昼寝の時間
55話 昼寝の時間
「この人の代わりに、ボクがあなた方の流儀を受けます。どうぞ足を踏んで下さい」
「はぁ〜おまえは、ナニモンだ?」
「この人はウチの客人だ。手出ししたら……」
「開運道場の客……」
「なんでおまえが」
「こんなコトで争うのはバカげてる。ボクの足を踏んで済むのなら……」
「いいのか、小僧。俺が踏んだら三日、四日は歩けねぇぜ」
「いいです。ただし、それでこの件は無かったことに」
「わかった、じゃこらえろ! ふんっ! はっ!」
「おい、やめろ! 一回じゃないのか」
「おっあぁイテテッ!」
ボクは転げ回って痛さをこらえた。
フリをした。
「大丈夫ですか、お客人! 貴様、今、何回踏んだ!」
ボクは殴りかかる門弟の足をつかみ。
「大丈夫だから……」
「しかし……」
「もう無かったコトだ、行くか。腹減った。なんか食いにいこうぜ!」
覚醒道場の連中は去っていった。
「クソぉ、あんな奴ら……。あっ、お客人、大丈夫ですか? オレの背に」
「問題ない。よっと」
「ええ、あのギャンに足を踏まれて……」
「だから大丈夫だと」
「気功術みたいなモノか?」
「気功とは、ちょっと違うが、ボクの体は頑丈でね。争わないですむなら争わない。でも、あんたは、ボクのマネはしちゃだめだ。アレは普通の足なら三日、四日どころじゃなかったろう。ひと月は歩けないかな」
「やはり、オレもそう思って、股くぐりを。あの一回の屈辱ですむならと……チン。ケンカしたらケガだけじゃすまなかったかもな」
「そうだな、へたすりゃ破門だ。お客人、本当にありがとうございます」
「いや、今のは、無かったことになったからいいじゃないか。じゃ、リァン、ボクも腹が減った。何か食べよう」
「うふっ、なんかアロン。父さんに似てきた」
「そうかな? でも、ボクはあんなに女好きじゃない……」
「そうね、女は一人に決めてもらいたいわ」
「よぉ、見てたよ。あんた、あんなデカいのに足踏まれてホントになんともないのかい?」
「あ、観光案内サギ」
「サギは、よしてくれよ。頼まれればちゃんと案内するんだから。それよりさ。わたいに武術を教えてくれよ」
「無理だね。ボクのは、人に教えられる技じゃないんだ。武術が習いたいのなら開運道場へ行くがいい。今ならチャオという、おまえくらいの背丈の女師匠がイイ拳法を教えてくれるよ」
「道場なんか行ったらカネをとられるじゃないか」
「大丈夫だ。チャオという師匠ならカネは、とらない。彼女は自分の拳法を広めたがってるんだ」
「ソレはホントか」
「ウソじゃないボクも彼女から習ってるけど、カネはまったく払ってない」
「え、アロン。いつから大河拳法習ってるの」
「言ってなかったけ」
「ええ。わたしも習おうかしら。父さんは、小さい頃に終えてくれただけで今はぜんぜん」
「まあボクもだが……」
「そうか、チャオ師匠だな。じゃ、あっと。あんたはなんてぇ名前なんだ?」
「ボクはアロンだ。チャオにはアロンに聞いたと。そうだ、この町で美味しい店知らないか」
「そうだな……」
「なんだ、その手は?」
「タダじゃ教えない」
「がめついヤツだな、そんなんじゃモテてないぞ。ホラ」
ボクは小銭を彼女の手に。
「あの先の右に曲がった路地に入ったトコに『健康飯店』っていう店がある。漢方を使ってるが美味くて健康になると評判の店だ。行ってみな!」
「あ、行っちゃたわ。あの子、本気でチャオに
習う気かしら」
「さあね。健康飯店へ行ってみようじゃないかリァン」
ああ、なんてこったい。なんで奴らがこの店で。
「あっ、てめぇはさっきの」
「おまえ、俺に踏まれて……」
「痛くて、彼女に肩を借りてるんだ」
と、ボクはリァンの肩に腕を。
「おい、小僧。俺が踏んだのは逆の足だぞ」
「あ、そうだ。あまり痛てぇんで。どっちかわからなくなったんだ」
「ナニふざけたコトを。何かの仕掛けが、その靴は鉄製か? あれなら歩けねどころじゃねえ! そんなきゃしゃな女の肩を借りてここまで来ただと。ウソつくな小僧!」
「まあ、仮にウソだとしても。ちゃんと踏まれたんだ。なんの文句がある」
「なんか、騙されたようでむかつくんだよ!」
「おお〜い。デカいのケンカするなら外でしてくれる。もの壊されたら、あんたらの道場を訴えるからね」
「おい、小僧。外に出ろ!」
「何か食べてからにしてくないか。ボクらはここに食事に来たんだ」
「うるせぇ、食ったらもどして食い損だぞ」
「あんたらは?」
「もう食い終わった」
「まだ、お代をいただいてないけどね」
「じゃ先に女将さんに食事代を払ってから出よう」
「ナンだぁてめぇ俺たちなめてんのかぁ」
「あのお客さんの言うとおりだよ代金もらうよ」
「ああ、出すさ。はじめからそのつもりだ」
「リァン、てきとうに何か食べたい物を注文しておいて。おーい、外で待ってるから早くカネ払って来いよ」
「むかつく小僧だ」
外に出てると連中が出てきた。
「先に言っとく、コレは開運道場と何も関係ない。君等の……」
「俺達は泣く子も黙る覚醒道場の……」
「そうか、しかしその門弟がどこぞの馬の骨の小僧に、のされたら道場のいい恥だろ。このコトは公表しない方がいい」
「勝っても言わねぇよ。小僧一人に四人でやったなんてな!」
「ただいまぁ」
「早かったわねアロン。まだたのんだ料理来てないわよ」
「お、お客さん。あいつらは?」
「外で昼寝してるよ。女将さん、このコトはヒ・ミ・ツ」
つづく




