七武人
66話 七武人
パチパチパチ
闘技台の下に、あの少年皇帝が。
そして両横に重臣らしい老人と中年の女が。
周りには兵士たち。
「見事だったぞ、ふたりとも。たいへん楽しんだ。そこでだ、そなたらをヨの近衛兵団に…」
「ちょっと待て、それはなんだ。褒美のつもりか? 近衛兵団だぁ俺は辞退するぜ。そんなつもりで大会に出たわけじゃないからな」
「なぜだ、前回の優勝者にもことわられた。ちゃんと、ここではなく晩餐会に招待して……」
「王よ、武術家というのは強ければ強いほど気まぐれでしてな。中々思うようには、つかえないものでして。そちらの勝ったお若いのは、どうだ近衛兵団に」
「ボクもおことわりします。それでは王都から離れられませんし」
「ヨと一緒に国を守ってはくれぬか」
「ボクは自由でいたい。軍には入りません」
さすがに見下ろして話すのは失礼と思い台から降りて。
「グッピーさん、あなたの勝ちだ。ボクは先にあなたの槍をくらっている。師匠見ましたよね。戦と違います。ボクの負けです。あなたの槍を避けれなかった」
「ああっ?! 言ってんじゃねぇ。あれはわざと腹で受けたんだろう。俺の勝ちなわけねぇ」
「と、言うわけだ。皇帝陛下、私たちはコレで王都を離れます。アロン行くぞ」
「待たれ、リュー・ハイシン。わしをお忘れかな」
「うっ、だから……。私は、あなたと初対面。忘れるとは、貴方様を知りもしません。では」
「行ってしまわれた……」
「ジイ、あの僧は知り合いか?」
「はい、あなたのお祖父様の代に謀反の疑いがあった南天林寺に私が将として兵をひきいて攻撃に……しかし、わしらは彼一人に負けたのです。弟子という彼と、同じ年頃の若僧一人にです……」
「一人に。そんな強者なのか、あの僧は……。なぜ我軍に」
「あの男が噂に聞くリュー・ハイシンですか。フー・シン殿。一度手合せをしたいものだ」
「近衛隊長リー・リンチュンよ。お主がハが立つ相手ではないぞ。おそらく弟子でも」
宿に帰ると店主が、ボクとグッピーさんを料理店に。
「いやぁ良い試合だった。なんでも好きな物を食べてくれ!」
「近衛兵なんかよりこっちの方が嬉しいぜ」
「近衛兵。そんな話しが……噂では聞いてたが今回の大会は兵士の強化のための人材を募る目的があったと。急報だが辺境のハイサン県が落ちて隣のモクハイも危ないそうだ」
「国の危機に兵集めなら、大会なんて面倒なことしないで、募集すればいいだろう。戦で名を上げたい武術家なんて、ゴロゴロしてら」
「ボクの聞いた話じゃ、辺境のモルドの町があるコーメイ県は当時おこなわれた武術大会の出場者大勢が軍に加わりコーメイを守りきったと」
「モルドの武術大会か、あそこは掘り出し物の武術家がたくさん出場してると聞くなぁ実は俺も出ようと思ってたが、ちょっとヤボ用で間にあわなかった」
「グッピーさんが出なくて良かった大会は予選で中止になったからね、戦のせいで。グッピーさんはそれで兵には志願しなかっただろうし」
「だな、俺は兵で上官に命令されるのは嫌いだからな。おまえもモルドの大会に出たのか?」
「いや、今大会と同じく見学してた。まさか、師匠が……」
モクハイ県ビレの町。
とある小さな酒場。
「まさか、ションジャが倒されたなんて」
先に着ていたアタシの後から来たフードマントの女は天導引武闘派七武人の一人ジ・ドゥだ。
この女は体中に暗器を隠し持ってる。
ワタシと同じ暗殺者だ。
魔導引派暗殺には随分と働いたと聞く。
「レアン、おまえはナニをしていた」
「ジ・ドゥ、彼女は俺を助けようと戦場を離れたんだ」
「久しいなロ・ツウシン。その腕は」
「敵の魔将にやられた……三人なら勝てると思った。が新手が現れてな油断したわ」
「おお、来てるな同志よ!」
「ラ・カン、元気だったか?」
「ああっ俺よりツウシンよ、その腕は」
「それだけ相手は強敵だ」
ラ・カンは、今や天林寺と並ぶ武術派の寺、武頭寺の武術師範だ。
「遅れてすまん、もう皆来てるのか?」
今、店に入ってきたのは七武人の頭にあたるヤン・クアンウ。弓の達人だ。
「ションジャが殺られたというのは本当か」
「ヤン殿。死体は確認していないがおそらく。わしの腕を斬った魔将と、もう一人の魔将を相手では、軍は敗戦……」
「ロの腕を……。それもふくめションジャの仇を討とうではないか!」
「相変わらずじゃな皆の衆」
店の奥に、レンクという老人の姿が。
「レンク老、いつ来たんだ」
「ロ・ツウシンとレアンが来る前から居たよ。わしの気配をさとれんとはまだまだだな」
レンクは忍の術を心得た鉄鏈使いだ。
鉄鏈は鎖の先に鉄玉や刃先を付け振り回し相手を寄せ付けずに倒せる武器だ。
七武人の最年長だが、頭の器ではないと頭をヤンに。
そして。
ガチャガチヤ音をたて店に入って来た甲冑姿の人物はアン・チュエンだ。
「グッ」
と、手を上げ挨拶を。
こいつしゃべれないのか、一言しかしゃべらない。「グッ」という一言と手の動きでなんとかなっている。
甲冑姿で、なんでも武器をこなし強いということしかわからない不思議なヤツだ。
誰も顔を見たことがない。
ティンソー様がションジャの後がまに呼び寄せた補欠だ。
まあ姿から戦向きであろう。
「皆、揃ったようだな。では、ティンソー様からの指令を伝える。モクハイを死守せよだ。たとえ軍隊が敗戦しても我らが生きている限り敗戦ではない! ロ、レアン。今度は生きのびようなどと思うな!」
わからないでもないがワタシは国のためなどに死ぬ気はないが、ティンソー様のためなら。
つづく




