宿がない
62話 宿がない
いや、まいった。武器屋に山賊から巻き上げた武器を売り、宿を探そうとしたがどこも満室で泊まる宿がない。
「武術大会があるなんて知らなかったから……」
「私は野宿でも、山賊の頃はよくしてましたから」
「いやいやインスウ殿、此処は街の中で山の中ではない外の野宿とは違いますぞ」
「まあそうですね……」
インスウさんは周りを見まわして。
「なんか……山の中より物騒そうね」
「特に今日は武術大会のせいで荒っぽいのや、
なんだか怪しげなのも多いわねぇ」
と、チャオは、一人歩き出した。
「チャオ、どこ行くの? なんか、あてでも」
「実はまえに来たときに泊まった宿が……。やたらと兄貴のことほめてて、妹のあたいにまで……宿賃半額にしてもらったトコが……もっと奥かな?」
「おや、あんたらは」
「あ、槍のグツピーさんだ!」
「え、俺名乗ったけ?」
「いや、あなたをボクの師匠が知っていて」
「師匠?」
「こちらの」
「おお、前の方にいた坊さん夫婦……あんた、坊さんなのに奥さんを」
「あ、私は元僧だ。今はただの頭を丸めた風来坊だからな」
「グッピーさんはボクらより後に都入りして宿はとれました?」
「ああ、前回の大会のときに泊まった宿が、えらく武術家好きでな、次回もお泊めするから来てくれと。入賞すればタダで泊まれるいいトコだ。なんだ、宿がないのかあんたら。え〜と六人か。多いなもう俺んとこも満室みたいだし……あのそこの剣背負ったねえさん、俺と同室でよければ泊めてやるぜ」
「あんたと同室……ゴメンだよ」
「槍のグッピーさんは、前回の大会で酔拳使いと闘ったそうだけど」
「なんだ、それも知ってんのか嬢ちゃん」
「嬢ちゃん言うな、あたいはもう……」
「あいつは強かった。正しくは酔剣だけどな。拳はツルギの剣だ」
「酔剣!? 兄貴は剣を持って……」
「兄貴。あんたヤツの妹か?」
「多分……。手紙には優勝したと。たしか、ソ・カーワァイと名乗ってたと聞いた」
「ああ、そんな名前だった……」
「あのさ、あんたが泊まってる武術家好きの宿は遊戯屋か?」
「そうだ、知ってるのか?」
「あ、あたいが前回ココに来たときに世話になった宿だ。でも満室か……」
「だが、行くだけ行ってみな。兄さんたしかその坊さんを師匠って。ナニか武術を……。おや、あんた門のときにはハラボテだったよな」
「アレはウソです」
「あの武器も実は山賊から巻き上げたもので……」
「まあ嘘も方便、今みたいなときは入都も困難だからな。俺の名を知っていた坊さん、武術家だろ師匠なんだからっつーか、おまえら。ブタの上の嬢ちゃんのぞいて皆ナニか出来るな、わかるぞ」
「まあな、だが大会の出場はしない。明日はあんたの槍術を見せてもらうぞ」
「ああ、予選だとあまり早く終わっちまうから。見逃すなよ。おっと、とんだ道草くっちまった酒飲みに行くんだが誰か付き合わねぇか、剣のねえさんはどう?」
「実はあたし飲めないんだよ」
「そうか、今夜も一人酒か」
「おい、あたいじゃダメか」
「え、ブタのお嬢ちゃんは子供……だろ?」
「コレが子供の身体か?」
ウーサイはブタの上の寝台に立ち、出るとこ出た色気のある身体を見せつけた。
「あたいは背が、小さいが大人だ」
「俺と酒、付き合ってくれるのか、行こうぜ!」
ウーサイは、グッピーさんと酒を飲みに。
あのブタは店に入れてくれるのか?
ボクらは、遊戯屋という宿に。
「憶えてるよ、前回は中庭で酔拳の形を見せてもらった」
宿の店主は気の良い小太りで声の高いおっさんだった。
話すときに酔拳のマネをしながら、ホントに武術が好きなんだろ。
「悪いなぁ……部屋は満室だからな泊められないんだ……明日になれば予選落ちした連中や関係者が帰るから……。よし、一晩ならウチに泊めよう。ちょっと此処から離れてるがいいかな? で、またわしに武術を見せてくれ、それが条件だ」
と、言うことでボクらは店主のウチに泊まることに。
ウーサイが来たらと宿の人に言付けを頼んだ。
ブタに乗る少女なんてそう居ないから間違えないだろう。
つづく




