仕置は川で
57話 仕置は川で
あらら、おそかったわ。
坊さん、小屋の三人をのしてしまったわ。
「おお、リーさん。こいつらをどう仕置するか?」
「ん~ですね。山賊なら森の木に一晩逆さ吊りなんですが……こいつら川の綱に逆さ吊りにしてやりますか」
「ちょっと、面倒だな。デカいのも居るし」
「なら、おいてめらっ起きろ!」
あたしは、気絶している三人をわざわざ起こし。
「貴様ら! そこに並べ」
あたしは剣を抜き昨日チャオに習った大河一丈双剣をためした。
ヤローどもの腰ひもだけを斬る。
「ひゃつ! ズボンが」
「おまえらズボンが落ちただけで良かったな。手がすべったら、しばらく女遊びは出来なかったところだ。あたしの腕に感謝しな。みんな、そのまま川に入って手を上げろ」
「坊さん、こいつらの手を縛ってくれ」
坊さんが上げた手を縛り終えたら。
「さあ、川の先へ歩け」
「無理だ! 先へ行くと流されちまう!」
「つべこべ言うな、その腕を斬るぞ! 悪い事をするから罰は当然だ。汚い者は流す!」
三人は先に進んだ。
「ほお、中々耐えてるではないか、流されないな汚物ども。まあ汚物を川に流すのもな……」
「そうだな、坊さん。汚物を流すと川が汚れるな」
綱を一人で揺らすこのデカぶつをどうするか。
ボクはとりあえず、揺らすのを止めるために綱から跳んでデカぶつの顔に連続蹴りを。
「ぐわぁー」
デカぶつが綱を離し岸の奥に転げた。
「小僧の蹴りなどと、思ったがなんだこの強烈な蹴りは……う、鼻血が。油断しちまった」
「ナニ独り言を」
ヤツの後ろに跳び、背後から後頭部に横蹴り。
「ぐっこの小僧がぁ」
「あれ、効かなかった?」
「俺の頭は石のように固い!」
「なら」
前蹴りで、顔を。
ソレをさがってかわす。
すぐにしゃがみ、低い後ろ廻し蹴りで足元を。
「ナニ!」
ドボン
よろけたデカぶつは川に落ちた。
ザバッ
「そんな蹴りで勝ったと思うなよ小僧!」
上半身だけ川から飛び出した。
岸のわりに深いんだな。
ピギャー
おつ、アレは。
デカぶつの後ろに、あのウーサイの大豚が。
「ガアッ」
あ、二頭、いや一人と一頭か。沈んだまま出てこない。
しばらくすると水面にウーサイの頭が、そして豚の体と頭が出た。
豚は川からウーサイを乗せたまま上がった。
ウーサイが豚から飛び降りると、体を揺すって水をきる豚に。
「こら、濡れるじゃないか」
「って、ウーサイ。そのまえから濡れてるだろ。あのデカいのは?」
「さあ? 豚に食われたのか、流されたのか」
綱を引っ張りイカダを寄せた。
向こう岸のいかつい三人が流されて行くのが見えた。
あれは、師匠のお仕置きか?
師匠とリーさんが綱の上をすたすたと。
ふたりにはイカダは、いらないな。
「マン・ケイ、よく落ちなかったな」
「必死で師匠に教わっ寝張りの
技を」
「粘り?」
「なんでよ、あたいが来たら終わってた」
チャオが豚をこついた。
「ねぇウーサイ、こいつに名前はないの?」
「ブタだ」
「まんまじゃない」
「ヘタに名前なんか付けると食べにくい」
「わからなくもないわね……」
「リアンたちもよくこらえたね」
「とりあえず、わたしも師匠の弟子だから、ニュウやマオはよくガンバったね」
「ニュウはマンケーに」
「わたいも……」
「まあみんな無事で良かった。チャオ殿、近くには村とかないかな? 少し腹が減った」
「峠を一つ越えれば様子江だ、川沿いの高台に村が」
「また、川ですか。もう水は」
「マンケ、安心しろ川は渡らない」
峠を越えた先にまた、大きな川が。
あれが様子江か。
その横の高台に建物が。あそこがチャオが言う村か。
「まえは、下にも建物が。けっこう人が居たんだが様子江の氾濫で、下は流されたんだ。あっちから登れる」
「あ、チャオだ! チャオが帰ってきた」
村の子どもたちが集まって来た。
「チャオ、この村は……」
「あたいの生まれた村だ。親は亡くなっていないが、一番弟子が居る。後で紹介するよ。坊さん、飯屋はないが食べさせてくれるトコがあるから」
と、チャオは子どもたちをどかし、真ん中の家に入った。
「チャオ姉! おっかちゃん、チャオ姉が帰ってきたよ」
「おお、チャオ。無事だったのね。辺境で戦が始まったと聞いて心配してたんだよ」
「叔母ちゃん、ただいまぁ」
「チャオが帰ってきたって」
「叔父ちゃん、ただいま!」
「武術大会は、どうだったんだ? チャオ。出れたのか?」
「ああ、戦のせいで中止になったが一勝はしたよ。中止にならなければ優勝したんだけどね」
「そうか、おしいことを……。その後ろの方々は?」
「あ、そうだ。旅の途中で、知り合った仲間だ。何か食べれるかな。皆、腹をすかしてる」
「チャオ師匠にはいろいろ、世話になってます」
「師匠……」
「ああ、何人かはあたいの弟子だ」
つづく




