町の名はナボン
89話 町の名はナボン
「え、誰が痛い目だけじゃすまないって、スケベオヤジ。あんたらの誰ひとり、あたいに触れられなかったじゃないの」
チャオが、男たち6人をのしてしまった。
きたない口のモウとかいう男をわざと気を失わないように攻め、いたぶってる。
こーいうのが好きだなウチの女たちは。
「貴様ら全員素っ裸にして、逆さ吊りにしてやってもいいんだぞ」
「やめろよチャオ。そんな汚い物、誰も見たくないわよ!」
「おい、偉そうに上の方で見学してた門番! おまえも降りて来て、このゲスヤローと土下座しろ!」
なにもそこまで。
門番の話では県境近くに町があると。県境のわりに栄えた町で店の種類も豊富で、宿は町の端と端に二軒有るそうだが、二軒というのが嫌な予感が。
町の名はナボン。
着いたのは、もう日が沈んだ頃だが町の店の灯りで、暗くはなかった。
辺境の町らしく人種が違う人も多い。
「リー、あの黒い肌の男とか見たことある?」
「ないけど聞いたことは有る。南方の国へ行くとああいった人間が多いとか」
「歩いてるだけで、むき出しの腕や脚の筋肉がスゴイのがわかる。華中では見ない体だ」
「ああ、門の連中とはケタ違いだが、所詮人間。あたいのブタにも勝てんだろうよ」
「あの男がブタにってウーサイ」
「ウーちゃんのブタ、強いよね!」
「ニュウは、よくわかってる」
「さて、右を通りの宿と左を通りの宿、どちらへ泊まろうか。アロン、良さそうなのはどっちか見てきてくれぬか」
「はい、師匠!」
「アロン、馬を貸すよ」
「いらない!」
「ニュウも行く!」
じゃと、降ろしかけたニュウをまた、肩に乗せ走った。
右端の宿は立派な西方作りでラン・ミーレンの家に似ている。
経営も向こうの人かな。言葉は通じるのか?
西方の人間らしい老人が宿から出てきた。
「すみません、言葉わかります?」
「わかるよ、ボーイ」
「ボーイ? あの、そこの宿の方ですか?」
「いや、私は葬儀屋だ。ここに先日不幸があったからね」
葬儀屋か、あまり縁がない方がいい人だ。
が、東へ行ったときは世話になった。
「宿にようかな? なら女将が中に」
と、聞いて西方風の扉を開けて入ると、天井から小さなランプがいくつも付いた灯りで明るい。
「いらっしゃいぼーや」
太った笑顔のおばさんだ。
町が町だけに怖そうな女将を想像してた。
服も西方風の服で腰のあたりでふくらんでる。スカートとかいうのを履いている。
目の色は青いが髪の色は黒だ。
「私がそんなに珍しいかい。そんなに見つめられたら、としがいもなくテレるじゃないかハンサムボーイ」
「ハンサムボーイ?……あ、すみません。部屋は空いてますか?」
「あんたたち二人かい」
「いえ、あと男ひとりと女が三人。あと、大きなブタ一頭。出来れば男女別の部屋が」
「あんたたち今日、この町に?」
「はい、まだ着いたばかりで宿を……」
「そうかい、じゃ知らないね。夜は少しうるさくてもいいなら部屋は空いてるよ」
「夜がうるさい?」
「ああ、向こうの端の奴らが嫌がらせに来るからね」
やはり、二軒の宿だとそーいう問題もあるだろうと。ここはタイホーだからな。
でも、人の良さそうな女将だし。向こうは見る必要はないな。
「じゃお願いします。連れを呼んできますから」
「いいのかい?」
外に出るとニュウが。
「アロン、向こうは見なくていいのか?」
「ああ、たとへいい部屋、安い泊り賃でも嫌がらせをするような宿は、ろくな宿じゃない。人間がね」
「わかる、それにあのオバさん良い人だ!」
「ニュウにもわかったか」
「うん!」
師匠たちのトコに戻り事情を話、先に行った方の宿へ。
「夕食だよ、ゴメンネ。雇ってた料理人が一昨日亡くなってね。この料理は素人の私の料理だから、その分宿賃は引いときますから」
「葬儀屋さんは、料理人さんの……。いや、女将さん。コレは美味い煮込みだ……カナさんのと同じくらい美味しい。値引きなんて」
「カナさん?」
「僕らが世話になってるコーメイ県の町のお屋敷に仕えてる使用人の方で。料理が凄く上手い人なんだ」
「ホント、コレは味付けが違うけどトビネズミの肉ね。美味しいわ」
「わかるかい、ブタや牛は貴重だからね……」
「あたいのブタは売らないぞ!」
部屋はやはり西方の寝台でふかふかだ。
ランの家でなれてたから嬉しい。
深夜。
ドンパチ
ドンパチ
バチバチバーン
なんだ、夜中に。この音は。爆竹や花火か。
そうか、コレが嫌がらせか。
「あれか、アロン」
師匠が、起きてまどから外を。
嫌がらせのコトはみんなには話してある。
窓の外を見ると、雇われたのか? ならず者みたいな連中が、爆竹や花火を。
あ、早いなリーさんとチャオが外に。
「おまえら深夜にドンパチうるさいだろ!」
「なんだよネーちゃんたち。町中で爆竹鳴らしちゃダメなんて決まりないぜ」
「やるんなら、向こうの先の宿の前でヤレ! うるさくて寝れない」
「俺たちは、ここでやりてーんだよ。寝れない? そんなの関係ねーぜ。寝れないなら、寝るな!」
「てめぇら。今のセリフと同じセリフを吐いて向こうの宿で爆竹やってきたら、許してやる」
「はぁ~ネーちゃんたちナニ言ってんだぁ。爆竹の音で聞こえね〜な〜」
つづく




