レンク師匠と弟子
78話 レンク師匠と弟子
「おい、ワンチュエ。大丈夫か? 速度がおちてるぞ」
「すみません、師匠……」
「いや、昨日は二人だったからな。誰か呼ぶか」
「師匠、それでは間に合いません。今日もおそらく、すぐにはじまると。私一人でも……それより、師匠のお体が」
「大丈夫だ。わしはお前の方が心配だ。また、あの獣の集団が現れたら……」
「アレが来たら、私がお守りします」
と、弟子らしいクルマの付いた椅子押しが、ふところから師匠の武器と同じ鎖玉を出した。
「あの……その車椅子押し。手伝いましょうか」
「誰だ、貴様は?」
「ノノイ町の葬儀屋を手伝ってる者です。たまたま見かけたもので」
「葬儀屋……」
「あ、あんた。倒れた兵士たちを昨日」
「葬儀屋に押されるなんて縁起でもない……」
「ご老人、さっきの技見せてもらいました。あんなに正確に鎖玉を的に当てられるんですね」
「当たり前だ、師匠は鉄鏈使いの達人だ。レンク翁を知らんのか!」
「そうか、あの鎖玉は鉄鏈というのか」
レンク翁、名をだされても知らないが。
「ああ、今は鉄球だが実戦では槍玉だったり鉄クサビだったり変えて敵を倒す」
「ソレは、弟子のあんたも使えるんだろ。なら、椅子押しはボクにまかせてくれ。こう見えて、走りと力には自身があるんだ。ちょっといいかな」
「小僧、なにする気だ!」
「あの的の直前まで走り、すぐに右に曲がりますから、お弟子さんもついて来て下さい。お師匠さんと同時にあの的に!」
ダダダダダ
「おお、中々の速さだわい!」
「師匠、的は眼の前ですよ!」
「ハァアッ!」
バキバキッ
「おう、一人では出来ない連投攻撃だな……おもしろい。葬儀屋、手伝ってもらおう。が、戦場だぞ。こううまくはいかんぞ。まえの弟子は敵に玉を跳ね返され頭に直撃を受け……」
「大丈夫です師匠。大船に乗ったつもりで」
「小僧、コレは椅子だ。ワァハハハハ」
コレで堂々と戦場に。狙いは魔将とやらだ。
「師匠の鉄球を跳ね返すなんて、相手は普通の兵士じゃないですよね」
「ああ、魔将と呼ばれる魔人だ。ガッチリした体に背が高く芝居の武将が使うような大刀を使う」
「ああ、握りが長い槍みたいな大刀ですね」
そんな武器を使っていた魔王がいたな。それに、インアルに攻めてきた。昔の武将みたいな長いヒゲの武将も同じような大刀を。
あの魔王か?
「レンク、奴らが現れたぞ! 無理するな」
「おう、ヤン。今度こそ野郎を倒すぞ」
昨日の。馬で走りすぎたからボクには気がつかなかったか。
戦が、始まるようだ。
「レンク殿は後に。ヤツは、私におまかせを!」
坊さんが走りぬけた。棍術使いだな。
あの人も天林寺の人かな?
彼の後からあの女も。ヤバッ、後ろ向いてよ。
「レンク、もう一人のヒゲはまかせろ、ヤツの目はつぶした」
その後からタルみたいな甲冑を着たヤツが大きな剣を背に走ってきた。甲冑のわりに速い。
あの姿であれだけ走れるのだから、かなりの怪力の持ち主だろう。
「あの人の中身、昨日の戦いで見たんだが、あんたくらいの若い女だった」
と、弟子の男が。
女、なのか。あの甲冑の中の人は。
しかもボクくらいの若い。まさか、ウーサイのような魔王のひとりじゃないだろうな。まだ、何人かボクの知らない魔王がいるらしからな。
敵は魔天の者だからか、あんな格好で。
考えられるが。
「師匠も入れて、天導引派の七武人だ、今は減ったが」
この老人は天導引派の武人なのか。
昨日の女とヤンとか呼ばれていた男は天導引派の七武人というのか。
しかし、七人いないのは魔王どもと戦い。
「おい、小僧。ボーっとしてるな、我らも行くぞ!」
「はい師匠」
「師匠と、言うな。おまえは弟子ではないだろう」
「ですね、先輩!」
ハイサン県境近くの村。
「おい、リー。ウーサイ。夜が開けたぞ、兵隊がぞろぞろと県境に向かってるぞ」
「早いなチャオ、グッピー」
昨日は町は無かったが戦場の近くに村を見つけて納屋をかりて寝た。
「おお、あんたら。イモだけど朝飯代わりに食ってけ」
「ありがとうお婆さん」
「あんたら、出るなら今はやめた方がイイ。もうすぐ戦が始まる」
「大丈夫だ。巻き込まれない道を行くつもりだから」
んな、わけない。あたいたちはその戦に来たのだから。
「そのデカいブタ、売ってくれぬか。たいしたカネはねぇが」
「ふわぁあ……ダメだ婆さん。こいつはあたいの馬みたいなものだ。売らない。ないと道中困る」
「そうか……牛と交換というのは」
「牛ってあっちの小屋のやせたやつか? あんなのならこっちの方が乗り心地がイイ」
「牛の方が高価なんだが……」
「あんなやせたのなら、こっちのブタがイイ」
「婆さん、コレイモ代だ。とっといて」
「ありゃ納屋とイモでコレはもらいすぎだ」
「いいから、とっときなよ。イモ食べたら行くよ。リー、ウーサイ」
「俺も行くよ、忘れんなよ」
つづく




