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間者家族

91話 間者家族


「ご家族での旅ですか? なら、いい部屋が」


 あれ、仮面が一瞬で違う笑顔に変わった。


「わるいが、あまり持ち合せがないもんで。安い部屋でいいんだ」


「では、ご予算にあわせた部屋で」


 今度は困り顔に。


「アロン。アレは変面よ、遊天楼にも来たことがあったわ。奇術の一種よ」


「お~いチンライ。コチラの客はビンの間だ」


「ビンって、ビンボウのビンかしら」

「まあそうだから仕方ないけど……あからさまだな」

「アロン、ビンボーってなんだ!」

「お金を持ってないというコトだ」

「そうか、ニュウはビンボーだ!」

「こらこら、貧乏とか大きな声で言うな」


 大きな耳で尻尾のある、亜人の少年が来て。


「お客さん、ビンの間はコチラです。馬は納屋へわたしが」


「お客さん、その馬を売ってくれませんか? そうすればもっと良い部屋を」


「荒れ地が多い県だからな。馬がないと不便で……じゃ一頭なら、どうだ。少しは変わるか?」


「ほい、さようで。どちらの馬を? ボクの方だ」

「あら、わたしのでも」

「キミのは、まだ若くて元気がある」


「わかりました……馬の値で宿代は」


「ねぇあとでチャオに怒られない……」

「野盗からうばった馬だから問題ないさ」


「おい、チンライ。お客さんはレンの間だ」


「お」


「返事はハイだ!」


「あ、ハイ」


 はじめは、裏の方に行かされそうになったが反対側の通路を。

 馬一頭で大分違うようだ。


 裏に見えたのは納屋と変わらない小屋だった。

 まあ仕方ないだろうけど、極端に客分けする宿だな。


 案内された部屋は寝台もないただの部屋。

 何も無い。


「ゴロ寝しろってこと。向こうの宿の部屋の寝台とは雲泥の差ね」


 しかし、何にもない部屋だな。


「アロン、お腹すいた!」

「あっちに居た方が良かっただろ。優しい女将も居て……」


 食事はどうなるんだ。


 しばらくすると。あの亜人が来て。


「お客さん、食事は?」


 これからかい?


「それは食べるさ」

「別料金ですけど」


「かまわないよ、何か食べたい。子供も腹をすかしてる」


「はい、ではお持ちしますが、上中下ありますが?」

「食えれば、安いのでいい!」


 すると、持ってきたのはイモと鍋。


「裏庭で煮て下さい。水は鍋に入ってますから」


「なに、この宿は貧乏人には料理もしてくれないの!」


「安いので良いと言われましたので」


「まあ言ったが、イモが二つだ。三人いるんだぞ」

「そちらも別料金ですけど……。あのこのイモを特別料金でお分けします半額で。でも今すぐにおカネを」


「あなた、小遣い稼ぎ?」


「まあそんなとこです。わたしは奴隷の身。給金とか出ないので、こうやって……」


「そうなのね……じゃいくら。え……。イモ一つの。コレ半額よね、そんなに。ボッタクリもいいとこよ」


「非道いなこの宿は、コレでよく客が来るな」


「町の入口から近いせいもあり、たいがいの旅人はココを先に見つけて……。中には夜中に逃げ出す客も」


「そうなのか……」


「捕まれば身ぐるみはがされ、奴隷商人に売られます」


「それは非道いわね、でもココに来る旅人とかは武者修行の人間が多いんじゃない貧乏でも腕ききの客も」


「たまに居ますね。そういう人を用心棒として雇ったりしてます」


 なんだか、この亜人の少年ならこの宿の悪事を教えてくれそうだ。


「でも、強い旅人が、皆がみんな用心棒にはならないだろう」


「そういうときは、ごちそうするからと、だまし料理に毒を入れて……」


 毒を。あっちの宿の料理人は毒殺されたと。


「いろいろありがとう。コレ取っといて」


「え、こんなに。なぜ? あなたたちは……」


「あなたも黙ってて、イモのコトとかバレたらまずいんでしょ」


「はあ……」


「悪いことにはならないわ」


「アロン、イモかたい!」

「あら、生じゃダメよニュウ。火をおこせる? 外で煮てきましょ……きっと火種代も取るわよココは」


 たいして腹のたしにはならなかったけど。イモを食い。

 一眠りしたら。



「アロン、お腹すいた。あんな小さなイモ一つじゃたりない!」

「ふわぁ……わかったニュウ……。このカネ持ってあの亜人の少年に馬を出してもらって向こうの宿へ帰れば、何か食えるだろ」


 と、危険なのでニュウを。


「アロン、わたしたちふたりきりに……。変なコトしないでよ。アロンは……」


「ナニ言ってんのリァン。外に出るよ」


 こっそりではなく、堂々と門前に。

 ニュウ逃げやすくするためだ。


「おーい、この宿はどうなってんだ! 寝台もないのはいいが毛布一つない、ココは監獄か! いや、監獄の方がまだマシだ。カネ払ってんだぞ。ボクらは出ていく!」


「ナニを言ってるんですお客さん。宿としてはお客様にあったご予算で……」 


 あの変面の男が笑った顔で。


「それは、わかるが安い宿は沢山泊まったが、ココは最低の宿だ。荒れ地で野宿した方がマシだ!」


「ああぁお客人、出てくのは、いいが払うもん払って行ってくれよな」


 出てきたのは宿の前で爆竹鳴らしてたチンピラだ。

 あの手首を落とされた男が。


「いくらだ払う」


 と、適当な額を投げ払った。


 小斧を腰に二本さした男が拾うと。


「足んねぇな」


「宿代は馬で、あの粗末な食代ならおつりがきてもいい額だ」


「お客さん、宿をバカにした料金もだ。そうだな、兄ちゃん。どのくらいもらう?」


「その倍かな……」


 腕を落とされた男だ。こいつら兄弟か。


「そんなカネない!」


「なら、体で払ってもらおうか。小僧は奴隷商人に。女は娼館に売れるからな」


 なるほど、これか。


 で、次は毒殺かな。


「あきれてものが言えないわ! 売れるものなら売ってご覧!」


 リァンがボクの手をとった。

 ウーサイが教えてくれた夫婦拳法のおひろめだ。


              つづく

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