県境の川
56話 県境の川
開運道場に三日ほど滞在。四日目の朝に。
道場の門前。
「リュー様、いつでもお寄り下さい。本当は分かれたくないのだけど……」
「この度、良い縁が出来たから、ケアイダ殿。また、会えるのを楽しみに。あなたの。奥義は素晴らしかった。一生忘れんだろ」
「奥義?! 師匠、ソレはどんな……」
「マンケイ、おまえにはまだ早すぎる。その奥義をくらったらおまえ死ぬぞ」
「まあリュー様、余裕で返されたじゃないですか。そちらの坊や。体ばかり大きくなって、よく師匠の教えを受け、修業に励みなさい」
「私を、坊やと……。初めてです。そう言われたの。はい、フェイ・ケアイダ師匠。誠心誠意努力いたします!」
「マンケって、坊やなのか?」
「チャオ。マン・ケイは、ああ見えてまだ十代なんだ」
「え、そうか。それでアロンをアニキと呼ぶのか。あたしは兄弟子だからと……」
「おい、チャオ。なんでそいつが居る?」
「わたいは、チャオ師匠の一番弟子になったからだ」
「一番弟子? おかしなことを言うな。ボクはおまえより先に弟子なんだぞ」
「まて、アロン。おまえ、いつチャオの弟子になった? あたしは、ビレの町からチャオに大河三娘双剣を習ってる」
「え、リーさんも。同じ時期です……チャオ、誰が一番弟子なんだ?」
「一番弟子は、ここにはいない。あたいの故郷だ。おいマオ、勝手に一番弟子を名のるな。とりあえず、こいつも連れて行くヨォ・マオマオだ。いいだろ」
また、女のコが一人増えた。
が、マオは少年みたいだが。
しかし、この中に居るとリァンがホント、女のコだ。料理はイマイチだが、裁縫が得意だ。
武術家揃いの仲間だ、服とかよく破くので重宝してる。
「チンにガン。アレを」
「へい、旦那コレを」
「ナニかな?」
「餞別だ。旅には何かと入りようだろ」
「泊めていただき食事まで出していただのに、それは」
「いや、ウチの門弟がリュー様のお弟子さんに世話になったからな」
「チンさんガンさん、アレは……」
「実は、あれから覚醒道場の主がわびをいれに来まして師匠の知るとこに……アロン殿、わたしらと別れたあと、奴らをこてんぱんに。話を聞いてすっきりしました」
とチンさんが小声で。
「ウチの弟子が騒ぎを……」
「いいえ、ささいなことで騒ぎなど。だから受け取っていただきたい」
ボクたちは、カツラの町を出て県境を目指した。
おお、この大きな川は。
「ここは、県境になってる黄江だ。『大河英傑伝』の舞台、様子江ではないぞ。この川の向こうが我が故郷ファチャンだ」
「そうなのか。だが、チャオどうやって向こうに渡るんだ? 広くて流れも激しい」
「見たところ橋も見えないし、舟もない」
「坊さん神通力で川の水を割り、道を作ってくれ」
「私に、そんな力はないぞチビスケその二」
「なんだその二って坊さん?」
「その一は、ほれマンケイの荷物の上だ」
「ニュウだ、チビスケその二!」
「あぁなんだ。そんな高いトコから、降りてこいどっちがデカいか背比べだ」
「おい、マオ。つまんないことで騒ぐな」
「はい師匠」
「言われてみれば、ちっこいやつばかりだなぁ。チャオは、ちっこい連の頭だな」
「そんなの、あたしは認めないよ」
「ウー、リーさんの冗談だよ」
ウーはカツラの町で買った大きな豚に乗り台を付けて乗ってる。
が、その豚をつないだ綱はマンケイが持ってる。
その豚は非常時には食料にするそうだ。
「あたいが綱を持ち大河アメンボウ足術で渡り。みんなはその綱を掴み渡ってくれ」
「それは……私泳げないんで。水は苦手です」
「この豚はどうする?」
「ごめん、ごめん。冗談だよマンケ、ウー。アメンボウ足術なんかないから、あと少し行けば渡しイカダがあるはずだだから……」
なんだ、チャオ冗談か。ホントに水の上を歩けるのかと。
しかし、けっこう川沿いを歩くがそんな渡りイカダなどない。
「おかしいなぁ前に来たときには、このあたりに……あっ」
だいぶ先だが小屋が見えた。あそこがチャオのいう渡りイカダか?
そこまで、なんとかたどり着くと小屋からいかつい男たちが。
「坊さんたち、向こうに渡りたいのか?」
「そのつもりだが」
「男は金貨一枚、女は銀貨一枚だ。が、そっちのデカいにいちゃんは倍だな。それと、そのデカい豚も金貨二枚だ」
「子どもは?」
「ニュウは子供だ!」
「子供は銅貨一枚だ」
「おっさん、高いな。いつからこんな商売してんだ? まえは、タダで渡れた。 見たところ、そのイカダは、昔から有るヤツだよな。それを使ってアコギな商売かぁ」
「別に無理に渡ってくれとは言ってねぇ。カネがないならあきらめな!」
「坊さん、あと半日歩けば別のイカダが有る。そんなバカ高い料金払って渡るほど急ぎ旅じゃないし」
「知らねぇのか、この先のイカダもウチが渡してる」
「ええっ、おまえら……」
「チャオ殿、カネは私が。仕方あるまい。こんなトコでフェイ殿の餞別が役に立つ」
意外に高値だが、ボクらはイカダに乗り川に。
向こう岸では大男が綱を引っ張り、イカダは川の中央へ。
すると両方の岸で綱を揺らしだした。
「バカヤロー! 危ないじゃないか!」
「無事に渡りたけりゃ、あと金貨三枚出しなぁ」
「師匠、コレは非道い。ぼったくりなんてもんじゃない。川の真ん中だヘタをすれば死人も出る」
「そうだ坊さん、あんな奴ら痛い目にあわさないと」
「そうだな、ちょっとお仕置きをしないといかんな。アロン、向こう岸のを、私はこちらのを」
「うわっ、ふたりとも綱を上を。坊さんの技を見たい、あたしも!」
「リー、あたいも」
「チャオはアロンを!」
「うわぁみんな揺れる綱の上を軽々と」
「バカね、普通に渡せば良かったのに皆を怒らせるから、うわぁ危ないわね。マン・ケイ、豚が落ちないように」
ドヴーッ
「おそいよ姐さん!」
「ウーちゃんも落ちた!」
つづく




