別れて
67話 別れて
ボクらは王都を出て、チャオの村に。
「結局、兄さんは現れなかったなチャオ」
「残念だ。だか、アロンと槍のグッピーの闘いが見れたのは収穫だった」
「ねえ、あのときチビ皇帝となに話してたの?」
「リーさん、チビ皇帝は……」
「お子様皇帝?」
「どちらも……。優勝戦までいった参加者を近衛兵団に入れたかったらしい。ボクもグッピーさんもことわったけど。チャオの兄さんも晩餐会に招かれて軍に入隊しないかと……」
「兄貴は、ことわったんだろ。兄貴は軍になんか入る人じゃない」
「らしいな。前回の大会優勝者にも、ことわられたとがっかりしてた。やはり戦が王都に迫ってる危機感があるんだろうな」
「生きてるなら、また何処かで会えるさ……兄貴」
「坊さん、なんか寂しそうだな?」
「そうか? そんなコトはない」
「インスウが王都で働くと別れちゃたしな……。実はな、昨日の夜にインスウがうちあけたんだ。あたしの母はインスウだった」
「私はわかってたぞ。インスウの目鼻立ちリー殿にそっくりだったからな」
「そうだったんですかリーさん。ボクはわかりませんでした」
「リーとインスウは、同じ匂いがした」
「ウーサイ、そんなコトがわかるのか?」
「ああ、あたいは魔王だからな」
と、ウーサイは、ボクにしか聞こえない小さな声で。
ブタは食べられずに相変わらずウーサイの馬状態だ。
王都に行ってエサが良かったのか、ひとまわり大きくなってないか?
「師匠、噂では辺境の県が落ちてヤバいらしいですよ。インアルは大丈夫かな、心配です。先にインアルへ行っていいですか?」
「かまわんよ。べつにアテのある旅をしてるわけではない。私らは後から」
「アロン、わたしも行く!」
「待て、個人行動は……あたいも行く!」
「ウーサイ、のんびりとブタに乗ってく旅じゃない、急ぎ旅だ。リァンもあとから師匠たちと。ボク一人なら丸一日走れば、明日には着ける。ウーサイも来なくていい」
「大丈夫だ、こいつを走らせる。まあ一緒に走るのは無理だが半日後には」
「それでウーサイがいいのなら……じゃボクは先に」
「こら、そんなに早く。行ってしまった。よし、ブタッ我らも行くぞハイィ!」
ドドドド
「ブタって走れるのね……でもアロンなんで、わたしをおいてくのオンブでもして走ってくれれば、わたしの胸の感触が楽しめたのに……」
「リァンファ何を言ってる。聞こえたぞ」
「父さん……ヤダッ」
「アロン、あのメイドのアンか、お嬢さんのランに惚れてんじゃないのか」
「チャオ、そんなことないわよ」
「わからんぞ、もしかしたら娼館から連れてきた二人かもな。リーさん、ウーサイもなんだかんだ言って怪しな」
「チャオもそう思うか」
「男女の交際は良いものだ。貴女たちも良い相手を見つけなさい。なんならマンケイを紹介するぞ」
「その必要はない!」
「坊さん、アレはあたしの好みではない! それにな、村でいい娘を見つけてたぞ」
わざわざ街道なんか通ってたら時間が。森の中を突っ切るか。
さすがブタでは追いつけないなツァンレン。
おい、もう疲れたか不甲斐ない奴だ。
「こら、止まるな!」
「おや、ウーサイじゃねーか」
街道脇の林道から現れたのは大会まえに一緒に呑んだ槍のグッピーじゃないか。
「仲間はどうした?」
「別れてアロンを追ってる。あいつ走るのがバカ速くてな、こいつだとついて行けない。おい、立て歩くんだ」
「アロンを追いかけてるって、惚れた男に逃げられたか?」
「違うわ。まあそれには深いわけがあってな」
「まあ男なんかどうでもいい。俺も嫁が欲しい」
「あたいはおまえには興味ないぞ」
「誰もおまえが欲しいとは言ってねぇ。俺はな、この国じゃなく異国の美人を嫁にすると決めてんだ。だからよ戦が始まったこの国から出るつもりだ。俺は軍隊も嫌いだが戦も嫌いだ」
「大会に出てるのにか」
「闘うのは好きだからな。辺境に行くと異国の言葉が習えると聞いてな、港町も習えるが辺境の方が行き先が近い」
「そうか、あたいも辺境の町インアルをめざしてる。ほら、歩けブタ!」
「こいつ疲れて腹もすかしてんじゃないのか? 林道の奥に池があったぞ。飯は俺の弁当の残りをやろう」
「よし、そこの林道に入れブタ。水があるそうだ」
ブヒッ
「おっ動いた、こいつおまえの言うことわかるのか?」
つづく




