れまでに町に着くかなぁ」
「豚車があって良かった」
「ニュウ、歩くの疲れた!」
「わかった、肩車だろ」
「アロン、マンケーみたいに大きいと見晴らしいい!」
「贅沢を言うなぁ、ニュウは……」
「どうも、あの山を超えないと目的のグァイビへは行けそうもないな」
「地図に山なんかなかった」
「盗賊のいい加減な地図だもの」
「荒れ地に野盗、山には山賊が居そうだ!」
「定番だ、ニュウ。また出るかなぁ」
「出るねきっとチヤオ」
「リーよ、賭けないか? あたいは出ない方に」
「ウーサイ、カネ持ってるのかよぉ」
「アロンの遺体を買うと……。そのカネしかないが」
ふところを探してたリーさんが。
「ダメだ、町に行ったら何かで稼ぐ」
「それじゃ意味ないだろう」
「負けたらの話だ」
「リー、負けたときのこと考えるなら賭けはやめた方がイイ」
「なんか覚めてるなウーサイ」
「気晴らしで言ったんだ。ホントは賭けとか、そんなに興味ない」
山道も中腹まで行くと。
「あらら、現れた山賊」
「チェッ、賭けとけば良かった」
「ねぇ~なんだかあの山賊、小さくないかアロン!」
つづく




