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リュー・ハイシン

6話 リュー・ハイシン


「リュー・ハイシンだと、天林寺一、イヤ武林界一の男と聞くが……」


「あの、クソ坊主が、ですかい? 見えませんが」


「時の将軍が、武術にはげむ武僧たちを見て。天林寺に謀反の疑いがかけられたのは知っておろう」

「有名な話ですね」

「大将軍コン・ワンパの百の兵が天林寺に攻め込んだ時に天林寺の門の前で一人で撃退した若き僧がいた……。その僧がリュー・ハイシンだ。知らんのかおまえは」


「ワン殿、兵の人数が違っているぞ。百ではなく百五十だ」


「だ、そうです先生」


「このバカちんがぁ娘さんを離さんか!」


   バゴッ


「イテッ、先生が……」

「このチンピラがぁ。ナニをしておる、あれほど人に迷惑をかけるなと言ったではないか!

 と、いうことで。わしらはここから……。お騒がせしました」


 あの先生と言われたオヤジはチンピラの襟首を引っ張ってペコぺこしながら帰っていった。


「師匠、師匠ってスゴい有名人だったんですね」

「宿に戻るぞ、明日は町から出る」


「父さん、助けてくれてありがとう」


「リァンファ、元気でな……あ、それでな。おまえの名は私がつけた。リァンではなくリアンファと名のりなさい」


 父さん、わたしは。


「師匠、ホントに百五十人の兵隊を一人で……」

「あれはどうかな……」

「あのいばりくさった道場のオヤジが師匠の名を聞いただけでビビってたじゃないですか」


「私はただ、リュー・ハイシンの噂話をしただけだ。その天林寺の男など会った事もないわ」


「え、師匠はリュー・ハイシンではないですか」

「偶然、同じ名だ。だからちょっとつかわしてもらった。この名はけっこうつかえるんでな」


「ホントですか? でも、師匠が強いのはたしかだし、天林寺にもいたんでしょ」

「天林寺……。私、そんな話したか……。まあ、アロンよ。争わなくて、すむならそれで、すます。ホラで闘わずに勝つだ。覚えておけ」


「は、はい」



 金玉飯店。


「あのクソ坊主をなんとかしないと……耳にデカい穴を。まだヒリヒリする」


「ウンチャン、耳で良かったな。キズ口が乾いたら飾りでも買ってやる。付けておけ」


「姐御、あのクソ坊主は、とんだ破戒僧ですぜ。娼館へ堂々と入っていくのを見ました」


「娼館へ……ゴージン、貴様それを黙って見てたのか?」


「姐御もわかるでしょ。俺一人ではあの坊主に勝てませんぜ」


「まあたしかに、三人でかかっても……」


「女好きのあの坊主を美人の姐御が誘い出し、ガキとチビを離して、そいつらを俺たちが……」


「弟のオレから見ても美人の姉貴なら出来る。いい策だ、ゴージン」


「ワタシが……ゴージン。それはワタシが色じかけで坊主をガキたちから引き離すのが」


「だ、だめですよね姐御……」


「おもしろい、やるぞ。メシを食ったら用意だ!」



 翌朝……。ボクらは宿を出て町の門外に。


「アロン、リアンと別れたくない?」


 昨日宿への帰り道に武術道具屋を見つけて師匠が棍術用の棒を買ってくれた。

 いよいよ師匠が武術を教えてくれるのかと期待したら旅用の荷物を両端にぶらさげて天秤棒の代わりに。その上にニュウが肩ぐるまで乗っている。


「いいんだ、ニュウ。今度ボクがリァンと会うときは……」

「会うときは?」

「ボクがもっと強くなったらだ!」


 と、ボクは棒ごとニュウを持ち上げた。


「アロン、がんばれ!」



 町を出て峠道に入る頃。師匠が。


「まだ、朝は冷えるのぉ。アロン、先に行っててくれ。ようたしだ」

「はい!」


 土手の下の草むらなら目立ちまい。


 ジョボボボー


 ふーっスッキリ。


「ご立派な物をお持ちで」


「おおっ! これは……お恥ずかしい。あなたのような女性が。わはははは」


 笑ってごまかしたが、なかなかの美人に。

 放尿時をしっかり見られたかな。

 しかし、なんでこんなトコに?



「ニュウ、師匠。なんか遅いなぁ宿でやりそびれたのかな……大してんのかも」


「だい?」


「ふへへっへ。いくら待っても坊主は来ねーよ」


「槍オヤジと小太り! ニュウ、逃げろ!」


「おっと、こっちは……」


 仲間が!


               つづく


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