魔王拳の法
8話 魔王拳の法
「ひゃはははは。旦那、魔法とかじゃありませんぜ。見て下さい、こいつら穴に落ちてます」
「誰かが掘った落とし穴ですかね……ククク」
「おう見ろウンチャン」
「ほう誰のいたずらか知らないが、役に立った。ざまあねぇぜガキども」
「意外と深い。引っ張り出すのは難だな」
「旦那、この棒で突っいて出てこさせましょう。ホラッ出て来いガキども!」
テッ、クソっ。誰が出るか!
「アロン、大丈夫? 痛いよね……」
「大丈夫だ、ニュウは守るボクの下に。あ、イテッ」
「ホラ、早く出てこいよ」
奴ら数人で、ボクの棒だけじゃない、先の尖った木の枝みたいなのも使い突いてくる。
後頭部はヤバいから手で。
イテテ。手の甲に。
ガッガッガッ
「おいコラッ早く出てこないと死んじゃうよ」
「やめろ!」
「なら、出てきな!」
「ゴージン、槍で少し痛めつけりゃ出てくるだろ」
「おまえに言われるまでもないわ」
「ウグッ!」
今度は槍だ。痛てぇ
「やめろ、アロン死んじゃう!」
「おまえもな!」
ズブッ
あっ、槍が背に刺さりお腹から。
「ニュウ。大丈夫だよ、これ以上出ないようにおさえたから……」
「アロン、死んじゃう……」
「クッ、ガキごと串刺しにするつもりだったが。槍を掴んでやがる……」
「アロン! 血が……血がいっぱい出てる」
「だ、大丈夫……だニュウ……」
「大丈夫じゃない、アロン」
「小僧、なんで関係ないの娘を……槍を離せ!」
「黙れ! 人殺し! ニュウが……ボクに。ち、から……を」
「小僧、魔導などに関わると、ろくなことないぞ! 現に今、痛い目にあってるだろ……。この」
ズブッ
あ、力が。槍が。
「小僧、死にたいようだな……」
ウグッ、ニュウは。絶対に。
槍は通さない。
「アロン!」
土手下の草むら。
うっ、今チビスケの声が。
「いかん、ちょっと長居してしまった」
「まだ、いいじゃありませんか。なぜ急にやめるの……」
「終わりだ……」
「え〜まだワタシ……まさかあなたの……こんなに……離さない。えいっ」
「足をどけなさい」
「だめ、カニばさみっ!」
「私を怒らせてはいけない天女殿……」
穴の中。
「アロン!」
アロン、血がたくさん出てる、死んじゃダメだ。
「アロン!」
「ヤローくたばっちまったようで……」
魔導書、ニュウ助けるアロン!
おデコに魔法円を描いて、そして。
「魔天の神々よ、魔王の降臨を願う、この者に。魔王よ、この者にその力を! ウョシー! オカ・イセ、コンテ!」
ゴロゴロ
「なんだ、急に黒い雲が……雷鳴」
「ウンチャン、さっき呪文が聞こえたぞ、あの小娘が……」
ガガッ ガラガラドォォーン
「ひいっ雷が落ちた!」
なんだ、今の落雷はクソっ耳が。
「おまえら、なんともないか?!」
「ゴージン、おまえこそ、槍に落ちなくて良かったな。が、変な落雷だった……」
「穴に落ちたよな、中のガキは丸コゲじゃねーのか……おーい」
ウゲッ
穴から飛び出したぶっとい腕が、覗いてたリャンを。
「リャンが飛んだ!」
「うわぁあ!」
「パンどうした! なにっ」
「チンッ助けてくれっ! 足を掴まれた!」
「コレは……魔導だ、ウンチャン!」
「チン、なんとかしてくれ」
って、だいの男の足を掴み逆さ吊りにしてるのをどうやって。
オレには無理だ。ワリぃけど、オレ逃げる!
「アヒッ!」
「アロン、そいつも投げちゃえ!」
「あひぃいいい」
「バケモノめ、くらえ」
「あ、背中に」
「そんな……そんな飛刀なんか! うっ」
スゴい抜けちゃた。
「おまえなど!」
「ひいっ!」
「くそっウンチャンを離せ!」
バキッ
「槍が、うわあっ!」
ウンチャンを片手で振り回した。コレはかなわねぇ。
逃げるが勝ち!
はっ!
タタッ
「なにっ!」
「これは、槍使いの……。ドコへ? あ、それよりあっちの川沿いに見えるあの裸のデカいのは、なんだ?」
「あ、アレは師匠の……お弟子さんが。師匠、どうかお許しを。師匠、私はもう小娘など……いりません。私は頼まれてしただけで。助けて師匠」
「師匠、師匠言うな、私はおまえの師匠ではない。しかしなぁあっちで振り回されてるのは、おまえさんの仲間だろ。助けないのか? あ、投げた」
「ひいっ! がっ」
「おお、上手いものだ。飛刀使いが槍使いに命中した……」
おや、肩に乗ってるのはチビスケじゃないか。
なんとか、守れたようだな。しかし、アロンは?
「おお〜チビスケ、そのデカい裸の男は何者だ?」
「あ、ししょーおそい!」
「悪かったな、ついな少々……。で、そいつは? アロンはどうした」
「コレが、アロンだよ」
「し、師匠……うっ」
ドタッ
「こいつがアロン?」
「ししょー」
肩から飛び降りたらししょーが受け止めてくれた。
魔王拳の法は出来たんだ。
アロンは奴らのだれよりも大きくなって、毛も伸びた。魔王になったのか?
師匠見てからアロン、たおれたけど。大丈夫かな?
「うっう……ん」
「アロン、気がついた」
「あ、ニュウ……ボクは……奴らを……なんか寒い」
たおれたアロンは、もとの大きさになおつた。
大きくなったとき服がやぶけたから丸裸だ。
「気分はどうだアロン……チビスケに話は聞いた」
「し、師匠……なんか生まれ変わったみたいな……」
「そうか、それは良かったな……。チビスケ、アロンのバカみたいに伸びた髪をなんとかしてやれ、バケモノみたいだぞ。あと服も」
ニュウに手伝ってもらい髪を切りまとめた。
そして旅の再開。
「なんか、服がキツイんだニュウ。コレってもとに戻ったのかな? なんとなくまえより大きくなったようだけどボクの身体……」
「ん……少しかな?」
「腕が太くなってるよな、まえより筋肉がついたんだろう。師匠、どうです。これだけ鍛えたのだから技とか……武術を教えてください」
「ん、べつにもう教えんでもよかろう。私より強いんじゃないのか?」
「そんなコトは……あれ、あそこに居るのは」
峠の入り口付近に人が立っている。
「父さんたち、遅いわよ。ドコでみちくさくってたの?」
「リァンファ、なんだその格好は。旅行にでも行くのか?」
「わたしも連れてって。わたし、あの家嫌いだったの」
「なんと……アレが心配するぞ」
「大丈夫よ、父さんと一緒と手紙を置いてきたから」
「しかしな……」
「父さんが、なんて言ってもついて行きます。アロンだって一緒の方がいいでしょ……アレッ。アロンよね? なんか少し……」
「アロンだけどボク。師匠、どうかリァンも」
「わかった……ついてきなさい。だが、父さんはやめなさい。私はおまえを弟子としてあつかう。いいかな」
「いいわ、父さん。あ、師匠!」
「私も弟子にしてください。師匠!」
「はあ? あんた誰だ」
つづく