大河三娘双剣
60話 大河三娘双剣
「師匠、誰か追ってきますね」
「あの山賊とは思えんな……」
「一人の気配……誰か、あの縛りから抜け出して」
「おーいアロン!」
「リーさんだ」
「アレは、ピングォ」
「インスウ殿は、彼女をご存知で?」
「え、まあ知人です」
「やっと追いついた。非道いじゃないか、あたしをおいていくなんて」
「別に……朝、寝ていたから誘わなかっただけで」
「まあ……あたしも寝てたのが悪いが。アレ、なんでインスウがここに? そう言えば、縛られた連中の中にいなかったね」
「久しぶりねピン……私、山賊から足を洗ったのよ。で、お坊様たちと王都へ」
「リーさん、あの山賊と親しそうだけど」
「まあ、あのヒゲ面の頭はあたしの親父だからね」
「あの頭の娘というのはリーさんか」
言われてみれば太い眉はあの頭にそっくりだ。つながってはいないが。
「思い出したぞインスウ殿の双剣は、リー殿の双剣術と似ている。と、いうことはリー殿の双剣術の師はインスウ殿か?」
「そうだけど、坊さん。でも大河三娘双剣でさらに……」
「あら、ピン。その大河なんとかの剣を見せてもらえるかしら」
インスウさん急に師の顔に。
背の双剣を抜いた。
「いいよインスウ。もう昔のあたしとは違うから」
リーさんも背の双剣を。
「リー大河三娘双剣で負けたら破門だぞ!」
二人の剣闘がはじまった。
さすがインスウさん。
リーさんの師匠だ。
リーさんの剣をすべて打ち返す。
「インスウ、ここまではあなたに習った剣だ。大河三娘双剣はこれからよ!」
インスウさんの剣が、防戦一方になり、リーさんの二振りがインスウさんの依を切った。
「見事ね、ピン。頭に見せたかったわ」
「よーし、リー。大河三娘双剣は免許皆伝だ。もう教えるコトはない」
すごいなリーさん。チャオからのお墨付きだ。
ボクの花和尚拳なんか、言われたこともない。
「ふぅわぁ〜。チャンバラは済んだか目的地に着くまでゆっくり寝てられないね」
「ウー、さっきまで寝てたじゃないの」
「そうか……リあるン、都についたら起こしてくれ」
王都ファチャンは、華中国の県ファチャンと同じ名だ。王都には華中国を統一した皇帝ガン・ドンガの三代目が居る。
「師匠、今の皇帝ってまだ子どもと聞きましたが」
「ああ、前皇帝が早くに病で亡くなられたからな。奥方と重臣にささえられてやってると。しかし、戦がはじまるとは不運だな幼き皇帝も」
そうなんだ。今回の戦の原因はボクだ。
ニュウが、ボクのために魔王拳法術など使わなければ、魔天十三王など降りて来なかったはず。
ここに居る。ウーサイも。
インアルのアルだって。
まあ悪い奴ばかりじゃないんだが。
王都の門が見えてきた。意外と出入りが多いようだ入口も出口も人の数が多い。
「まえに来たときは素通りだったのに……」
ボクらは入口に並んだ列の最後に。
「チャオ。やはり、戦が始まったから出入りが厳しくなったんだろうね」
「それだけじゃないぞ、明日からはじまる王都の武術大会のせいもある」
と、教えてくれたのは前に並んでる槍をかついだ武人だ。この人も大会にでるのかな?
「武術大会だってますます兄貴に会える可能性が」
「チャオの兄さんは王都の武術大会で優勝してるんだよな。なら、今回も出場の可能性もあるだろうチャオ、会えるといいな」
「さて、今回は……私とインスウ殿は、夫婦。アロンとリァンファも同じでいいだろう。チヤオ殿やリー殿は旅の武術家。さて、ウーサイ殿は……」
たしかにウーサイは困った。
「ん、あたいは適当にやるから。おまえたちは先に言っていいぞ」
とは、言うものの。ただブタに乗って旅する少女。思いきり怪しまれる。
心配なのでウーサイを前にした。
「ウーサイ殿、よければ私とインスウさんの娘でも」
「心配するな坊さん」
ボクらの順番に。
「おい、おまえ何者だ?」
「あたいは旅人だ。ナニか問題あるか?」
と、ウーサイは義手の孫の手で背中をかいた。
「問題なぁ……その豚は?」
「あたいの財産だ。腹が減ったら食う」
「そんなデカい豚は、一人じゃ食い切れんだろう」
「残りは売ってカネにする」
「怪しい奴め。おまえは、いくつだ?」
「いくつに見える?」
「見た目、子どもだか……」
「十万十三歳だ、お前より年上だぞ!」
「おい、怪しいが……このガキはイカれてんじゃないか。まあガキだし、害はないだろ」
「通してもいいのか?」
「いいだろ、俺が許す」
「よし、通れ。次!」
ウーサイは、通れた。
武術大会のおかげで武術家と名乗ったリーさんたちも無警戒で通った。
いちゃつきながらの師匠たちも。
「次! おまえらは?」
「夫婦です。王都の実家にお腹の中に夫の子が。報告と出産に帰ってきました」
え、リァンの腹がいつの間にかにふくらんでる。ナニか入れたのか?
調べられたらヤバいんじゃ。
「おい、その荷物はなんだ?」
「コレは刀や剣です。ボクは鍛冶職人で、受けた仕事をこちらでしようと持ってきました」
「怪しいな、武器は謀反でも起こすためじゃないのか」
リアンの腹よりもっとヤバい物をボクが持ってた。山賊から奪った武器が思わぬやっかいなモノに。
つづく




